This Heat徹底解説:代表作『This Heat』『Deceit』を軸にしたレコード選びと聴きどころ
イントロダクション — This Heatとは
This Heatは1976年頃にロンドンで結成された実験的なバンドです。ポストパンクの時代に、ローファイな録音技法やテープループ、コラージュ的な構成、即興と綿密なアレンジを融合させた独自の音世界で知られます。音楽的にはロックの枠を越え、ノイズ、現代音楽、電子的処理、政治的な歌詞世界を横断するため、当時は商業的成功を大きく得なかったものの、後年に多くのミュージシャンや批評家から高い評価を受けています。
おすすめレコード(厳選)
This Heat — 『This Heat』
デビュー作にあたるアルバム。バンドの実験精神が凝縮された一枚で、断片的なサウンドの組み合わせや長尺の曲で聴き手を引き込む構成が特徴です。コラージュ的な編集、フェードやループの使用、そして即興的な演奏が混在するため、初めて聴く人にも「This Heatらしさ」がわかりやすく伝わります。音響的に荒々しい部分と繊細なテクスチャーが同居しており、バンドの出発点を理解するのに最適です。
This Heat — 『Deceit』
バンドの代表作であり、批評的にも最高傑作と目されることが多い2作目。より緻密なプロダクションと強い政治性(冷戦時代の不安、暴力や欺瞞への批判)を帯びた歌詞が特徴で、緊張感とメランコリーが同居する音像は聴く者に強い印象を残します。実験的手法はそのままに、メロディーや構成の磨かれた側面が増しており、入門盤としても、深く掘り下げる作品としても価値が高いです。
EP/シングル類 — 『Health and Efficiency』ほか
EPやシングルにはアルバムに収まらない短いアイデアや実験が詰まっています。よりダイレクトで即物的なトラックが多く、バンドの即興性やアイデアスケッチを楽しむには最適。特に初期のEP群は、その後のアルバムで展開される手法の原型を示してくれます。
ライヴ/コンピレーション — ライヴ盤やボックスセット(例:まとめもの)
スタジオ作品だけでは伝わりにくい即興的・暴発的な側面を味わうならライヴ録音、あるいは編集盤・ボックスセットがおすすめです。未発表音源やシングル、ラフミックスなどをセットで聴けば、制作過程やアイデアの変遷がよくわかります。入門者には代表作と合わせてこうした編集盤を一枚選ぶと全体像が把握しやすいでしょう。
各レコードの「聴きどころ」と理解のヒント
テクスチャーを聴く:ギターやシンセの鳴り、テープ処理、環境音やノイズの重ね方に注目すると、曲の「物語」や感情が立ち上がってきます。
対立する要素の共存:緻密な構成と即興的な逸脱、メロディとノイズ、政治的メッセージと抽象描写が同居します。どの瞬間が作り込みで、どの瞬間が即興かを想像しながら聴くと面白いです。
時代背景を頭に入れる:1970年代末〜1980年代初頭の冷戦と社会不安が、特に『Deceit』の歌詞・トーンに影響しています。音の緊張感は単なる実験のための実験ではなく、当時の社会感情と結びついています。
繰り返し聴く価値:初回は断片的に感じられる部分も多いですが、繰り返すごとに細部の処理や隠れたモチーフが明確になり、作品の深さが増します。
レコード選びのポイント(どの盤を買うか)
オリジナル盤 vs 再発:オリジナル・プレスはコレクターズアイテムで高価になりがちです。一方で、公式再発/リマスターは入手性と音質のバランスが良く、初めて買うなら再発でも十分満足できます。
収録内容を確認:オリジナルLPは収録曲や曲順が盤によって違うことがあるため、ボーナストラックの有無や編集盤の内容をチェックしましょう。まとめ盤は未発表曲やライヴを収めていることが多く、コアなファン向けです。
状態と信頼できる出所:ヴィンテージ盤を買う際は盤質(ノイズ、スクラッチ)とジャケットの保存状態、出品者の評価を確認してください。音質重視なら、信頼できるプレスや良好な状態の個体を選ぶのが鉄則です。
価格感:This Heatはニッチながら評価が高いため一部のレア盤は値が張ることがあります。まずは廉価な再発やCDで音世界を掴み、気に入ればオリジナルを探すという段階的な買い方がおすすめです。
影響と今日的な価値
This Heatの音楽はジャンルを超えて多くの後続アーティストに影響を与えました。ポストロックや実験音楽、アンビエント寄りの作曲、ノイズや電子処理の活用といった手法は現代の多くの作品にも生きています。そのため、単に「過去の名盤」としてだけでなく、現在の音楽制作やサウンドデザインを考える上でも聴く価値があります。
購入・鑑賞のアドバイス(簡潔に)
まずは代表作(特に『Deceit』)を聴いてバンドの核を掴む。
興味が湧いたらEPやライヴ、編集盤で幅を広げる。
オリジナル盤は魅力的だが高価。まずは良質な再発で入門するのが現実的。
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