総括安全衛生管理者とは?役割・選任条件・義務をわかりやすく解説|建設業における安全管理の中心人物


総括安全衛生管理者とは

総括安全衛生管理者(そうかつあんぜんえいせいかんりしゃ)とは、
事業場における労働安全衛生の統括管理を担う責任者
のことです。

労働安全衛生法第10条に基づき、一定規模以上の事業場(工場、建設現場、事務所など)において、
安全管理者・衛生管理者・産業医などの安全衛生スタッフを統括・指揮する立場として選任が義務付けられています。

つまり、現場の安全衛生活動を「総括的にマネジメントする責任者」が総括安全衛生管理者です。


総括安全衛生管理者の役割

総括安全衛生管理者の役割は、労働者の安全と健康を守るために現場全体の管理体制を整えることです。
具体的には次のような業務を行います。

1. 安全衛生管理体制の統括

  • 安全管理者、衛生管理者、産業医などの専門職を統括・指導
  • 労働災害防止計画の策定・実施の確認
  • 各職種間の連携調整と報告体制の確立

2. 作業環境の改善と指導

  • 労働災害や健康障害の原因を分析し、再発防止策を検討・実施
  • 現場巡視や安全パトロールの実施・指導
  • 適切な安全保護具の使用指導

3. 教育・訓練の推進

  • 新入社員や作業員に対する安全衛生教育の実施計画の立案
  • 災害事例の共有、安全意識の向上活動の推進

4. 労働安全衛生委員会との連携

  • 安全衛生委員会の開催・議題設定
  • 委員会での決定事項の実施・フォローアップ

総括安全衛生管理者は、現場責任者として**「安全の最終責任」を担う立場**にあります。


選任が必要な事業場

労働安全衛生法第10条により、次のような規模の事業場では総括安全衛生管理者の選任が義務付けられています。

業種選任が必要な基準
製造業、建設業、運輸業、電気・ガス業など常時 100人以上の労働者 を使用する事業場
清掃業などその他の業種常時 300人以上の労働者 を使用する事業場

建設業の場合、現場単位ではなく「事業場(現場を統括する拠点)」単位で選任が必要です。
また、工事ごとに安全衛生責任者を置く場合は、総括安全衛生管理者との連携体制を構築することが求められます。


選任できる人の条件

総括安全衛生管理者には、次のような要件を満たす者を選任する必要があります。

  1. 事業場における実質的な指揮権限を有する者(管理職クラス)
     例:工場長、現場所長、支店長、工事部長など
  2. 安全衛生に関する知識・経験を有する者
     実務経験が長く、現場の危険性や作業工程を理解していることが重要です。
  3. 安全衛生教育(総括安全衛生管理者研修)を修了していることが望ましい

また、実務的には安全衛生管理者・衛生管理者・産業医などの各担当者を指揮できる立場であることが求められます。


選任の手続きと報告

1. 選任のタイミング

新たに事業場を開設した場合、または規模が拡大して基準を超えた場合、
14日以内に総括安全衛生管理者を選任しなければなりません。

2. 行政への届出

選任した際は、「総括安全衛生管理者選任報告書」を管轄の労働基準監督署へ提出します。
提出書類には、氏名・職名・選任年月日・職務内容などを記載します。


建設業における位置づけ

建設業では、工事の規模や元請・下請関係に応じて安全管理体制が変わります。
総括安全衛生管理者は、本社または支店単位の安全衛生を統括する立場であり、
各現場に配置される「現場安全衛生責任者」や「元方安全衛生管理者」を指導・支援する役割を担います。

そのため、建設現場での安全確保のためには、
現場単位の管理者と本社安全管理部門が一体となって安全文化を築くことが重要です。


違反した場合の罰則

総括安全衛生管理者を選任しなかった場合や、虚偽の届出をした場合は、
労働安全衛生法第120条に基づき以下の罰則が科される可能性があります。

  • 50万円以下の罰金
  • 監督署による是正指導・改善命令

企業の社会的信用にも関わるため、法令遵守と安全体制の整備は必須です。


まとめ

総括安全衛生管理者とは、事業場全体の安全と衛生を統括する最高責任者です。
安全管理者や衛生管理者、産業医などを指揮し、
労働災害防止と健康維持のために組織的なマネジメントを行います。

特に建設業では、複数の協力会社や作業員が関わるため、
現場横断的な安全管理体制を構築できる人材が求められます。
安全はすべての生産活動の基盤であり、総括安全衛生管理者はその要となる存在です。