Davy Grahamを聴くべき理由と名盤ガイド|DADGADチューニングと60年代英国フォークの革新を徹底解説

Davy Graham — なぜ聴くべきか

Davy Graham(デイヴィー・グラハム)は、1960年代の英国フォーク/ブルース/ジャズ/ワールドミュージックの交差点に立ったギタリスト兼作編曲家です。アコースティック・ギターにおける即興的なアプローチ、インド音楽や中近東のモード感を取り入れた音楽性、そして今日でも広く使われるDADGADと呼ばれるオープン・チューニングの普及など、後の世代に与えた影響は計り知れません。

本コラムでは「まずはこれを押さえておきたい」というおすすめレコードをピックアップし、それぞれのアルバムの聴きどころ、曲のハイライト、彼の音楽的特徴がどう表れているかを深掘りします。レコード自体の再生・保管・メンテナンスに関する解説は含めません。

おすすめレコード(ピックアップ)

  • Folk, Blues and Beyond

    ポイント:Davy Graham の代表作の一つで、アコースティック・ギターの可能性を広げた名盤。フォークとブルースをベースにしながら、ジャズ的なコード進行や東洋の旋法を大胆に取り入れている。インスト曲「Anji(Angi)」はギター・インストの定番で、多くのプレイヤーにコピーされてきた。

    聴きどころ:

    • 「Anji」:複雑なフィンガーピッキングとメロディ構成。Davyのテクニックとフレーズ作りが最も端的に分かる。
    • フォーク/ブルース曲のアレンジ:単なるカバーにとどまらず、和声やリズムで独自性が出ている。
    • 異文化的カラー:尺度や装飾音の使い方にインド音楽の影響が感じられる。
  • Folk Roots, New Routes(Shirley Collins & Davy Graham)

    ポイント:歌ものフォークにギター伴奏として関わった名作。Davy の伴奏は繊細かつ実験的で、伝統曲に新しい表情を与えている。歌とギターの相互作用を堪能できる録音。

    聴きどころ:

    • ボーカル曲での伴奏術:歌のフレーズを支えるリズムと和音選択が学べる。アクセントの付け方やスペースの作り方が非常に示唆的。
    • 伝統曲の再解釈:古い民謡がモダンで洗練されたアレンジに生まれ変わる過程を追える。
  • Large As Life and Twice As Natural

    ポイント:Davy がバンド編成やエレクトリックな要素も取り入れて制作したアルバム。ソロ・ギターだけでない彼の幅の広さ、編曲力、リズム感の多面性が顕著に表れている。

    聴きどころ:

    • バンド・アレンジ:ギター以外の楽器との絡みで見せるアイディアを学べる。
    • 多ジャンル融合:ジャズ、R&B、フォークの要素が混じり合い、Davy の影響力の広さを知ることができる。
  • The Guitar Player(代表的な初期録音集)

    ポイント:初期のスタイルを追える作品群をまとめたような音源。若き日のテクニック、レパートリー、影響源(ブルース、ジャズ、アイルランド/スコットランド民謡など)が直接感じられる。

    聴きどころ:

    • 初期の直球な演奏:後の実験的側面の前段階としての純度の高いギター表現。
    • レパートリーの広さ:カヴァーの解釈やオリジナルの匂いを確認できる。
  • Anji(Best/コンピレーション)

    ポイント:「Anji」を中心に彼の代表曲や重要録音を集めた編集盤。初めて聴く人がDavy の全体像を俯瞰するのに向いている。

    聴きどころ:

    • 代表曲を一度に追えるため、彼のスタイルの変遷がつかみやすい。
    • アルバムごとの特色を比較して聴くことで、彼の編曲観や音楽観が見えてくる。

アルバム別に見る「Davyらしさ」の要素

  • DADGADチューニング:開放弦を多用でき、ドローン(持続音)とメロディを同時に鳴らすことが容易になるため、東洋音楽やケルト的な響きを自然に取り入れられる。Davy のアレンジにしばしば見られる特徴です。

  • ハイブリッドな和声感:ブルース進行やフォークの旋律にジャズ的なテンションやモードを混ぜることで、「聴き慣れた曲」が一気に別物になる。

  • リズムとスペースの使い方:フィンガーピッキングの強弱、ミュート、スラップのようなアクセントなどを使い、伴奏として歌を引き立てるテクニックが秀逸。

  • 文化横断的なアプローチ:インド、アラブ、ケルト、アフリカン・ルーツの要素を混ぜ、60年代という時代における「世界音楽的」な感覚を先取りしている。

聴き方・楽しみ方の提案

  • まずは代表曲「Anji」を聴いてピッキングとフレーズを把握する。次にボーカル曲での伴奏(Shirley Collinsなど)に進むと、Davy のアレンジ観がより立体的に理解できる。

  • アルバムを通して聴く際は、各曲でどのようにスペース(間)を作っているか、どのタイミングでテンション(和音の不協和音的要素)を導入しているかに注目すると発見が多い。

  • ほかのギタリスト(Bert Jansch、John Renbourn、Martin Carthy など)との比較で聴くと、当時の英国フォーク・シーンにおけるDavyの独自性が際立つ。

最後に

Davy Graham は単なるテクニシャンではなく、異なる音楽文化や理論を自分のギタープレイに落とし込み、結果として後続のミュージシャンに大きなインスピレーションを与えた人物です。レコードを通じて彼のアイディアを追うと、ギター伴奏の可能性や編曲の自由度がぐっと広がるはずです。

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参考文献