Martha and the Vandellasの魅力と歴史—Heat WaveからDancing in the Streetまで、モータウン黄金期を彩る女性ソウル
プロフィール — Martha and the Vandellasとは
Martha and the Vandellas(マーサ・アンド・ザ・ヴァンデラス)は、1960年代にデトロイトのモータウン(Motown/Gordy)から登場したアメリカの女性ソウル/ガール・グループです。力強いリード・ヴォーカルと緻密なコーラス、そしてファンキーでダンサブルなビートを武器に、モータウンの黄金期を象徴する存在となりました。代表曲には「Heat Wave」「Dancing in the Street」「Nowhere to Run」「Jimmy Mack」などがあり、ポップ/ソウルの重要なレパートリーを多く残しています。
結成と経歴の概略
グループは1950年代末〜1960年代初頭に、もともと地元デトロイトで活動していた女性コーラス・グループとしてスタートしました。中心となったのはリード・シンガーのマーサ・リーブス(Martha Reeves)と、コーラスのロザリンド・アッシュフォード(Rosalind Ashford)、アネット・ビアード(Annette Beard)らです。マーサは当初モータウンのオフィスで秘書として働いていましたが、グループのボーカルとして抜擢されレコーディング契約を得ます。
モータウンの主要ライター/プロデューサー陣、特にホーランド=ドジャー=ホーランド(Holland–Dozier–Holland)と組んで次々とヒットを放ち、1963年頃から中盤〜後半にかけて絶頂期を迎えました。デトロイトのスタジオ・ミュージシャン(いわゆるFunk Brothers)によるグルーヴ感と、マーサの熱い歌唱が結実したサウンドは、当時のダンス・フロアやラジオを席巻しました。
音楽的な魅力と特徴
- ゴスペル由来の力強いリード・ヴォーカル:マーサ・リーブスの歌声はソウルフルで、説得力のあるフレージングと力強さが特徴です。ゴスペル的な推進力をポップ・ソングに落とし込むことで、聴き手を一気に引き込む力があります。
- コール&レスポンスのコーラス:ロザリンドらのコーラスは単なるハモリ以上に、リードと掛け合うことで楽曲に緊張感と躍動感を与えます。これはモータウン・サウンドの重要要素です。
- Funk Brothersによるグルーヴ:スネアとベースの明確なビート、シンプルだが効果的なギター/ホーンのリフが楽曲を支え、ダンス向けながらもソウルの深さを保っています。
- 作家・プロデューサー陣の職人仕事:ホーランド=ドジャー=ホーランドらによるキャッチーで骨太なメロディと効果的な編曲が、マーサたちの特徴を効果的に引き出しています。
- 歌詞の幅:一見ダンス・ソングであっても、恋愛の葛藤や心情をストレートに描くものが多く、世代を超えて共感を呼びます。「Dancing in the Street」のように時代の社会的文脈と結びついて語られる楽曲もあります。
代表曲と名盤(推薦リスト)
どれから聴いても彼女たちの魅力が実感できますが、とくに押さえておきたい曲とアルバムを紹介します。
- Heat Wave (1963) — より激しく推進するリズムとキャッチーなコーラスが印象的な初期の大ヒット。ライブでも定番の盛り上がり曲です。
- Quicksand (1963) — 少しダークで切羽詰まった感情を表現したナンバー。マーサの感情表現が際立ちます。
- Dancing in the Street (1964) — 一聴すると単純なダンス・チューンですが、1960年代の都市の空気や社会的な高揚感とも重ね合わせて語られる曲。アメリカのポップ・カルチャーに残るアンセムです。
- Nowhere to Run (1965) — 武骨なリズムと決然とした歌詞が魅力。モータウンのロック寄りグルーヴが出ています。
- Jimmy Mack (1967) — 切ないラブソングながらソウルフルでポップなアレンジが光る後期の代表曲。
- おすすめアルバム:ベスト盤や編集盤("The Very Best of Martha Reeves & the Vandellas" 等)でヒット群をまとまって聴くのが入門に適しています。オリジナルLP中心に聴くなら、1963〜1967年のシングル群が充実したコンピレーションを探すと良いでしょう。
ライブとパフォーマンスの魅力
ステージ上のマーサは表現力が豊かで、聴衆とのコミュニケーションに長けていました。ダンス・ナンバーではボディとヴォーカルを連動させ、コーラス陣との振付や呼吸の揃い方も魅力です。ラジオ録音や当時の映像を観ると、衣装や振付の「ショー性」だけでなく、歌唱の生々しい迫力が伝わります。
影響とレガシー
- 1960年代のガール・グループ/ソウル・シーンにおける重要な存在で、多くのアーティストに影響を与えました。
- その楽曲はカバーされ続け、現代でもさまざまな映画・CM・イベントで流れることが多く、文化的アンセムとしての生命力があります。
- 「Dancing in the Street」は政治的・社会的な文脈でも取り上げられ、単なるダンス曲を超えた意味合いを帯びることがしばしばあります(作曲者の意図はダンス・チューンとしての側面が強いものの、受け取られ方が時代により変化しました)。
聴きどころガイド — どこを注目して聴くか
- まずはリード(マーサ)のイントロやフレーズの入り方。曲の“顔”はここで決まります。
- コーラスの入りとタイミング。コール&レスポンスが掛け合いの強弱を作り出します。
- リズム隊(ベース、ドラム、ギター)のシンプルだが効果的なパターン。細かなフィルインやブレイクに注目すると演奏の巧妙さが分かります。
- ホーンやパーカッションのリフ。短いモチーフが曲全体を牽引することが多いので、繰り返し聴くと新たな発見があります。
- 歌詞の言葉選びとその発声。感情の見せ方が原曲の魅力の一つなので、歌詞を追いながら聴くと深みが増します。
時代背景と社会的な位置づけ
モータウンは当時、黒人音楽をアメリカのポップ市場へ押し上げる役割を果たしました。Martha and the Vandellasのヒット群は、ダンス音楽としての楽しさと、黒人コミュニティの感情や都市文化を映し出す鏡の両方の役割を果たしました。とりわけ「Dancing in the Street」は、リリース後に公民権運動や都市暴動の文脈で引用されることがあり、音楽が時代と交差する好例となっています。
今日の聴き方とおすすめの楽しみ方
- 原曲のシングル/アルバム音源を大きめの音量で聴くと、Funk Brothersのグルーヴやマーサのエネルギーが生々しく伝わります。
- ライブ映像や当時のテレビ出演アーカイブを見ると、パフォーマンスの魅力が視覚的にも楽しめます。
- 同時代の他アーティスト(スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、スティーヴィー・ワンダー等)と比較して聴くと、モータウン内部での音作りの違いや個性が見えます。
まとめ
Martha and the Vandellasは、マーサ・リーブスの魂を揺さぶる歌唱と、切れ味あるコーラス、モータウンの巧みなプロダクションが融合したグループです。ダンス・ナンバーの楽しさとソウルの深さを両立させた楽曲群は、現在でも色褪せず、多くのリスナーに影響を与え続けています。はじめて聴く人は、まず「Heat Wave」「Dancing in the Street」「Nowhere to Run」「Jimmy Mack」あたりを押さえて、その後にベスト盤やライブ映像を追うと、彼女たちの全体像が掴みやすいでしょう。
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