The Incredible String Band(ISB)入門ガイド:名盤解説と聴き方のコツ
プロフィール
The Incredible String Band(以下ISB)は、1960年代後半の英国(スコットランド発祥)のフォーク/サイケデリック・シーンを代表するアーティスト/グループです。中心人物はロビン・ウィリアムソン(Robin Williamson)とマイク・ヘロン(Mike Heron)で、当初はフォーク・デュオとして出発しましたが、多彩な民族楽器や女性メンバーの加入を経て、独自のサウンドを確立していきました。活動初期から1968年前後にかけての一連の作品で国際的評価を受け、やがてメンバーのソロ活動や解散を経ながらも、後年において再評価が進んだグループです。
音楽的特徴と魅力
楽器の多様性:アコースティック・ギター、ハープ、マンドリン、シタール、オウド、ドルシマー、ハルモニウムなど、ヨーロッパ伝統楽器と中近東・南アジア由来の民族楽器を自在に持ち替え、曲ごとに異なる色合いを生み出します。
ジャンル横断のアプローチ:英国フォークに根ざしつつ、サイケデリック、ワールドミュージック、ジャズ風の即興性やコラージュ的なアレンジを取り入れ、聴覚的に豊かな旅を提示します。
詩的で神秘的な歌詞世界:民話、神話、自然、恋愛、精神性などをモチーフにした歌詞は、直線的な物語よりもイメージの連鎖や内的な情景描写を重視し、リスナーの想像力を刺激します。
ボーカルとアンサンブル:ロビンの物語的な語り口とマイクの歌唱の対比、女性メンバーを含むハーモニーやコール&レスポンス的なパートを効果的に使った編成が、楽曲に多層的な表情を与えます。
代表曲と名盤(入門ガイド)
ISBの作品群はアルバム単位で聴くことで世界観をより深く味わえます。以下は入門として押さえておきたい作品とポイントです。
The Incredible String Band(1966)— デビュー作。フォークを基盤にした素朴さと、既に見られる多楽器志向の芽が確認できます。
The 5000 Spirits or the Layers of the Onion(1967)— 音楽性の幅が広がり、サイケデリックな要素やワールド・ミュージック的な色合いが強まった重要作です。
The Hangman's Beautiful Daughter(1968)— 一般的にISBの最高傑作として評価されるアルバム。長尺で展開する叙事詩的な楽曲や、豊かな音響設計が聴きどころで、彼らの芸術性が結実した一枚です(代表曲のひとつに「A Very Cellular Song」があります)。
Wee Tam and the Big Huge(1968)— 双方向のコンセプト性や二つの異なるサイドを提示する構成など、実験的野心が見られる大作です。
後期作(1970年前後)— メンバー編成や音作りの変化により、よりロック寄り、あるいはアレンジ志向が強くなる作品群も存在します。初期の純度とはまた違った魅力があります。
ライブ/パフォーマンスの魅力
ISBのライブはスタジオ録音とは別の冒険性があります。メンバーが頻繁に楽器を持ち替え、即興的にアレンジを変えたり、場面転換的な演奏を行ったりするため、同じ曲でも公演ごとに異なる表情を見せます。また、装飾的な衣装や舞台演出、物語性の強いMCなど、単なるフォーク・コンサートを超えた「小さな劇場」のような雰囲気をつくり出すことがありました。
後年の評価と影響
1960年代末の一時代を作った彼らの業績は、その後のフォーク・リヴァイバルやサイケデリック系アーティスト、インディー・フォーク系ミュージシャンに少なからぬ影響を及ぼしました。21世紀に入ってからの「ニュー・フォーク/サイケデリック・フォーク」勢(いわゆるフェイク・フォークやウォンビエ系の若手)からも、ISBの自由で境界を越える姿勢や民族音楽への敬意が参照されることが多いです。また、音楽史的には英国のカウンターカルチャーと深く結びついた存在として再評価されています。
聴き方のコツ
アルバム単位で聴く:曲ごとの断片的な聴取よりも、アルバム全体を通して聴くことでテーマ性や音響の配置を感じ取りやすくなります。
歌詞と音像を重ねる:歌詞は直接的でない表現が多いので、情景や楽器音の色味と合わせてイメージを膨らませると深みが増します。
演奏の細部に注目:楽器の切り替えや即興フレーズ、微妙な音色の違いに耳をすませると、新たな発見があります。
歴史的位置を意識する:1960年代後半という時代背景(カウンターカルチャー、東洋思想や民俗学への関心の高まり)を踏まえると、作品の意図や表現がより理解しやすくなります。
まとめ:ISBの本質
The Incredible String Bandは、「ジャンルの境界を取っ払い、世界中の音色を自分たちの詩的表現に取り込む」ことを実践した先駆者です。彼らの魅力は単なるノスタルジックなフォーク回帰に留まらず、実験精神と豊かな色彩感覚、そして聴き手の想像力を刺激する語り口にあります。初めて触れる人はまずは代表作をゆったりとした気持ちで通して聴き、細部に耳を傾けることで深い世界へと導かれるでしょう。
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