リチャード・タウバーを深く聴く完全ガイド:オペレッタ・リート・オペラの代表盤と録音選びのコツ

序文:リチャード・タウバーとは

リチャード・タウバー(Richard Tauber、1891–1948)は、20世紀前半に活躍したオーストリア出身のテノール。特にフランツ・レハールの作品をはじめとする軽やかなオペレッタ、ドイツ・オペラ歌唱、そしてドイツ歌曲(リート)で知られ、その美しい歌声と卓越した歌心、明瞭なドイツ語の発音、流れるようなレガート表現で多くの聴衆を魅了しました。レコード時代のスターの一人として大量のスタジオ録音・放送録音を残し、今日でも数多くのリイシューが流通しています。

選び方の視点(短く)

  • まずは入門用の代表曲集(コンピレーション)で声質と歌い回しを掴む。
  • オペレッタや舞台曲を楽しみたいならレハール作品を中心に、リート中心ならリート集(Schubert/Schumann 等)を探す。
  • 音質・音源の整備を重視するなら、近年のリマスターやヒストリカル・シリーズ(Naxos Historical、EMI、Testament、Preiser など)を選ぶと安心。
  • 詳細な録音年や解説が欲しい場合は、ボックス・セットや「Complete recordings」タイプのリイシューがおすすめ。

おすすめレコード(カテゴリー別)

1. オペレッタ/舞台曲の代表録音

  • Das Land des Lächelns(『微笑みの国』)関連録音・ハイライト集

    タウバーの代表曲「Dein ist mein ganzes Herz(君は我が心すべて)」を中心に収めた盤。レハールの甘美な旋律とタウバーの暖かく豊かなレガートが最もよく響くレパートリーです。舞台上の表現力とロマンティックな歌い口を味わうには最適。

    おすすめポイント:タウバーの“顔”とも言える一曲を含むため、入門者向け。複数のリイシューがあるので、解説と音質を確認して購入すると良い。

  • Lehár(レハール)・アリア集

    レハール作品を集めたアリア/歌のコンピレーション。タウバーは当時のオペレッタ王道スタイルを代表する歌手で、艶のある高音とフレーズの作り方が魅力的に伝わります。

    おすすめポイント:レハール好き、オペレッタ入門に最適。コンサート・アリア的な聴き方にも向く。

2. リート(歌曲)/アーティスト性を味わうレコード

  • Schubert/Schumann などドイツ歌曲集(リイシュー・コンピレーション)

    タウバーのリート歌唱は繊細で内面表現に富みます。短い歌曲や詩に深い表現を込める技術が光るため、歌曲中心で彼の音楽性を知りたい方にはこのタイプの盤を強く推奨します。

    おすすめポイント:小品の表情変化を楽しめる。詩の語り口・ドイツ語の明瞭さを堪能できる。

3. オペラ/アリア集

  • オペラ・アリアのコンピレーション(主要アリア集)

    純粋なオペラのアリアを集めたもの。タウバーは軽やかなレパートリーを得意としたため、ヘビーなワーグナー系よりはモーツァルト、ドイツ・リリカルな作品のアリアが向いています。独特の語り口と発音、音色の美しさがよく出ます。

    おすすめポイント:ソロ・アリアでタウバーの声の色合いと技術が分かりやすい。

4. ボックス・セット/網羅的リイシュー(入手性があれば強く推奨)

  • 「The Art of Richard Tauber」系の大箱セット(EMI、Naxos、Testament などのリイシュー)

    多数のスタジオ録音・放送録音をまとめたボックスは、時代的背景や録音年代順に聴けるため研究や深い愛聴向き。音質が良いリマスターを選べば、当時の名唱を現代の再生環境で堪能できます。

    おすすめポイント:網羅的に彼の活動を追いたい人、録音の編年比較や声質の変化を聴きたい人向け。

各レコード(タイトル例)と聴きどころ(具体的指針)

ここでは実売されている典型的な盤種を想定して、探し方と聴きどころを示します。

  • 代表曲集(コンピレーション) — 聴きどころ

    初めてなら「代表曲」を集めたサンプラーでタウバーの声の輪郭(明るさ・甘さ・滑らかさ)を把握するのが効率的。必ず「Dein ist mein ganzes Herz」をチェック。曲ごとのダイナミクス処理、語尾の処理、母音の美しさに注目するとタウバーの長所が分かります。

  • リート集 — 聴きどころ

    短い歌曲でのフレージングや語りの力を見る。詩句ごとの呼吸や、声色の微妙な変化を丁寧に聴いてください。リートは伴奏(ピアノ)と歌の対話が鍵なので、ピアノとのバランス感も楽しめます。

  • ボックス・セット — 聴きどころ

    録音年代順に聴くことで、声の成熟や解釈の変化、録音技術の差が分かる。解説書(ライナーノーツ)に演出・舞台背景や放送回情報が載っていることが多く、聴くための補助情報として有益です。

盤の選び方・購入の具体的アドバイス(音質視点)

  • 「リマスター済み」「ヒストリカル・シリーズ」と明記されたものを優先。ノイズ除去や周波数補正が良いものは聴き疲れしにくい。
  • コンピ盤は複数の時期・セッションを混在させる場合があるため、音質のつながりが気になる人は同一録音群をまとめたセットを。
  • 解説(ライナーノーツ)に録音年・参加者・使用原盤情報が記載されているものを選ぶと、背景理解が深まる。
  • 中古レコードを探す場合は、盤状態(音飛びの有無)とジャケット/内袋の有無をチェック。CDやデジタルではリマスターのバージョン違いを比較すると良い。

タウバーを深く聴くためのリスニング・ガイド(順序例)

  • まず代表曲集で声の「色」を掴む(20–40分)。
  • 次にレハール系アリアや『Das Land des Lächelns』の抜粋で舞台性を味わう(1時間)。
  • リート集で詩表現とフレージングの妙を聴く(30–60分)。
  • 最後にボックス・セットで録音年を追い、歌い手としての変遷を追体験する(断続的に)。

聴きどころの具体的フレーズ(耳の向け方)

  • 高音域の「張り」よりも、声の繋がり(レガート)に注目する。
  • 母音の明瞭さ、特にドイツ語母音の処理はタウバーの特徴。歌詞の理解があると一層深まる。
  • 小節の最後や文節の切れ目での「語尾処理」や「間の取り方」によって、彼の語りの巧みさがわかる。

まとめ

リチャード・タウバーは、声そのものの美しさだけでなく、歌の語り方やフレージングで時代を超えて魅力を伝える歌手です。まずは代表的なコンピレーションで声を掴み、好みに応じてレハール中心の舞台作品や細やかなリート集、そして網羅的なボックス・セットへと広げていくのがおすすめです。近年は良質なリマスターが出回っているため、音質面でも安心して楽しめます。

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参考文献