Pharoah Sanders プロフィールと名盤ガイド—Karma から Tauhid まで、聴き方とスピリチュアル・ジャズの魅力

Pharoah Sanders — プロフィール

Pharoah Sanders(ファラオ・サンダース、本名:Ferrell Sanders)は、1940年10月13日生まれ、2022年9月24日没のアメリカのテナー/ソプラノ・サクソフォニスト。1960年代半ばにジョン・コルトレーンのグループに参加して注目を集め、その後はスピリチュアル・ジャズの旗手として独自の世界を築きました。野性味のあるサウンド、倍音・マルチフォニクス(同時に複数の音を出す奏法)、そして東洋・アフリカの影響を取り入れた瞑想的な曲構成が特徴です。

経歴の概略

  • 誕生と育ち:1940年に生まれ、カリフォルニアの音楽シーンで育ちました。
  • コルトレーンとの出会い:1965年ごろにジョン・コルトレーンのバンドに加わり、コルトレーン晩年の実験的・自由奏法的なサウンドに重要な役割を果たしました。
  • ソロ活動:1960年代後半からインパルス! レーベルなどでソロ作を発表。1969年のアルバム「Karma」に収録された「The Creator Has a Master Plan」は彼の代表曲として広く知られています。
  • その後:1970年代以降も精力的に録音・演奏を続け、晩年まで多くのミュージシャンに影響を与えました。

音楽スタイルと技法

Pharoah Sandersのサウンドは「激しさ」と「瞑想性」が同居している点が大きな魅力です。以下が主な特徴です。

  • 音色の幅:太く温かいロングトーンから、シャウトに近い鋭い叫びまで、音色のレンジが非常に広い。
  • 倍音・マルチフォニクス:意図的に過吹奏することで倍音を生み、複雑で神秘的な響きを作り出します。
  • モーダル&ドローン的要素:コード進行に依存しない長い持続音やリフの重ねにより、宗教的・儀式的な雰囲気を醸成します。
  • 声とパーカッションの融合:レコードやライブでは歌や祈りのようなコーラス、民族楽器やパーカッションが多用され、ジャズの枠を越えたスピリチュアル性が際立ちます。

代表曲・名盤(おすすめの聴きどころ)

  • Karma(1969) — 代表曲「The Creator Has a Master Plan」を含む名盤。長尺でドラマティック、サンダースの思想的・宗教的側面が最も分かりやすく表現されています。
  • Tauhid(1967) — 初期の重要作。モーダル志向と即興性が高いレベルで融合しており、ソロ・プレイの多彩さが聴けます。
  • Jewels of Thought(1969) — 前衛性とメロディアスな要素が混在。スピリチュアル・ジャズとして聴き応えがある一枚です。
  • Thembi(1971) — リズムやパーカッションの実験が豊富で、アンサンブルのダイナミクスを楽しめます。
  • Izipho Zam (My Gifts)(1973) — より自由度の高い即興や民族的要素を深めた作品として知られています。

なぜ人々を惹きつけるのか — 魅力の深堀り

Pharoah Sandersの魅力は単なる技巧や派手な演奏に留まりません。以下の点が聴き手の心を強く揺さぶります。

  • 存在感ある「声」のような楽器表現:サクソフォンを声として用い、悲嘆や歓喜、祈りをそのまま表現できる稀有な演奏家でした。
  • 宗教性・癒しの音楽:彼の音楽は単なる聴覚的刺激を越え、内省や癒し、共同体的な祈りの場を想起させます。現代のストレスフルな生活においても惹かれる要素です。
  • 境界を越える包摂力:ジャズの伝統だけでなくアフリカ、インド、中東のリズム・旋律を取り込むことで、聴衆の文化的背景を問わず共鳴を生みます。
  • 即興の豊かさと誠実さ:技巧を見せつけるための即興ではなく、その瞬間の「真実」を引き出すための即興。聴き手はそこに魂の対話を感じます。

聴きどころと楽しみ方の提案

  • 長尺の曲が多いため、ヘッドフォンで聴くか、静かな環境で一曲をじっくり通しで聴くのがおすすめです。
  • 初めてなら「The Creator Has a Master Plan」から入って、Karma全体を通すとスピリチュアル・ジャズの本質が見えます。
  • 演奏の「強弱」や「空白」を意識して聴くと、サンダースが音をどう配置して感情を作っているかがわかります。
  • 同時代のコルトレーン作品(特に晩年の自由即興期)と聴き比べると、彼の音楽的系譜や独自性がより明確になります。

影響とレガシー

Pharoah Sandersの影響はジャズにとどまらず、現代音楽、実験音楽、ニューエイジ的な瞑想音楽、さらにはヒップホップやポストジャズ的な若手アーティストにも及びます。彼の「音の身体性」とスピリチュアルなアプローチは、世代を超えて受け継がれ、現在のシーンでもしばしば参照されます。

注意点(聴く際に心得ておくこと)

  • 一部の楽曲は前衛的・激しい表現を含むため、ジャズの伝統的な美曲を期待すると戸惑う場合があります。開かれた気持ちで接すると発見が多いです。
  • 曲の長さや即興の密度から集中力が必要なので、余裕のある時間に聴くとより深く味わえます。

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参考文献