モリッシーのアルバム完全ガイド:スミス期から最新作まで、おすすめ盤と聴きどころを時代別に徹底解説
はじめに — Morrisseyという存在
モリッシー(Morrissey)は、ザ・スミスのボーカリストとして1980年代の英国インディーを代表した後、ソロ活動でも独自の世界観を築き上げてきました。孤独、郷愁、ユーモアと皮肉を織り交ぜた歌詞、英国的な美意識、そして時に挑発的な発言で常に注目を集めてきたアーティストです。本稿では、モリッシーのキャリアを通して「おすすめのレコード」をピックアップし、それぞれのアルバムが持つ魅力、聴きどころ、時代背景や作家・演奏面での特徴を掘り下げて紹介します。
解説の前提
ここで扱う「レコード」は、作品としてのアルバム(あるいは重要なコンピレーション)に焦点を当てています。再生・保管・メンテナンスに関する物理的な解説は行いません。
代表曲の紹介は、その作品を理解するための手がかりとして挙げています。
ザ・スミス期のマスト盤(モリッシーの出発点として)
The Queen Is Dead(1986)
ザ・スミスの代表作の一つで、ジョニー・マーのギター・ワークとモリッシーの観察眼に富んだ歌詞が相まって、英国ポップの名盤となった作品です。皮肉とメランコリーが同居する楽曲群は、後のモリッシーのソロ作にも大きな影響を与えています。
- 代表曲:There Is a Light That Never Goes Out、The Queen Is Dead
- 聴きどころ:メロディの美しさと歌詞のユーモア/悲哀のバランス。
Hatful of Hollow(1984)
ラジオ・セッションやシングル曲を集めた編集盤ですが、「How Soon Is Now?」などザ・スミスの重要曲を収録しており、初期の鋭さを感じることができます。モリッシーの存在感が強く刻まれた一枚です。
- 代表曲:How Soon Is Now?
Meat Is Murder(1985)
政治的・倫理的な主題を前面に出した異色作。モリッシーのテーマ志向(動物愛護や社会批評など)が早くから表出していたことが確認できます。
- 代表曲:Meat Is Murder
ソロ初期〜転換期の名盤
Viva Hate(1988)
モリッシーのソロデビュー作。スミス解散後の不安定さや孤独感を内省的に歌い上げつつ、ポップなメロディもしっかり備えています。シングル「Suedehead」「Everyday Is Like Sunday」は、ソロ・モリッシーのアイコン的な曲となりました。
- 代表曲:Suedehead、Everyday Is Like Sunday
- 聴きどころ:スミス時代からの繊細な感情表現がソロではより直接的に表出されている点。プロデューサーやアレンジで新たな音像も模索されています。
Bona Drag(1990)
ソロ初期のシングルやレア曲をまとめたコンピレーション。シングルヒットとB面・非アルバム曲をまとめて楽しめるため、当時のモリッシーの多彩さが俯瞰できます。
- 代表曲収録例:The Last of the Famous International Playboys、Interesting Drug
- 聴きどころ:シングル中心の流れで、楽曲ごとの表情が分かりやすくまとまっている点。
90年代〜00年代初頭:サウンドの拡張と成熟
Your Arsenal(1992)
ハードめのロックやグラム、ロカビリー的な要素を取り入れたアルバムで、モリッシーのサウンドがより力強くなる一枚。ステージ上の存在感やロックの衝動を強調した作品です。
- 聴きどころ:モリッシーのボーカル表現がよりダイナミックに、ギター/リズム隊が前面に出たアレンジが特徴。
Vauxhall and I(1994)
モリッシーの内省的な面が最も結実したと評されることの多いアルバム。成熟した歌詞世界と抒情的なメロディが印象的で、静と動のバランスが良い作品です。
- 代表曲:The More You Ignore Me, the Closer I Get、Now My Heart Is Full
- 聴きどころ:成熟した語り口と完成度の高い楽曲群。人生や人間関係を見つめる深みがある。
復活と大衆的成功(2000年代)
You Are the Quarry(2004)
