マーサ・アンド・ザ・ヴァンデラス徹底ガイド:モータウンのダンス・グルーヴをヴァイナルで味わう必聴シングルと名盤
序文 — モータウンを踊らせた女声グループ
Martha and the Vandellas(マーサ・アンド・ザ・ヴァンデラス)は、モータウン黄金期を代表するダンス志向の女性ボーカル・グループです。マーサ・リーブスの力強くソウルフルなリード・ヴォーカル、コール&レスポンスのコーラス、そしてファンクブラザーズの刻むリズムが噛み合い、単なる「ガール・グループ」を越えたエネルギーを放ちました。本コラムでは、時代背景と楽曲分析、ヴァイナルで手に入れる価値のあるおすすめ盤を深掘りして紹介します。
グループとサウンドの特徴
メンバーと変遷 — 代表はマーサ・リーブス(リード)、初期のコーラスはロザリンド・アッシュフォード、アネット・ビアード(のちにベティ・ケリー等)。メンバー交代はあったものの、マーサの歌唱が常に中心でした。
プロダクション — 初期のヒットの多くは Holland–Dozier–Holland(H-D-H)らモータウンのヒットメーカー陣が手掛け、ファンクブラザーズの生々しいバック演奏と、シンプルかつ強力なアレンジが特徴です。
表現の特徴 — ゴスペル的なシャウトとリード、ダンサブルなビート、コール&レスポンスの配置。歌詞は恋愛・心情の歌が中心ですが、そのサウンドはクラブ/ダンス・フロア直結です。
社会的な側面 — 特に「Dancing in the Street」は単なるダンス曲を越え、1960年代の公民権運動や市民の公共空間での連帯感と結びつけて語られることがあります(作詞作曲者やリリース当初の意図はダンスの誘いだった点にも言及されます)。
必聴シングル(7インチ=45回転) — 聴くべき“瞬間”
Martha and the Vandellasはシングル=瞬発力のグループです。以下はレコード購入で特に押さえたい代表的45回転盤と、その聴きどころです。
Heat Wave(1963)
H-D-Hによる疾走感あふれるナンバー。マーサのシャウト系リードと刻むリズムが印象的で、グループの名を広めた代表曲です。ダンスの熱量をそのまま切り取ったようなアレンジが聴きどころ。Come and Get These Memories(1963)
デビュー期を象徴するナンバーで、切なさと前向きさが混ざった歌詞、H-D-Hの典型的なメロディ・ラインが光ります。初期モータウン・ポップの好例。Dancing in the Street(1964)
ダンス曲の金字塔。コミュニティを巻き込むようなコーラス・フックとエネルギーに満ちており、後年までカバーや再評価が続いた名曲です。屋外で大勢が踊るイメージを即座に想起させます。Nowhere to Run(1965)
少しダークでブロック感のあるサウンド。マーサの切迫した歌い回しが効いており、バックのアレンジ(ヘヴィなリズム、金物の使い方等)が独特の緊張感を生みます。Jimmy Mack(1967 リリース)
録音は1960年代中盤ですが、リリースや評価はやや後年に広がりました。恋人への思いを歌うポップさと、ブリッジの高揚感が強い名曲で、シングル単体の完成度が非常に高いです。I'm Ready for Love(1966)
スロウ寄りのナンバーながらソウルフルで、マーサの表現力がよく出ています。ダンス・ナンバーだけでない幅を示す一曲。
アルバム/コンピレーションのおすすめ
Martha and the Vandellasの作品はシングル中心ですが、LPやコンピレーションで聴くと楽曲群の連続性や時代変化がわかりやすくなります。以下は特におすすめの盤種です。
初期オリジナルLP(例:Come and Get These Memories)
初期のシングル群をまとめたオリジナルLPは時代の息づかいを感じられます。オリジナルの曲順やモノ・ミックスの感触を体験したい向きに。ベスト/編集盤(モータウン公認の“ベスト・オブ”)
ヒット曲を一枚にまとめた編集盤は入門用に最適。選曲によってはアルバム未収録のシングルやB面も収録されているものがあり、網羅性の高い編集盤を選ぶと良いです。アンソロジー/ボックスセット
収録曲数が多く、レアなテイクや未発表音源を含む場合もあります。コレクターやより深く音楽史を辿りたい人向け。
