The Incredible String Band(ISB)名盤ガイドと聴き方:フォークとサイケの境界を超える音楽を深掘り

イントロダクション:The Incredible String Bandとは

The Incredible String Band(以下ISB)は、1960年代後半の英国フォーク/サイケデリック・シーンを代表する異色のグループです。スコットランド出身のロビン・ウィリアムソン(Robin Williamson)とマイク・ヘロン(Mike Heron)を中心に、伝統的なフォークから中東・アジアの民族音楽、バロックやブルースの要素を融合させた独特のサウンドを築き上げました。詩的で宗教的・神秘主義的な歌詞、様々な民族楽器の導入、そして実験的アレンジが特徴で、フォークの枠を越えた“サイケデリック・フォーク”の金字塔として今も聴き継がれています。

おすすめレコード(アルバム)と深掘りレビュー

  • The 5000 Spirits or the Layers of the Onion(1967)

    ISBの初期作を代表するアルバムで、伝統的なフォーク感覚と実験的なアレンジが混在しています。アルバム全体に流れる民俗学的興味と、東洋のメロディーに対する憧憬が聴き取れます。

    おすすめポイント:

    • 「A Very Cellular Song」のような長尺の組曲的楽曲で、宗教的なモチーフや反復構造を用いたドラマ性が味わえます。
    • ギターやバンジョーに加え、マンドリンやハープシコード的なアレンジ、民族楽器がアクセントになっており、聴きどころが多い。
    • ISBが“フォークにとどまらない”ことを強く印象づけた重要作。
  • The Hangman's Beautiful Daughter(1968)

    ISBの代表作かつ多くの批評家が最高傑作に挙げるアルバム。シンプルなフォークの枠を越え、精緻なアレンジと深い叙情性を兼ね備えた作品です。サイケデリック期の美学と古楽・民族音楽の融合が最高潮に達しています。

    おすすめポイント:

    • 豊かなテクスチャーと夢幻的なサウンドスケープ—ボーカルやアコースティック楽器の多層的重ね合わせが印象的です。
    • 詩的で神話めいた歌詞世界が展開され、聴くたびに新しい発見がある深いアルバムです。
    • この1枚でISBの“神秘派フォーク”の核が最も明確に示されています。
  • Wee Tam and the Big Huge(1968)

    同年に発表された二部作の一枚(もう一枚はThe Hangman's...と対をなすような関係にある)で、より実験的・即興的な要素が強い作品です。個々の楽曲が持つ自由さと民族楽器の多様性が光ります。

    おすすめポイント:

    • 長尺や組曲的な構成の楽曲が多く、サイケデリックな即興感と民俗的主題が交差します。
    • アルバム全体を通じて、メロディーとテクスチャーのバランスが取りづらいが、それが逆にISBらしい魅力につながっています。
  • I Looked Up(1970)

    1960年代末から1970年代初頭へと移行する時期の作品で、よりポップな要素やソングライティングのまとまりが出てきたアルバム。伝統音楽的な素養を保ちながらも曲の構成が洗練され、聴きやすさが増しています。

    おすすめポイント:

    • フォーク~ポップのバランスが良く、ISB入門盤として取り組みやすい側面があります。
    • メロディー重視の楽曲が増え、ラジオ感覚でも楽しめる曲が含まれます。
  • Liquid Acrobat as Regards the Air(1971)

    バンドがさらにエレクトリックな要素やジャズ的・ブルース的なテイストを取り入れた時期の作品。70年代のロビンとマイクが模索し続けた音楽性の広がりを感じられる一枚です。

    おすすめポイント:

    • 従来のサウンドに新しい楽器や編曲が加わり、聞き手の期待を裏切る多様性があります。
    • フォークの枠組みにこだわらないアプローチが好きなリスナー向け。

アルバムごとの「聴きどころ」のガイド

  • 導入者(入門)向け

    まずは「I Looked Up」あたりから聴くと、ISBのメロディーセンスと歌詞世界に入りやすいです。フォーク的な骨格がありつつ、エキゾチックなアレンジが加わるので“外し”としての驚きも体験できます。

  • コア・ファン(深掘り)向け

    「The 5000 Spirits…」と「The Hangman's Beautiful Daughter」は作品世界が深く、反復して聴くことで細部が見えてきます。歌詞の象徴性や音色の重ね方に注目して、アルバム全体を一気に通して聴くことをおすすめします。

  • 実験好き向け

    「Wee Tam…」や「Liquid Acrobat…」は即興的・実験的要素が強く、楽器間の掛け合いや突発的な転調、予期せぬ音色の組み合わせを楽しめます。

聴き方と楽しみ方のポイント

  • アルバム単位で聴く:ISBの作品は曲単体以上にアルバム全体の流れや世界観で楽しむのが醍醐味です。可能ならLPでA面→B面を通して聴くのをおすすめします(レコードの再生技術についての具体的注意は割愛します)。

  • 歌詞を追う:詩的で象徴的な歌詞が多いので、歌詞カードや歌詞サイトを見ながら聴くと新たな理解や発見があります。

  • 楽器の違いを味わう:アコースティックギターやバンジョーだけでなく、民族楽器の一つ一つの音色や奏法に注目すると、録音ごとのサウンド作りの妙を感じ取れます。

  • 時代背景を読む:60年代後半のサイケデリック文化や民俗学的興味がどうアルバムに反映されているかを考えると、作品の位置づけがより鮮明になります。

入手・エディションの選び方(簡潔に)

オリジナル盤はコレクター人気がありますが、リマスター再発盤は音のバランスが改善されていることが多く、初めて聴くならリマスター/再発CDや公式ストリーミングで聴いてから好みのアナログ盤を探すのが効率的です。紙ジャケットやボックスセットには未発表曲や拡張ライナーノートが付くことがあるので、資料・解説重視の方はそうしたエディションを検討してください。

さらに深掘りしたい人へのおすすめアプローチ

  • メンバー別のソロ作を聴く:ロビン・ウィリアムソンとマイク・ヘロンはそれぞれ幅広いソロ作品を残しており、ISBサウンドの源流や拡張を理解する手助けになります。
  • 同時代の関連アーティストを比較する:Nick DrakeやFairport Convention、Pentangleなどの英国フォーク系アーティストと並べて聴くと、ISBの独自性がよりクリアになります。
  • 歌詞と民俗学を関連付ける:歌詞に現れる神話や儀礼的イメージを調べると、曲の象徴性が立体的に見えてきます。

まとめ

The Incredible String Bandは「フォーク」と一言で片付けられない多層的な魅力を持つグループです。まずは「I Looked Up」で入り、「The 5000 Spirits…」や「The Hangman's Beautiful Daughter」で深掘りし、さらに「Wee Tam…」「Liquid Acrobat…」で実験精神を味わう――という順で聴くと、彼らの変遷と多彩さを効率よく体験できます。歌詞の詩性、楽器の多様性、アルバムごとの世界観に注目して、じっくりと時間をかけて味わってください。

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参考文献