The Nice の魅力と影響 — キース・エマーソンが切り開いたクラシックとロックの融合が生んだプログレ史
The Nice — プロフィールと背景
The Nice は1960年代後半にイギリスで活動したプログレッシブ/サイケデリック・ロック・トリオです。中心人物はキーボードのキース・エマーソン(Keith Emerson)、ベース兼リード・ヴォーカルのリー・ジャクソン(Lee Jackson)、ドラムのブライアン・デイヴィソン(Brian Davison)。1967年前後に結成され、クラシック音楽の引用や大胆なアレンジ、エマーソンの卓越したキーボード・テクニックを前面に出した演奏で注目を集めました。1970年ごろに解散し、エマーソンは Emerson, Lake & Palmer(ELP)を結成してさらに大きな成功を収めますが、The Nice の活動はその後のプログレッシブ/シンフォニック・ロックに少なからぬ影響を残しました。
音楽的特徴とサウンドの魅力
The Nice の魅力は「クラシックとロックの大胆な融合」と「キーボードを中心に据えた編成」にあります。特徴を分かりやすく列挙すると:
- クラシック曲や映画音楽、ジャズのモチーフをロック編成に再構築する発想(例:劇的な引用・変奏による聴きどころ)
- キース・エマーソンのオルガン(Hammond)や初期のモーグ・シンセサイザーを使った派手で表情豊かなプレイ。クラシック的な技巧とロック的な激しさが同居する
- ギターを持たないオルガン・トリオという特殊な編成により、ベースとドラムが歌心とグルーヴでバンドを支える構造
- スタジオ録音とライブでの即興/展開の差が大きく、ライブでこそ本領を発揮する曲が多い
- 政治・社会的メッセージや皮肉を含むカヴァー/アレンジがあり、単なる「器楽ショー」にならない深みがある
代表曲・名盤(おすすめの作品)
- The Thoughts of Emerlist Davjack(1967)
デビュー作。バンドの初期の実験精神やクラシック引用、ポップ/サイケ的な側面が混在するアルバムです。シングル的に知られる「Rondo」もここにつながる流れを作りました。
- Ars Longa Vita Brevis(1968)
タイトル曲に代表されるような組曲的アプローチと端正なアレンジが際立つ作品。エマーソンの構築的なキーボード・ワークと、バンドの即興性が合わさった聴きどころの多い一枚です。
- Five Bridges(1970/ライヴ+オーケストラ作品)
オーケストラを伴ったライブ・プロジェクトを収めたアルバム。バンドのスケール感とクラシック志向が最も露骨に表れた作品で、彼らの音楽的野心を知るうえで必聴です。
- 代表トラック(単曲)
- Rondo — ジャズ/クラシック的フレーズをエネルギッシュにロック化したヒット・ナンバー
- America — ミュージカル曲を大胆に編曲し、政治的・社会的な文脈も示唆する演奏
- Ars Longa Vita Brevis(組曲) — 構築性と即興を併せ持つ長尺曲の好例
ライブパフォーマンスの魅力
The Nice を語るとき、ライブは不可欠です。舞台でのエマーソンは視覚的にも音楽的にも強烈な存在で、オルガンを高音でうねらせたり、モーグで未来的な音色を導入したり、時にパフォーマンス的な演出を交えて観客を惹きつけました。編曲の自由度が高く、スタジオ録音から大幅に展開されることも多く、オーディエンスは1曲ごとに新鮮な展開を体験しました。
当時の評価とその後の影響
結成当時は「分かれる評価」を受けることもありました。クラシックの引用や技巧を称賛する声と、「過度に見せる」演奏に否定的な意見が混在しました。しかし結果的に、The Nice の試みはプログレッシブ/シンフォニック・ロックの先鞭をつけ、キーボードが主導するバンド像やクラシックとロックの本格的な接合という方向性はELPやその後の多くのアーティストに影響を与えました。シンセサイザーのロック導入という点でも重要な足跡を残しています。
聴きどころと楽しみ方のコツ
- スタジオ盤とライブ盤を聴き比べる:ライブでの即興や編曲の変化に注目すると、バンドの本質が見えてきます。
- キーボードの役割を意識する:リード楽器としてのオルガン/シンセサイザーが楽曲の主題をどう変換しているかを追うと面白いです。
- クラシックやジャズの引用元を探す:元ネタが分かるとアレンジの妙味がより深く味わえます(引用が意図する文脈にも注目)。
- 時代背景(1960年代後半の文化・政治)を軽く押さえる:一部のカヴァーやアレンジは当時の社会的メッセージと結びついています。
まとめ — The Nice の魅力とは
The Nice の魅力は「大胆さ」と「技巧」の両立です。クラシック的な壮麗さとロックのエネルギーを直截にぶつける音楽性、キース・エマーソンの圧倒的な表現力、そしてトリオでありながらオーケストラ的なダイナミクスを作り出した点で、後のプログレッシブ・ロック史における重要な地点を形成しました。単に「技巧を誇る」だけでなく、時には政治的/文化的なメッセージを含めた表現を行った点も、現在聴き返す価値を高めています。
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参考文献
- The Nice — 日本語ウィキペディア
- The Nice — English Wikipedia
- The Nice — AllMusic
- The Nice — ProgArchives
- Keith Emerson — Britannica


