ムハル・リチャード・エイブラムス:AACM創設者が切り開く創造と実験のジャズ世界とピアニストとしての軌跡

Muhal Richard Abrams — 創造と実験の鍵盤家

Muhal Richard Abrams(ムハル・リチャード・エイブラムス)は、20世紀後半の米国アヴァンギャルド・ジャズを代表するピアニスト/作曲家の一人であり、1960年代にシカゴで設立されたAACM(Association for the Advancement of Creative Musicians)の共同創設者としても知られます。演奏における即興性と作曲/アレンジメントの体系化を両立させる手腕、ジャズを越えた合奏作品や室内楽的な編成への志向が彼の音楽的特徴です。

聴きどころの視点

  • 作曲家としてのスケール感:ソロから大編成まで自在に設計される楽曲構造に注目する。
  • 即興と構築のバランス:自由即興の瞬間と綿密なスコアが交差する瞬間を聴き分ける。
  • AACM精神の体現:個々の演奏者の個性を尊重しつつ、全体としての新しい音楽語法を築く姿勢を感じる。
  • 時代ごとの表情の変化:60〜70年代の先鋭性、80〜90年代以降の作曲作品の多様化を追う。

おすすめレコード(入門〜深掘り)

以下は「はじめて聴く人」にも勧めたい代表作と、深掘りしていくうえで外せない作品群です。各盤について「聴くべきポイント」を添えました。

Levels and Degrees of Light

ムハルの初期を代表する重要作。アヴァンギャルドな即興精神と作曲的な色彩が混ざり合う作品群で、AACM結成前後の創造的なエネルギーを感じられます。ピアノの独奏/小編成を中心に、そこに室内的なアンサンブルや声の要素が加わるトラックもあり、彼の表現領域の広さを示す“入門盤”として最適です。

聴きどころ:序盤の即興的語法と、曲ごとに変化する編成感。作曲的なフレーズの再現性と、その上で鳴る自由な対話。

Things to Come from Those Now Gone

ムハルの中期を象徴する一枚で、よりアレンジ志向が強く出た作品群が並びます。ソロや小編成に留まらず、複数の演奏者の音色を組み合わせて“合奏論”を提示するような構成が特徴です。AACM仲間との協働を通じて、即興と書かれた音楽の現代的接点を探る好例。

聴きどころ:各トラックでの編成差と、それに伴うテクスチャの変化。個々のソロが全体構造にどう寄与するかを聴き比べると面白いです。

The Hearinga Suite

比較的大規模な作品で、ムハルの作曲家としてのスケール感が出たアルバム。ブラスや木管、声や打楽器を含む多彩な編成を用い、ジャズ的即興を大きな音楽的物語の中に配置する試みがなされています。複数楽章から成る構成やテーマの展開に注目すると、彼の構築的な美学が見えてきます。

聴きどころ:連続するセクションの中で現れるモチーフの変容、ソロとアンサンブルの相互作用。大規模編成ならではの色彩感。

Blu Blu Blu(あるいは後年の小編成/室内楽作)

ムハルの後年には、より抒情的でメロディックな側面、室内楽的な繊細さが前面に出る作品も多く残されています。こうしたレコードは“聴きやすさ”と“作曲の奥行き”が両立しており、彼の全体像を知るうえで重要です。1枚を通して聴けば、初期の実験性から成熟した音楽観への変化が追えます。

聴きどころ:メロディと和声の扱い、静的/動的な瞬間の対比。小編成の緊密な会話を味わってください。

コラボレーション作とコンピレーション

ムハルはAnthony Braxton、Roscoe Mitchell、George LewisらAACMの仲間たちや、多様な世代の演奏家と共演しています。彼の全体像を掴むには、ソロやリーダー作だけでなく、こうした共演作やAACMの歴史をまとめたコンピレーションも重要です。

聴きどころ:個々の演奏者との化学反応。ムハルが“場”をどう作り上げるか、即興の瞬間的意思決定を見る楽しさがあります。

購入・選盤のヒント(内容面)

  • まずは代表作1〜2枚:初期の実験性(Levels…)と大作(The Hearinga Suiteなど)を押さえると全体像が掴みやすい。
  • 編成ごとに聴き比べる:ソロ/小編成/大編成での彼のアプローチの違いを確認する。
  • 共演者を手がかりに掘る:好きな演奏者(BraxtonやMitchell等)が関わる盤を手に入れると新しい発見がある。
  • 再発盤やボックスセットも検討:未発表音源やライナー解説が充実していることが多く、文脈理解が深まる。

聴き方のガイド(作品を味わうために)

  • 一度に「全部」を求めない:ムハルの曲は構成が濃密なので、1曲や1面(LPであればA面)ごとに集中するのがおすすめです。
  • 楽曲の反復と変化に注目する:同じモチーフが置かれる位置や楽器配置で印象が変わることが多いので、繰り返し聴いて細部を追うと面白いです。
  • 文脈を読む:ライナーやAACMの歴史を少し調べると、音の選択や編成の意味がより鮮明になります。

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参考文献