曲ごとの深堀り — なぜ名曲になったか
Heat Wave
テンポの速さと強烈なシャウト。歌詞は恋の“熱さ”を直截に伝えるもので、当時のダンス・フロア需要にマッチしました。H-D-Hのメロディ構築力が存分に活かされています。Dancing in the Street
シンプルかつ強烈なコーラス・フック(“Come on, baby, now”のフレーズ)が耳に残ります。リズムはストリート感を感じさせ、シンプルなコード進行とハンドクラップ的なビートで大勢で歌える普遍性を獲得しました。その結果、単なるダンス曲を越えた共感性を生んでいます。Nowhere to Run
メロディの切迫感、バックのリズムと効果音的なアレンジが「逃げ場のない感情」を音で表しています。マーサのヴォーカル表現が曲のドラマを牽引します。Jimmy Mack
ポップさとソウルフルな情感が同居。編曲のコントラスト(サビの高揚、ヴァースの切なさ)が際立ち、シングルとしての完成度が高いです。
どの版を狙うべきか(プレス/ミックスの選び方)
音質やミックスの好みは個人差がありますが、以下のポイントを目安にすると満足度が高いです。
オリジナル・シングル(Gordy / Motown 7" 45s) — 当時のモノ・ミックスやエネルギーを聴きたいなら最良。特にシングル曲はモノの方に力が入っていることが多いです。
初期LPのモノ盤 — LPでまとまった聴き方をする際、60年代当時のミックス感を重視するならモノLPを探す価値があります。
信頼できる編集盤/リイシュー — 近年のリマスターや公式アーカイブからの編集盤は、音のバランスが整えられ利便性が高い。収録の網羅性や解説の充実度で選ぶと良いでしょう。
ライヴとパフォーマンスの魅力
スタジオ録音の魅力もさることながら、マーサ・アンド・ザ・ヴァンデラスはステージでのエネルギーが大きな魅力です。マーサのヴォーカルはライヴでより一層感情豊かに響き、コーラスの掛け合いとダンスの動きが楽曲に肉体性を与えます。可能ならライヴ音源や映像も併せて体験すると、スタジオ録音では掴めない躍動感が伝わります。
おすすめの購入戦略(音楽的観点から)
まずは代表的なシングル群(上で挙げたヒット曲)を一通り聴いて、どの時期のサウンドに好みがあるかを確認しましょう。
「ダンス寄りのエネルギー」が好きなら初期〜中期のシングルを中心に集めると良いです。ソウル/バラード系に惹かれるなら中期のスロー・ナンバーやLPの深掘りがおすすめ。
コレクター志向ならオリジナルのGordy/Motownプレスを、手軽に良音で楽しみたいなら公式リマスターの編集盤や再発LPを探すと満足度が高いでしょう。
現代への影響とカバー
「Dancing in the Street」をはじめ、彼女たちの楽曲は多くのアーティストにカバーされ、映画やCMなどでも頻繁に使用されてきました。グループのダイナミックな表現は、後のソウル/R&Bシンガーやガール・グループに少なからぬ影響を与えています。モータウンの“グルーヴの作り方”を学ぶうえで、マーサとヴァンデラスは教科書的存在です。
まとめ — 何を買うべきか一言で言うと
まずは代表シングル群(Heat Wave / Come and Get These Memories / Dancing in the Street / Nowhere to Run / Jimmy Mack)を押さえ、そのうえでオリジナルLPや充実したアンソロジーを一枚選ぶのが王道です。モータウンのダンス・グルーヴを体現した彼女たちの音楽は、単曲の強さとグループとしての一貫性の両方が魅力。ヴァイナルで聴くと、その“体感”がより鮮やかになります。
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参考文献
- Martha and the Vandellas — Wikipedia
- Martha & the Vandellas — AllMusic
- Martha And The Vandellas — Discogs
- Martha Reeves and the Vandellas — Motown Museum
- Martha and the Vandellas — Rolling Stone (Biography)