長い沈黙の末に放たれた復活作で、商業的にも批評的にも成功を収めました。ポップかつ鋭い歌詞が融合し、新たなファン層を獲得した代表作です。
- 代表曲:Irish Blood, English Heart、First of the Gang to Die
- 聴きどころ:キャッチーなメロディと社会/個人への眼差しが両立した楽曲群。復活作としてのエネルギーがある。
Ringleader of the Tormentors(2006)
プロデューサーやバンド編成の違いにより、より多彩な音色とドラマ性が加味されたアルバム。ポップ・センスと文学的な歌詞が共存します。
- 代表曲例:You Have Killed Me
- 聴きどころ:メロディの豊かさと、オーケストレーションやギターアレンジの工夫。
近年の作(2009年以降)
Years of Refusal(2009)
エッジの効いたロック感と従来の歌唱表現が融合した一枚。活動的かつ挑発的な側面が見え隠れします。
I Am Not a Dog on a Chain(2020)
近年の作品で、批評的評価は割れるものの、モリッシーの語り口や主題の一貫性は確認できます。長年のコラボレーターとのやり取りや、新たな挑戦が散見される作品です。
- 代表曲例:アルバムタイトル曲など(近作はファン向けの議論と好みが分かれる点に留意)
アルバムごとの楽しみ方・聴きどころの比較
初期(ザ・スミス〜Viva Hate):若さと孤独、鋭い観察眼。ギター・ポップのメロディ重視。
転換期(Your Arsenal〜Vauxhall and I):ロック的な硬さと、内省的な詩性の両立。アレンジの幅が広がる。
復活以降(You Are the Quarry以降):ポップ性の強化と、より明確なシングル志向。大衆性と個人的なテーマの融合。
選び方のヒント(どのアルバムから聴き始めるか)
モリッシーの歌詞やキャラクターに初めて触れるなら:Viva Hate(ソロ入門)またはThe Queen Is Dead(スミス入門)がおすすめ。
ロック的でエネルギッシュな面を楽しみたいなら:Your Arsenal。
叙情的で深い歌詞を味わいたいなら:Vauxhall and I。
シングルヒットを手っ取り早く押さえたいなら:Bona Drag(コンピレーション)を。
作品を深掘りするポイント
歌詞の視点:モリッシーはしばしば個人的な感情を普遍化して歌うため、歌詞の細部にある比喩や歴史的言及を読み解くと新たな発見があります。
アレンジの変遷:スミス期のギターポップ、ソロ初期の内省的ポップ、90年代以降のロック寄りアプローチなど、編成やプロデューサーの影響を追うと作品ごとの位置づけが見えてきます。
時代背景:各アルバムは制作時の社会的・個人的事情と強く結びついているため、リリース年や当時のモリッシーの動向を合わせて読むと理解が深まります。
注意点:評価と論争
モリッシーは音楽的評価とは別に、発言や政治的立場により論争を起こすことがあり、リスナーの受け止め方は分かれます。音楽そのものへの評価とアーティスト個人への評価は切り離して考える必要がある場合もあります。
まとめ
モリッシーのディスコグラフィは、ザ・スミス期の名作群からソロ初期の決定盤、そして復活以降のヒット作まで幅広く、いずれも異なるフェーズの魅力があります。まずはViva HateやThe Queen Is Deadのような“入門盤”で世界観を掴み、その後Vauxhall and IやYou Are the Quarryといった成熟期の作品を聴いて深掘りすると、モリッシーというアーティストの多面性をより豊かに味わえます。
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参考文献
- Morrissey - Wikipedia(日本語)
- The Queen Is Dead - Wikipedia(英語)
- Viva Hate - Wikipedia(英語)
- Vauxhall and I - Wikipedia(英語)
- Bona Drag - Wikipedia(英語)
- Morrissey - AllMusic(英語)
- Morrissey - Rolling Stone(英語)


