ジミー・スミス入門:ハモンドB-3の革新とソウルジャズ名盤7枚で聴き方まで徹底ガイド

ジミー・スミス(Jimmy Smith)入門 — なぜ聴くべきか

ジミー・スミス(1928–2005)はハモンドB-3オルガンをジャズの前景に押し上げた立役者です。ビバップの語法をオルガンに持ち込み、ブルースのグルーヴと高速インプロヴィゼーションを融合させたサウンドは、ソウルジャズ/グルーヴ系の基礎を築き、後世のオルガニストやギタリスト、サックス奏者に大きな影響を与えました。本コラムでは「まず何を聴けばジミー・スミスの魅力が分かるか」を軸に、代表的なレコードをピックアップして解説します。

おすすめレコード(厳選7枚)

  • Back at the Chicken Shack(Blue Note, 1960)

    おすすめポイント:ジミーの「スモーキーでファンキーな側面」が最も濃厚に出た名盤。テナーにスタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)を迎えた編成で、タイトル曲の泥臭いグルーヴはジャズ・クラシックです。

    注目トラック:Back at the Chicken Shack(タイトル曲)、When I Grow Too Old to Dream

  • The Sermon!(Blue Note, 1959)

    おすすめポイント:長尺の、語りかけるような演奏が並ぶアルバム。ソロがじっくり展開され、オルガンのダイナミクスと空間の使い方を堪能できます。ブルーノート期の整ったサウンドも魅力。

    注目トラック:The Sermon(長尺のトラックで構成の妙を味わえる)

  • Home Cookin'(Blue Note, 1959)

    おすすめポイント:より親しみやすく「ソウルフル」な面が前面に出た一枚。ジャズ初心者にも取り付きやすいメロディとグルーヴが多く、ジミーの「歌う」ようなフレージングが楽しめます。

    注目トラック:いくつかの短めのナンバーが並び、アルバム全体を通して聴きやすい。

  • Midnight Special(Blue Note, 1961)

    おすすめポイント:ブルース寄りの曲が多く、ジミーの「泥臭い」スイング感とソロのノリが際立つ作品。ブルーノートでの充実期を象徴する1枚です。

    注目トラック:タイトル曲やブルース・フィーリングの強いナンバー群

  • The Cat(Verve, 1964)

    おすすめポイント:クレード・テイラー(Creed Taylor)制作、ラロ・シフリン(Lalo Schifrin)らのアレンジを取り入れた「シネマティックでグルーヴィー」なアルバム。商業的にも成功し、ジミーの幅広い魅力(ジャズ的アプローチ+ポップなセンス)を示します。

    注目トラック:アルバム全体が雰囲気重視のアレンジで統一されているため、冒頭から通して聴くのがおすすめ。

  • Organ Grinder Swing(Verve, 1965)

    おすすめポイント:ポップ/グルーヴ志向のアレンジとスモーキーなオルガンが融合。ビッグ・バンド風味のアレンジやリズムの切り替えが聴きどころで、ライヴ感覚に近いテンションを持つ曲もあります。

    注目トラック:タイトル曲を含む、グルーヴ重視のナンバー群。

  • Jimmy & Wes: The Dynamic Duo(Verve, 1966)

    おすすめポイント:ギタリスト、ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)との共演盤。ギターとオルガンという相性抜群の組み合わせで、スイング感とメロディアスな即興が光る一大コラボレーションです。

    注目トラック:デュオ形式のインタープレイ(呼吸の合ったソロの応酬)をじっくり味わってください。

各アルバムで聴き分けたいポイント

  • ブルーノート期(Back at the Chicken Shack、The Sermon! など) — 小編成での密度の高い即興と、ブルース/ビバップ的語法が濃厚。オルガンがリズムとソロを同時に牽引する、原点的な魅力を味わえます。

  • ヴァーヴ期(The Cat、Organ Grinder Swing、Jimmy & Wes) — アレンジやプロダクションが洗練され、映画音楽的な要素やポップ志向が増える時期。ジミーの表現領域が広がり、ジャズ以外のリスナーにも訴えるサウンドになっています。

ジミー・スミスの演奏上の特徴(聴きどころを技術寄りに)

  • グルーヴの一体感 — 左手/足(ペダル)でベースラインを作りながら、右手でコンピングとソロを同時進行させることで、ピアノトリオとは異なる一体感のあるリズムを作ります。

  • ブロックコードとシングルラインの使い分け — 時に厚い和音で押し、時に速いシングルラインで走る。これが「歌う」ソロと「ドライヴする」裏打ちを同時に生み出します。

  • ブルース感とビバップ語法の融合 — ブルースのフレーズを基調にしながら、ビバップのクロマティシズムやトリル、装飾句を導入して即興に深みを出します。

  • 相互作用(インタープレイ)の妙 — テナーサックスやギターとの掛け合いで、スペースの使い方(間)や応酬が重要になります。特にスタンリー・タレンタインやウェス・モンゴメリーとの共演盤はその好例です。

聴き方・プレイリストの提案

  • 入門(まずは1枚) — Back at the Chicken Shack:ジミー節が端的に分かる名盤。

  • 深掘り(ブルーノート期) — The Sermon! → Home Cookin':長尺演奏と短いナンバー、両方で表現の幅を確認。

  • 拡張(サウンドの多様性) — The Cat → Organ Grinder Swing → Jimmy & Wes:アレンジやコラボレーションでの別側面を楽しむ。

  • 集中して聴くときのポイント — ソロが始まる前のコンピング/ベースラインの変化、テーマの再提示、他楽器との会話(応答)に注目すると、オルガンの役割が鮮明に見えます。

盤やエディションについての簡単な注記

オリジナルのブルーノート盤(1950〜60年代リリース)と、1960年代以降のヴァーヴ作品では録音・編成・アレンジに違いがあります。音質の好みやジャズの「生っぽさ」を重視するならブルーノート期のオリジナルや信頼できるリマスター盤を、アレンジ重視やクロスオーバー感を楽しみたいならヴァーヴ期のLPやCDを選ぶとよいでしょう。

まとめ

ジミー・スミスは「ハモンド・オルガンでここまで表現できるのか」を示した革命的な存在です。ブルーノート期の小編成での即興の強さ、ヴァーヴ期のプロダクションの巧みさ、そしてウェス・モンゴメリーなどとの共演に見られる相互作用——それぞれのアルバムが違った側面を教えてくれます。まずは「Back at the Chicken Shack」や「The Sermon!」から入って、徐々にヴァーヴ期の作品へ広げる聴き方をおすすめします。

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

エバープレイオンラインショップのバナー

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery

エバープレイ(Eberplay)はレコードや音楽配信、アーティスト/アルバム紹介を行うサービスや店舗の名前として使われることがあります。ここではジミー・スミス作品の入手や盤の情報確認、リリース履歴のチェックに役立つリソースとして参照いただけます。

参考文献