ジョー・パスの名盤ガイド:ソロからデュオ・トリオまで聴きどころとレコード選びの極意
Joe Passの魅力と本コラムの趣旨
ジョー・パス(Joe Pass)はジャズ・ギターの巨匠として広く尊敬される存在です。単音のラインと和音(コード)を同時に操る高いテクニック、即興性に富んだ伴奏感覚、審美眼のある選曲とフレージング──これらが一体となり、ソロ演奏でもセッションでも強い存在感を放ちます。本稿では「レコード(アナログ盤)で聴くことを前提」に、入門からコアなファンまで楽しめるおすすめの名盤をピックアップし、それぞれの聴きどころや聞き分けポイントを深掘りします(再生・保管・メンテナンスの技術的な解説は含みません)。
選定基準
- 演奏の代表性:ジョー・パスの奏法・表現がよく分かる作品
- 録音/編成のバリエーション:ソロ、デュオ、トリオなど多様な編成を網羅
- 歴史的価値や入手のしやすさ:名盤として長く評価されている作品
1. 「For Django」――伝統と敬愛が結実したギター・アルバム
概要:ジョー・パスがジャズの歴史的ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)への敬意を表したアルバム。伝統的なメロディへの尊重と、そこから発展するパス独自のコードワークやベースライン処理がよく分かります。
聴きどころ:
- メロディの歌わせ方:ジャンゴ系の楽曲やスタンダードを、ギター一本で歌わせる表現力。
- 和声処理:シングルラインとベースの同時進行、和音の密度を使った表現。
- 雰囲気作り:哀愁や郷愁を出すフレージングが多く、聴き手の感情を引き出す。
こんな人におすすめ:ギターソロの美しさを純粋に楽しみたい人、ジャズ史に興味がある人。
2. 「Virtuoso」シリーズ(代表作群)――ソロ・ギターの教科書
概要:ジョー・パスの代名詞的シリーズ。ギター1本でスタンダードやモダン・ジャズのナンバーを自在に紡ぐ“ソロ・ギターの教科書”的な位置づけです。編曲力・即興技術・タイム感のいずれも圧倒的。
聴きどころ:
- 同時進行の巧みさ:メロディ、コード、ベースラインを一人で完結させる技術。
- 即興の構造:短いフレーズでテーマを提示し、発展させる「語り口」のような即興。
- レパートリーの広さ:スタンダードの名曲群を独自の視点で再構築している点。
おすすめの聴き方:最初は通して聴き、次に気に入った曲を繰り返し聴いてフレーズの再現や構造を追うと、その技巧と美意識がよりクリアになります。
こんな人におすすめ:ギター演奏者(習得・研究目的)、ソロ・インストの醍醐味を味わいたいリスナー。
3. Ella Fitzgeraldとのデュオ作品(例:「Take Love Easy」など)――歌とギターの親密な対話
概要:エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)とのデュオ録音は、歌とギターが直接向き合う稀有な例です。パスは「伴奏」を超えて歌者の音楽的パートナーとして機能し、歌の余韻やフレーズに呼応する細やかなアプローチを見せます。
聴きどころ:
- 相互作用:歌のフレージングに対するレスポンス、間の取り方。
- シンプルさの奥深さ:過剰な装飾をしないことで歌がより際立つ伴奏術。
- ダイナミクスと色彩感:ギターのタッチで歌の表情を増幅する技法。
こんな人におすすめ:ジャズ・ヴォーカルが好きな方、伴奏としてのギター表現を学びたいギタリスト。
4. トリオ/カルテットなどのリーダー作――バンドでのバランス感覚
概要:トリオやカルテットでのリーダー作では、パスの伴奏力やインタープレイを見ることができます。ベースやドラムとの掛け合い、ピアノや管楽器とのアンサンブルでの色彩感が加わり、ソロでは味わえない“群像劇”的な演奏が楽しめます。
聴きどころ:
- コンピングとソロの切り替え:バンドの中でのソロと伴奏の役割分担。
- アンサンブルの空間処理:リズム隊との呼吸感。
- 選曲の幅:オリジナル曲からジャズ・スタンダードまで、バンド編成での再解釈。
こんな人におすすめ:アンサンブルのダイナミクスを楽しみたいリスナー、セッション好きなミュージシャン。
レコードを選ぶときの視点(音楽的・コレクション的)
- どの編成を聴きたいかで選ぶ:ソロで技巧を楽しみたいのか、歌伴やバンドとの会話を楽しみたいのかを明確にする。
- 編集盤・コンピレーションの注意点:代表曲がまとまっている反面、アルバムとしての流れや演奏の背景が欠けることがある。初めてならオリジナルアルバムを1枚通して聴くのがおすすめ。
- 録音の時代背景:1970年代のPablo期の録音はリラックスしたセッション感と良好な音質で知られる一方、1960年代の作品は別の魅力(アンサンブル感や当時のジャズ・シーンとの関係)がある。
聴きどころを深堀りするための聴取ポイント
- フレーズの「間」を意識する:ジョー・パスは余白を効果的に使います。音と音の間の選び方が表現の一部です。
- ベースラインの扱いを追う:ソロや小編成でもベースの役割をギターで補うことがあり、その処理を見ると編曲力が分かります。
- リズムの安定感と揺らぎ:拍の芯を外さない一方で、微妙なテンポの揺らぎで緊張感やスイングを作ります。
入門おすすめの聴き方の順番(初心者向け)
- まずは「Virtuoso」シリーズの一枚を通して聴く(ソロ演奏の魅力を直感的に掴む)。
- 次に「For Django」などテーマ性のある作品で表現の深さを味わう。
- 最後にエラなどヴォーカルとのデュオや、トリオ作でアンサンブルの妙を確認する。
まとめ
ジョー・パスは「ギター1本でも音楽全体を語れる」稀有なミュージシャンです。ソロ作品で技術と美意識を堪能し、デュオやトリオでは伴奏者としての成熟を味わってください。本稿で紹介した方向性に沿って数枚選べば、パスの多面的な魅力が見えてくるはずです。
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参考文献
- Joe Pass — Wikipedia(日本語)
- Joe Pass — AllMusic
- Joe Pass — Discogs(ディスコグラフィ)
- Pablo Records — Wikipedia(英語、パブロ期の録音背景参照)


