ビバリー・シルズを聴く:ベルカント名盤と初心者向けおすすめ録音ガイド
はじめに — ビバリー・シルズとは
ビバリー・シルズ(Beverly Sills, 1929–2007)は、20世紀後半のアメリカを代表するソプラノの一人です。特にベルカント(bel canto)や軽やかな色彩を要求する色彩的な役柄で高い評価を得ました。ニューヨーク・シティ・オペラ(NYCO)を中心に活躍し、舞台のスター性と聴衆を惹きつける表現力で幅広い人気を博しました。本コラムでは「レコード(音盤)を楽しむ」ことに焦点を当て、ビバリー・シルズを聴くのにおすすめのアルバム/録音を深掘りして解説します。
聴く前に押さえておきたいシルズの歌の特長
色彩豊かな高音と明瞭なアジリタ(装飾音)の処理:ベルカント作品やドニゼッティ、ベッリーニなどのレパートリーと親和性が高い。
ドラマティックさと親しみやすさの両立:舞台上での演技力と、アリアでの細やかな感情表現が魅力。
ライブでの即興性と聴衆との応答:ライブ録音にはスタジオ録音では味わえない熱気や瞬発力が残されていることが多い。
入門盤(まずここから聴きたい1枚)
「ベスト盤」やハイライト集は、シルズの代表的アリアを短時間で味わえるため初心者に向いています。選曲はレーベルや編集によって差がありますが、代表的な色彩的アリア(ドニゼッティのルチアやベッリーニのアリアなど)、イタリア語のオペラ狂想曲、さらにはコンサート用の小品までバランス良く収められているものを選ぶとよいでしょう。
おすすめポイント:各作品の“顔”となるアリアを通して、シルズの音色、技術、ドラマ性を短時間で体験できる。
探し方:商品名に「Greatest Hits」「Best of」「The Art of Beverly Sills」などが含まれるコンピレーションを探す。
代表的オペラ録音(深く楽しみたい人向け)
シルズはベルカント系、特にドニゼッティやベッリーニを得意としました。これらのオペラ全曲盤やライブ全幕録音を聴くと、役作りや劇的な流れの中での歌唱が堪能できます。
ドニゼッティ:『ルチア・ディ・ラメルモール(Lucia di Lammermoor)』— シルズの代表役のひとつ。狂乱の場面や色彩的なアジリタが聴きどころ。録音はスタジオ/ライブ双方に名演が残っているため、演劇性を重視するならライブ録音、音質と繊細さを重視するなら信頼できるスタジオ盤を探すとよいでしょう。
ベッリーニ:『清教徒(I Puritani)』— 高音域の安定感とレガートの美しさが生きる作品。長い旋律線をどうコントロールするかが楽しめます。
その他ベルカント作品(ドニゼッティの他作品、ベルカント時代の小品など)— シルズの表現力と技巧を総合的に味わえます。
ライブ録音の魅力(NYCO・メトなどの舞台録音)
シルズはNYCOを拠点に多くの舞台を積み重ねました。ライブ録音には観客の反応、舞台上の緊張感、時として即興的なフレージングが残され、スタジオ録音とは違った“生の芸術”が感じられます。
演劇性を重視するリスナーはライブ録音を強くおすすめします。特にアリアの前後での台詞や短いカデンツァの違いなど、舞台ならではの瞬間を捉えていることが多いです。
欠点としては音質や残響がスタジオ盤より劣る場合があるため、その点を許容できるかが選択の分かれ目です。
リサイタル・小品集(歌唱の細部を味わう)
オペラのアリアだけでなく、リサイタルやカンツォーネ集など、より親密な編成での録音はシルズの発音、語り口、フレーズの取り方を細やかに感じ取れます。スタジオ・リサイタル盤やテレビコンサートの音源があれば、そちらも要チェックです。
初心者向けの聴き方ガイド
まずは“代表アリア”を一通り聴き、シルズの音色と得意分野(色彩・高音・装飾)を掴む。
次に1作品(例:ルチア)を全曲で通して聴き、ドラマの流れと役の変化に注目する。ソプラノの表現がどのように役作りに寄与しているかが見えてきます。
ライブ盤とスタジオ盤を比較して、演奏スタイルとエネルギーの違いを楽しむ。
レア盤・コレクターズ・ヒント(探し方のコツ)
シルズの録音は多くが再発されているため、ディスクグラフィやレーベル表記を確認すると目的の演奏を見つけやすいです。盤を探す際のポイントは次の通りです:
「全曲盤(complete)」か「ハイライト/アリア集」かを明確にする。
ライブ録音かスタジオ録音かを確認する。録音年と会場(例:NYCO公演)を見ると背景がわかる。
リマスター/復刻盤は音質が改善されていることが多いが、編集(カット等)もあるため注意。
聴きどころの具体例(曲目ごとの注目点)
ルチアの狂乱の場面:テクニックの正確さだけでなく、ロールプレイとしての変容(役の陶酔や崩壊)をどう表現しているか。
I Puritaniのカデンツァや高音:持続する高音での表現、吐息の処理、レガート(旋律のつながり)をチェック。
短いカンツォーネやアンコール曲:語り口の自然さや英語の歌詞表現(英語の歌曲を録音している場合)を味わう。
まとめ:どこから買う・聴くか
現代ではストリーミングサービスにもシルズの録音が多く上がっています。まずは公式なベスト盤や大手レーベルのコンピレーションで全体像をつかみ、気に入った作品の全曲盤やライブ録音を掘る、という流れが効率的です。特にベルカントを楽しみたい方にはドニゼッティやベッリーニの作品群がおすすめで、シルズの技術と表現が最も生きる領域です。
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参考文献
- Beverly Sills — Wikipedia
- Beverly Sills — Encyclopaedia Britannica
- Beverly Sills — AllMusic Biography
- Beverly Sills obituary — The New York Times
- Beverly Sills — Discogs(ディスコグラフィ参照)


