マッコイ・タイナー 名盤ガイド:モードジャズの巨匠を聴く聴き方と代表作

はじめに — McCoy Tynerとは

McCoy Tyner(マッコイ・タイナー)はジャズ・ピアノの巨匠であり、モード・ジャズとハードバップの橋渡しを果たした重要人物です。ジョン・コルトレーンのクラシックなカルテット(1960年代初頭〜中期)での活躍により広く知られ、その後リーダーとしても独自の音世界を追求。力強い左手のオープンな和音(四度積み=quartal voicing)、リズムへの圧力、そして東洋/アフリカ的なスケール感を取り入れた旋律性が彼の最大の特徴です。本稿では、彼の代表作・名盤を紹介し、作品ごとの聴きどころを深掘りします。

おすすめアルバム(リーダー作・代表作)

  • The Real McCoy(Blue Note)

    タイナーのリーダー作の中で最も広く愛される一枚。鋭利で明快な演奏構成と、抒情的なバラードからファンキーな曲までの振幅が秀逸です。

    聴きどころ:Tyner自身の代表曲「Passion Dance」「Search for Peace」「Contemplation」などを収録。左手の厚いボトムと右手の鋭いモード的フレージング、そしてジョー・ヘンダーソン(テナー)やエルヴィン・ジョーンズ(ドラム)らとのインタープレイが光ります。タイナーのピアノ・サウンドの「原点」として必聴です。

  • Sahara(Milestone)

    1970年代初頭の大作で、ワールドミュージック的な要素やオーケストレーション的な配置を導入した、タイナーの代表的な「傑作」の一つ。ダイナミックかつ色彩感のあるアレンジが特徴です。

    聴きどころ:タイトル曲「Sahara」をはじめ、より拡張されたリズム感とスケール感、民族的なモチーフの取り込みが耳を引きます。リーダーとしてのアンサンブル統率力と作曲力が前面に出た作品です。

  • Song for My Lady / Fly with the Wind(Milestone 系列の70年代作品)

    1970年代にタイナーが追求した「厚みのあるサウンド」と「拡張された編成」をよく示すアルバム群。管やパーカッション、時にストリングスを配して、より映画的/叙情的な空間を作り出しています。

    聴きどころ:叙情的なテーマと巨大感のあるサウンドスケープ。タイナーのピアノはソロでもアンサンブルでも“巨大な存在感”を放ちます。静謐な場面と爆発的な場面の対比に注目して聴いてください。

  • Live at Newport / Enlightenment(ライブ作品)

    タイナーの即興力とエネルギーをダイレクトに味わえるライヴ録音。特に1970年代のライブでは、バンドの群像的な高揚とタイナーのピアノ・ドライヴが強烈です。

    聴きどころ:長尺の即興展開(テーマ→モード的ソロ→対位法的アンサンブル→大団円)を通じて、タイナーのストーリーテリング能力が堪能できます。ライブならではのテンションの高まりを体感してください。

  • 与コルトレーン時代の名盤(サイドマンとしての重要作)

    タイナーを理解するうえで外せないのがジョン・コルトレーンのカルテットでの仕事。リーダー作ではないものの、彼のピアノ・スタイルが最も鮮明に聞ける重要録音群です。

    聴きどころ:『My Favorite Things』『A Love Supreme』など、コルトレーンの主要作でタイナーのモード的伴奏、オルタネイト・トーン、ハーモニーの支柱としての役割がよくわかります。特に「A Love Supreme」では彼が作る空間の神聖さと推進力が強く印象に残ります。

  • 近年のコンテンポラリー作(2000年代以降)

    晩年にかけてタイナーは再びトリオ編成やストレート・アヘッドなジャズへ回帰し、円熟した響きを示しました。過去の強烈さを保持しつつ、より洗練された色彩感を見せます。

    聴きどころ:プレイの「余白」と「間」の使い方、成熟したダイナミクスに注目。若いころの勢いとは別種の説得力があります。

各アルバムの聴きどころ(楽曲・演奏面の深掘り)

  • 和声・タッチの特徴

    タイナーは「四度の積み重ね(quartal harmony)」で知られます。これは伝統的な三和音中心の和声から外れ、より開放的で空間感のある響きを生みます。左手で低音域を厚く押さえ、右手でモード的・ペンタトニック的なラインを展開するスタイルは、彼のトレードマークです。

  • リズムと推進力

    エルヴィン・ジョーンズらと共演した時期に培われた、ポリリズム的な推進力が特徴。単純な4/4の内部で複雑なアクセントやクロスリズムを生み、ソロの構築に常に「前進感」を与えます。

  • 作曲性とスケール感

    タイナーは単なる即興家ではなく優れた作曲家でもあります。短いモチーフを発展させ、アフリカや中東的なモードを取り入れたスケールで楽曲を構築するため、曲自体が冒険の地図のように機能します(特に“Sahara”や“Search for Peace”など)。

初めて聴く人へのガイド(順序と聴き方の提案)

  • 1) コルトレーン期の録音(My Favorite Things / A Love Supreme)で「タイナーという音」を確認。伴奏者としての役割とサウンドの基盤を体感する。

  • 2) The Real McCoy を聴いてリーダー作の代表性を理解。ここで彼の代表作曲や左手の圧力感を掴む。

  • 3) Sahara や Song for My Lady のような70年代作へ進み、タイナーの作曲的・編曲的拡張を楽しむ。

  • 4) ライブ盤での長尺即興を体験。イマジネーションの飛躍とエネルギーの爆発を味わう。

推薦トラック(入門〜深掘り用)

  • Passion Dance(The Real McCoy) — タイナー・ピアノのダイナミクスとソロ構築の教科書。
  • Search for Peace(The Real McCoy) — 抒情性と静けさの名曲。
  • Sahara(Sahara) — 世界観を広げる大作曲。
  • A Love Supreme(John Coltrane) — タイナーが作る神聖な伴奏空間。

最後に — タイナーを聴く意味

McCoy Tyner は「ピアニスト個人のテクニック」だけでなく、ジャズの和声・リズム・作曲の可能性を拡張した人物です。彼の作品を追うことで、モード・ジャズの深層、拡張編成での色彩感、そして即興が持つ物語性を学べます。初めて触れる人は代表作から段階的に入ると、その変遷と深みをより楽しめるでしょう。

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