MDFとは何かを徹底解説:Main Distribution FrameとSQL Serverのプライマリデータファイル(.mdf)の違いと運用ポイント
はじめに — 「MDF」とは何か(ITにおける用語の分岐)
「MDF」という略語はIT分野でも複数の意味を持ちます。代表的なのは「Main Distribution Frame(メイン配線盤/MDF)」と、Microsoft SQL Serverの「.mdf(Primary Data File/プライマリデータファイル)」です。本稿では両者を区別して解説し、それぞれの役割・構成・運用上の注意点やベストプラクティスを具体的に説明します。読者が現場で遭遇する「MDF」がどちらの意味かを判別できるようにすることを目的としています。
MDF(Main Distribution Frame)とは
Main Distribution Frame(MDF)は、主に企業やビルの通信配線・接続を集約する物理的な配線盤(配線室/配線ラック)を指します。電話系・ネットワーク系の外部回線やビル内バックボーン配線がここに集約され、各フロアや配線キャビネット(IDF:Intermediate Distribution Frame)へ配線が分配されます。
主な役割
- 外部通信事業者(回線)からの回線受け口(デマルケーションポイント)の収容
- ビル内バックボーン(光ファイバーやUTP)の接続・クロスコネクト管理
- 配線の一元管理と配線変更(パッチング)による柔軟な接続変更
- 機器(ルータ、スイッチ、ファイアウォール等)の設置スペースの確保
構成要素と配線形態
- パッチパネル(銅線/光ファイバーパネル):端末ケーブルやバックボーンをパッチコードで接続
- ラック/キャビネット:機器の設置、ケーブルマネジメント用
- ケーブルダクト・トレイ:大規模配線の経路保持
- 接地・アースバス:電気的安全とノイズ対策
MDFとIDFの違い
MDFは建物やキャンパスの「中枢」に位置する配線盤で、外部回線やコア機器が集まります。一方IDFは各フロアや棟ごとの中間集約点で、MDFとIDFはバックボーン(通常は光ファイバー)で接続されます。設計上はMDFからIDFへ短く太いバックボーンを張り、IDFから個別ワークステーションへ水平配線を行うのが一般的です。
設置・運用上の注意点
- 物理的セキュリティ:MDFは回線と機器の中枢であるため入室管理が必要
- 冷却・環境管理:ラック内発熱や湿度管理による機器寿命確保
- 接地・電源冗長:雷・ノイズ対策とUPSや冗長電源の検討
- 配線ドキュメント:クロスコネクト表やラベル管理が障害対応で重要
- 標準準拠:TIA/EIAやISO/IEC規格など構造化配線のガイドラインに準拠
MDF(.mdf:SQL Serverのプライマリデータファイル)とは
Microsoft SQL Serverにおける「.mdf」は、データベースのプライマリデータファイルの標準拡張子です。.mdfファイルはデータベースの主要なデータとシステムメタデータ(データベースの構成やオブジェクトの情報等)を格納します。補助的に.ndf(secondary data file)や.ldf(トランザクションログ)と組み合わせて使用されます。
.mdfの役割と関連ファイル
- .mdf:プライマリデータファイル。データベースの起動情報や主要データを収納
- .ndf:セカンダリデータファイル。データを複数ファイルに分散させる際に使用
- .ldf:トランザクションログファイル。トランザクションの整合性とリカバリに必須
運用・設計上のポイント
- バックアップ戦略:フル/差分/トランザクションログバックアップを組み合わせ、復旧ポイントとRTO/RPO要件に合わせる
- ファイル配置:IO負荷を考慮してデータ(.mdf/.ndf)とログ(.ldf)を別物理ディスクに配置するのが望ましい
- 自動拡張(Autogrowth):無制限の自動拡張設定は断片化やパフォーマンス問題を招くため、適切な増分設定と監視を行う
- ファイルグループ設計:業務特性に応じてファイルグループを分け、リード/ライト分散やオンライン操作を有効にする
- 整合性チェック:DBCC CHECKDBなどで定期的に整合性チェックを行い、破損や不整合を早期検出する
障害時の注意点
.mdfだけでは環境によって復元が難しい場合があります。特に最新のコミットデータや未チェックポイントの情報は.ldfに依存するため、.mdfと.ldfの整合性が取れていることが重要です。データベースの移行や復旧時は、バックアップと適切なリストア手順(WITH REPLACEやRECOVERY/NORECOVERYの使い分け)を理解しておく必要があります。
両者の共通点と相違点(簡易比較)
- 共通点:どちらも「集中管理」や「接続・流通の基点」という意味合いを持つ(物理配線の集中点、データベースの主要ファイル)
- 相違点:MDF(配線盤)は物理インフラ/配線管理の概念、.mdf(ファイル)は論理的・物理的ストレージのファイル形式であり、管理方法や要求されるスキルセットが異なる
現場での実践的アドバイス
- 用語確認:現場で「MDF」と言われたら「配線盤か、SQLファイルか」をまず確認する(文脈で判断するのが確実)
- ドキュメント化:どちらでも変更履歴・配線図・ファイル配置図・バックアップポリシーは必ず文書化・可視化する
- 冗長化と監視:MDF(配線)の物理冗長と、.mdf(DB)の冗長化(レプリケーション、Always On、ログ配布等)を業務要件に沿って設計する
- セキュリティ:MDF(配線)では物理アクセス制御、.mdf(DB)ではファイルアクセス権・暗号化(TDEなど)を適用する
まとめ
「MDF」という略語は文脈によって意味合いが大きく変わります。ITインフラの話題ではMain Distribution Frameとして配線・接続のハブを指すことが多く、データベース関連ではSQL Serverのプライマリデータファイル(.mdf)を指します。どちらも適切な設計・ドキュメント・セキュリティ・監視が不可欠であり、運用ミスは大きなサービス影響につながります。本稿で示したポイントを現場のチェックリストとして活用してください。
参考文献
- Main distribution frame — Wikipedia
- Main distribution frame (MDF) — TechTarget
- データベース ファイル (Microsoft Learn)
- データベース ファイルとファイルグループ (Microsoft Learn)
- TIA/EIA-568 — Wikipedia(構造化配線に関する概要)


