Them(ザム)徹底ガイド:北アイルランド発・ヴァン・モリソン在籍時代の60年代名盤と聴き方

Them(ザム)とは:短期間で影響を残した北アイルランドの反逆者たち

Themは1960年代中盤、ベルファストで結成されたロック/R&Bバンドで、ヴォーカルのヴァン・モリソン(Van Morrison)が在籍していたことで最もよく知られます。活動期間そのものは短く、メンバーの入れ替わりも激しかったものの、持ち前の荒々しいR&B感覚とヴァン・モリソンのカリスマ的な歌声は、ガレージ・ロックや後のパンク/ブルース・ロックに強い影響を与えました。

おすすめレコード:押さえるべき3枚+補助盤

以下は「音楽的に聴く価値が高い」「入手しておくとThem理解が深まる」観点で厳選した推薦盤です。各アルバムごとに背景、聴きどころ、選ぶ際のポイントを解説します。

  • The Angry Young Them(1965)

    Themのデビュー作(UKタイトル)で、荒削りなR&Bナンバーとヴァン・モリソンの肉声が前面に出た作品。シングル「Gloria」「Mystic Eyes」「Baby, Please Don't Go」など、のちのガレージ・バンドにカバーされ続ける名曲が多数収録されています。

    聴きどころ:

    • 「Gloria」:シンプルで中毒性の高いリフとコール&レスポンス的なヴォーカル。ライブ感のある演奏が魅力。
    • 「Mystic Eyes」:ジャムっぽい原始的グルーヴで、ヴァンの即興的な歌い回しが堪能できる。

    選び方のポイント:オリジナルの1960s UKモノ盤は迫力があり当時の空気感を直に伝えるため一聴の価値があります。US盤は曲順や収録曲が異なる場合があるので、目的(オリジナル体験 vs ベスト的な収録)で選んでください。

  • Them Again(1966)

    2枚目のオリジナル・アルバム。制作におけるアレンジ志向が強まり、サイケやポップ色を取り入れた曲もあり、ヴァン・モリソンの作曲能力や表現の幅がより見える作品です。「Here Comes the Night」などシングル曲の洗練が進んでいます。

    聴きどころ:

    • 「Here Comes the Night」:プロダクションとメロディーの魅力が際立つ一曲。ポップ・センスとソウルのミックスが特徴。
    • 深めの曲調・陰影のある曲群:デビュー作の直情的な力強さとは異なる、叙情的・内省的な側面が見える。

    選び方のポイント:このアルバムからヴァンの作曲・表現がより複雑になってくるので、単に「荒々しさ」を求める人より、ヴァンのポテンシャルや67年前後以降の変化を追いたい人におすすめです。

  • 代表シングル&ベスト系(編集盤)

    Themの本質はシングル群に凝縮されています。オリジナル・シングル(7インチ)や、初期シングルをまとめた編集盤は入門として最適です。特に「Gloria」「Baby, Please Don't Go」「Here Comes the Night」「Mystic Eyes」は必須トラック。

    おすすめの聴き方:編集盤でまず主要トラックを把握し、その後アルバムへ遡るとバンドの音楽的展開がわかりやすくなります。後発の「ベスト」やコンピは時にアルバムとは別ミックスを使っているので、曲ごとのクレジット(オリジナル・ミックス/アルバム・ミックス)をチェックすると良いでしょう。

  • レア/コンプリート集(コレクター向け)

    熱心なコレクターには「デッカ時代の完全収録」やレアトラックをまとめた2枚組/ボックスセットが便利です。未発表テイク、BBCセッション、シングルB面などが一度に手に入るので、Themのスタジオ外での演奏やヴァンの初期ヴォーカルの変遷を追えます。

    選び方のポイント:解説書やライナーノーツの充実度で選ぶと価値が高いことが多いです。音質面では、当該コレクションがリマスター済かどうかを確認してください(但しリマスターの方向性によってはオリジナルの荒さが失われることもあります)。

Themを聴くときに注目したい視点

  • ヴァン・モリソンのヴォーカル表現:感情の起伏、ブルースとR&Bの消化の仕方は後年のソロ作につながる重要な萌芽。
  • 粗さと洗練のバランス:デビュー作はストレートな荒々しさ、2作目以降はアレンジの工夫やポップ性が増す。
  • 影響度:当時のアメリカR&Bと英国ビートの接点に立ちながら、5年後のガレージ/パンク的な要素を先取りしている点。
  • シングル中心のシーン理解:60年代中盤の英国ではシングルのヒットがバンドの評価を決めがちだったため、シングル群がそのままバンド像を形作っています。

購入・探し方の実務的ヒント(簡潔に)

  • 入門は「好評なリマスターや編集盤」で:主要トラックをまとめてチェックしたいなら、信頼できるレーベルの編集盤が手早い。
  • オリジナル体験は60sモノラル盤:歴史的な空気感/迫力を重視するならオリジナルのモノラル・プレスを探す価値あり。
  • 盤ごとの収録差に注意:UK/USのLPは曲順や収録曲が違うことがあるので、目的(オリジナル英国盤の体験 vs ベスト的収録)に応じて選ぶ。

最後に:Themの聴きどころまとめ

Themは「荒々しいR&B」と「メロディの魅力」を同居させた稀有な存在です。ヴァン・モリソンの声を軸に、シンプルなロック・バンドの熱量を存分に味わえるデビュー、そこから深化する2作目、さらにシングル群に散らばる名曲群──これらを追えば、1960年代の英国ロックの重要な断面が見えてきます。まずは主要トラックを押さえた編集盤で入り、気に入ればオリジナルLPやコンプリート集に手を伸ばすのが効率的です。

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参考文献