ゲージ圧とは?絶対圧との違い・計算式・建築設備での実務ポイントをやさしく解説

ゲージ圧とは

ゲージ圧(Gauge Pressure)は大気圧を0とみなして測る圧力のこと。現場の圧力計(ブルドン管式など)が示す値の多くはゲージ圧です。したがって、表示が0でも実際には大気圧(約0.1013 MPa)が作用しています。

絶対圧との違い

圧力の基準は2種類あります。

  • 絶対圧(Pa, MPa abs):真空(0)を基準。
  • ゲージ圧(Pa, MPa g):大気圧を0とする現場基準。

関係式:
絶対圧 = ゲージ圧 + 大気圧

例)圧力計が 1.0 MPa(g) → 絶対圧は約 1.0 + 0.1013 = 1.1013 MPa(abs)

負のゲージ圧(真空・負圧)

大気圧より低いとゲージ圧は負値になります(例:-0.08 MPa)。吸引装置、真空ポンプ、ダクトの負圧管理などで使用されます。
※真空領域の仕様書では「kPa(abs)」で規定されることもあるため、単位と基準の表記を必ず確認。

建築・土木・設備での主な活用例

  • 給水ポンプ・圧送設備:吐出圧の監視、キャビテーション回避(吸込み側はNPSHに注意)。
  • 空調・冷媒配管:気密・耐圧試験、冷媒封入時のゲージ監視。
  • ボイラー・高圧ガス:安全弁設定、運転圧管理(法令・メーカー基準に従う)。
  • コンクリート圧送・油圧機器:作動圧・安全マージンの確認。
  • ダクト負圧管理:排気・クリーン環境の圧力差維持。

単位と代表換算

  • 1 MPa ≈ 10.1972 kgf/cm²
  • 1 kgf/cm² ≈ 0.0980665 MPa
  • 1 atm ≈ 0.1013 MPa(= 101.3 kPa)
  • 1 bar = 0.1 MPa

よくある表記

  • MPa(G)/ MPa g:ゲージ圧
  • MPa(A)/ MPa abs:絶対圧
  • kPa(差圧):室圧管理やフィルタ前後差圧などで使用

計算の実務例

  1. ゲージ圧→絶対圧
    Pg = 0.6 MPa(g) → Pa = Pg + Patm = 0.6 + 0.1013 = 0.7013 MPa(abs)
  2. 絶対圧→ゲージ圧
    Pa = 85 kPa(abs) → Pg = Pa − Patm = 85 − 101.3 = -16.3 kPa(g)
  3. 水頭との関係(概算)
    水柱 H[m] ≈ 0.102 × 圧力[kPa]
    例:300 kPa ≈ 300 × 0.102 ≈ 30.6 m の揚程

現場での注意ポイント

  • 基準の取り違え防止:仕様書・図面に「g(ゲージ)/abs(絶対)」の別を明記。
  • 試験条件の整合:耐圧・気密試験は温度補正、ゲージ精度(クラス)、立上げ・保持時間を規定どおりに。
  • センサ選定:測定レンジ・媒体(気体/液体/腐食性)・接液材質を確認。
  • 安全弁・設定値:ゲージ圧の上限と絶対圧の上限が異なる場合あり。法令値・メーカー値を厳守。
  • 標高・気象の影響:大気圧は場所・天候で変動。高地ではPa(abs)での規定が安全。
  • 負圧の表し方:kPa(g)の負値、または「真空度(kPa abs)」での記述にブレがあるため統一する。

まとめ

  • ゲージ圧は現場で扱いやすい実務基準、一方で設計・安全検討では絶対圧が本質。
  • 絶対圧 = ゲージ圧 + 大気圧を常に意識し、表記・単位・試験条件を揃えることが、誤設定や事故を防ぎます。