Wim Mertens入門:代表作「Struggle for Pleasure」から聴き方・名盤ガイド
Wim Mertensのプロフィール
Wim Mertens(ウィム・メルテンス)はベルギー出身の作曲家、ピアニスト、ボーカリストで、20世紀末から現代にかけて独自の音楽世界を築いてきたアーティストです。1950年代生まれ(1953年生)で、1980年代以降に発表した一連の作品によって国際的な評価を獲得しました。クラシックの要素、ミニマル音楽的な反復構造、現代音楽的な対位法、そして声を楽器化する独特のアプローチなどを融合させることで、ジャンルに収まらない活動を続けています。
音楽的な特徴と魅力
-
反復と変化の微妙なバランス:メルテンスの作品はミニマリズムの反復的なモチーフを基盤にしつつ、その繰り返しの中で少しずつ和声やリズム、フレージングを変化させ、聴者の集中を引き出します。単純な要素が積み重なり、時間とともに複雑な感情や景色を作り出す点が大きな魅力です。
-
声の「楽器化」:歌詞を中心に据えるポップや伝統的な歌曲とは異なり、メルテンスはしばしば意味のはっきりしない音節やナイーブな言語風の発音を用いて、声そのものを音色やリズムの要素として扱います。これにより、言語的意味に縛られない普遍的な表現が可能になります。
-
クラシックとポピュラーの中間地帯:室内楽的配置(弦、ピアノ、木管など)とシンプルなポップ的メロディの併存、電気的テクスチャーとアコースティックな楽器の融合など、ジャンルの境界を曖昧にすることで幅広い聴衆に訴えかけます。
-
冷静さと感情表現の同居:技巧的で理知的に構築された楽曲でありながら、繊細で人間的な情感が滲み出す点が共感を呼びます。極端な情緒表出ではなく、抑制された深さが魅力です。
-
多様な制作フィールド:ソロ作品のほか、映画や舞台、ダンスのための音楽制作も手がけ、用途に応じて異なる顔を見せます。そのため「BGM」にとどまらない聴き応えがある作品が多いのも特徴です。
代表曲・名盤(入門と深化のための推薦)
メルテンスの作品は長年にわたり多岐に渡ります。ここでは初めて聴く方と、より深く掘り下げたい方に向けていくつかの代表例を挙げます。
-
Struggle for Pleasure(代表曲) — 多くのリスナーにとって彼を象徴するインストゥルメンタル。シンプルなモチーフの反復と繊細な和声進行が印象的で、入門に最適です。
-
初期のピアノ/室内楽的作品群 — 彼の音楽的基盤であるミニマル/現代クラシック的アプローチが色濃く出ています。繰り返しの中での微細な変化を味わえます。
-
ヴォーカルを前面に出した作品群 — 言語を離れた発声を効果的に用いる曲が並び、メルテンスの人間的な「声の音色」を深く堪能できます。
-
映画・舞台音楽(抜粋) — 映像や舞台との連動で生まれた作品はコンテクストとの相乗効果があり、独立した音楽作品としても魅力的です。
作曲手法の深掘り
メルテンスの作曲手法を具体的に見ると、以下のような点が目立ちます。
-
モチーフの「反復+拡張」:短い動機(モチーフ)を中心に据え、それを繰り返しつつ微妙に変形させることで時間的な推進力と変化を生み出します。ミニマリズム的な手法を、独自の和声感覚や対位法で昇華しています。
-
対位法的配置:複数の声部が独自に展開しつつ合流する対位的な書法が用いられ、単純な反復に深みを与えます。このため一見シンプルに聞こえる曲でも繰り返し聴くごとに新たな発見があります。
-
色彩的な編成と音色選択:室内楽的な楽器編成や、しばしば繊細なアコースティック音色を選ぶことで、透明感のあるサウンドが作られます。電子音をアクセントとして使うこともあり、暖かさと冷たさの対比が巧みです。
-
声の非言語化:歌詞の意味よりも音響的・リズム的な機能を重視するため、ボーカルはメロディやテクスチャーの一部として扱われます。このアプローチが国籍や言語を超えた普遍性を生んでいます。
なぜ今も聴かれるのか——現代における位置づけ
メルテンスの音楽は、流行やポップスのサイクルに左右されない普遍性と静かな強度を持っています。次のような理由から、現代でも根強い支持があります。
-
ジャンル横断性:クラシック/現代音楽/アンビエント/ポップの要素を絶妙に混ぜるため、多様なリスナーに響く。
-
時間をかけて味わう音楽性:一度で完結する快楽ではなく、繰り返し聴くことで深まる構造は、現代の速い消費文化とは一線を画します。
-
映像や舞台との親和性:映画やダンス、舞台のための音楽も多く、音楽だけでなく複合芸術を介して新たな聴衆と出会いやすい。
聴きどころ・楽しみ方のアドバイス
-
スピーカーよりヘッドホンで:透明感や細かな音の重なりを確認するため、比較的高解像度の再生環境で聴くと細部がよく分かります。
-
繰り返しの時間を設ける:一度で判断せず、複数回聴いてモチーフの微変化や対位の動きを追ってみてください。新しい発見があります。
-
映像作品と対比して聴く:彼が手がけた映像音楽や舞台音楽を映像付きで体験すると、音楽が持つ物語性や空間感をより鮮烈に感じられます。
まとめ
Wim Mertensは、繰り返しと変化、声と楽器、学術的な構築性と感情表出のバランスを巧みに操る作曲家です。ジャンルの枠を超えた音楽性と、聴くたびに姿を変える楽曲の多層性が彼の最大の魅力です。初めて触れる人は代表作のひとつ「Struggle for Pleasure」から入り、そこからピアノ/室内楽的作品、ヴォーカル作品、映像音楽へと広げていくと、メルテンスの世界を段階的に楽しめるでしょう。
参考文献
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/
また、CDやレコードなど様々な商品の宅配買取も行っております。
ダンボールにCDやレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単に売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery


