ネリー・メルバのレコード録音を極める:復刻盤の選び方と聴きどころガイド

はじめに — ネリー・メルバをレコードで聴く意味

ネリー・メルバ(Dame Nellie Melba, 1861–1931)は、19世紀末から20世紀初頭に活躍したオーストラリア出身のソプラノで、当時の国際的オペラ界を代表する歌手の一人でした。78回転盤の時代に数多くの録音を残しており、声そのものの美しさ、フレージングの明晰さ、スタイルの古典性を現代に伝えてくれます。ここでは「レコード(およびその復刻盤)」で楽しむメルバのおすすめ作品と選び方、聴きどころを深掘りして紹介します。

聴きどころ:メルバの声と時代背景

  • 声質:鋭く伸びる高音、明瞭なディクション、柔らかな余韻。今日の“ワイドで厚みのある”声とは異なるが、色彩感と機敏さが魅力。

  • 歌い口:イタリア/フランス系レパートリーに磨かれた優雅なレガートと装飾。アジリタ(早い装飾)を過度に見せず、歌詞とメロディを際立たせる表現が特徴。

  • 録音史的側面:1900年代前半は主に“アコースティック録音”で、1925年以降の“電気録音”で音質が改善されます。演奏表現は当時の声楽習慣(ポルタメントや語尾の処理など)を反映しています。

入門向け:まずはこの1枚(/1セット)

初めて聴く方には、代表的アリアや短めの歌を集めた入門編集盤が取っつきやすいです。こうした編集盤は“ダイジェスト的にメルバの魅力を掴む”のに最適で、音源の年代(アコースティック/電気)や録音条件が解説されているものを選ぶと理解が深まります。

コレクター向けおすすめリイシュー(カテゴリ別)

  • 総合的・決定版を狙う:
    78回転盤からの“全録音”または大部分を収めたボックスセット。復刻/音質補正で定評のある復刻家・レーベル(例:Marston Records、あるいは歴史的音源をまとめるNaxos Historicalなど)が手掛けたものは資料性が高く、録音年順の並び・解説・別テイクなどが充実しています。全集的な購入はメルバの発展や声の変化を追うのに最適です。

  • 音質重視で選ぶ:
    電気録音期(1920年代後半)を中心に良好なトランスファーを行ったリイシュー。Ward Marston(ワード・マーストン)ら歴史録音のマスタリングで知られるエンジニア/レーベルの復刻は雑音低減と周波数バランスの調整に優れ、当時の声の細やかさを比較的自然に再現します。

  • 手頃に楽しむ・入門廉価盤:
    Naxos Historical やその他の廉価シリーズでは、代表曲を厳選した編集盤が出ています。音質はボックスセットに劣る場合もありますが、価格対効果が高く初心者向けです。

  • 原盤コレクター:
    78回転のオリジナル盤そのものを探す(HMV/Victorなど)。保存状態やラベルのバリエーション、初期プレスか否かで価値が分かれます。既出の復刻と併用すると、史料的な面白さが増します。

代表曲・名盤(聴いておきたいレパートリーとその理由)

タイトルを限定して挙げるよりも、メルバらしさが際立つレパートリーの系統でおすすめします。いずれも彼女の代表的レパートリーで、復刻盤でも比較的よく収録されています。

  • ドニゼッティ/ベルカント系(例:ルチア・ディ・ラメルモール)
    ルチアの“マドシーン”にみられる高音の整い、装飾の明晰さはメルバの特長を如実に示します。ベルカントの美しさを知るうえで必聴です。

  • ヴェルディ/ヴァイオレット的レパートリー(ラ・トラヴィアータの一部)
    レパートリーの中で表情豊かな場面を比較的短い曲で味わえるので、彼女のドラマティックな側面を理解するのに向きます。

  • グノーやマスネなどフランス作品のアリア
    フランス語独特のフレージングや抑制された感情表現が光ります。19世紀末から20世紀初頭のフランス風味を感じられます。

  • イギリス民謡や愛唱曲
    オペラのみならず、小品や歌曲録音にも彼女の表現の幅があります。これらは声の色や語りの在り方を知るうえで示唆に富みます。

具体的な音源選びのチェックポイント

  • 復刻者・音質担当のクレジットを確認する:Ward Marston や専門の歴史音源チームの名があると信頼度が高いです。

  • 全集かハイライト盤かを決める:全集は資料性重視、ハイライト盤は入門向き。コストや保管場所と相談して選びます。

  • 解説とドキュメントの充実度:録音時期、使用された原盤、歌唱当時の批評や写真などが付いていると楽しさが増します。

  • 音源の年代感を踏まえる:アコースティック録音は音の厚みや帯域が限られます。演奏の解釈を“当時の慣例”として受け止める視点が重要です。

聴き方のコツ — 録音の制約を踏まえた楽しみ方

  • 小さなニュアンスや息遣いを期待するより、フレーズの形、ディクション、音色の変化に注目すると当時の表現が見えてきます。

  • 同じアリアをメルバの初期録音と晩年録音で聴き比べると、声の変化と歌い回しの成熟がよく分かります(全集盤があれば容易)。

  • 現代のパフォーマンスと比較して“何が異なるか”を観察すると、声楽史的な楽しみが深まります(テンポ感、装飾、語尾処理等)。

具体的購入先・探し方(国内外のリイシュー)

  • 専門店やネットショップで「Nellie Melba Complete recordings」「Nellie Melba historical recordings」などのキーワードで探すと、全集や復刻盤が出てきます。

  • 中古レコード店やオークションでオリジナル78回転盤を探すのも一つ。レーベル(HMV, Victor など)と盤の状態を必ず確認してください。

  • デジタル配信では、歴史音源を扱う配信サービスに全集や編集盤が入っている場合があります。音質サンプルで音の雰囲気を確認しましょう。

まとめ:どのレコードから入るべきか

まずは入門編集盤でメルバの声と表現スタイルに親しみ、その後で全集的なボックスセット(復刻に定評のあるレーベル)へ進むのが王道です。音質の良い復刻は学術的価値も演奏鑑賞の価値も高めます。メルバの録音は「声の生々しさ」よりも「表現の様式感・歴史的価値」を楽しむレパートリーと心得て聴くと、より豊かな体験になります。

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参考文献