カウント・ベイシー徹底ガイド:プロフィール・生涯・名盤と聴き方
Count Basie — プロフィール
ウィリアム・ジェームズ・"カウント"・ベイシー(William James "Count" Basie, 1904–1984)は、アメリカを代表するジャズ・ピアニスト/バンドリーダー。カンサスシティを起点に発展したビッグバンド・スウィングを体現し、長年にわたり「軽やかなグルーヴ」と「最小限の音で最大の効果を出す」独自のピアノ・スタイルで多くのミュージシャンに影響を与えました。彼のバンドは1930年代以降、数多くの名演・名録音を残し、ジャズの大衆化とビッグバンド音楽の洗練化に大きく寄与しました。
生涯の要点(簡潔)
- 1904年生まれ。若年期にカンサスシティで演奏活動を開始。
- 1930年代前半に自身のオーケストラを結成し、カンサスシティ・スタイルの「リフ」を中心としたスウィングを確立。
- 名手たち(レスター・ヤング、バックス・クレイトン、ジョー・ウィリアムズら)と共に多数のヒットと名盤を制作。
- 1950〜60年代には編曲や新しいアレンジャー(ニール・ヘフティ、アーニー・ウィルキンス等)を迎え、モダンで洗練されたサウンドへ発展。
- 1984年没。現在も「カウント・ベイシー・オーケストラ」は遺産を受け継ぎ活動を継続。
音楽的な魅力(何が特別か)
ベイシーの魅力は一言で言うと「間」と「揺らぎ(スイング)」にあります。派手な技巧に頼らず、リズム・セクションとブラスの掛け合い、リフを基調とした構築により高揚感を作り出します。
- ミニマリズムの美学:ピアノは装飾的に弾き尽くすのではなく、要所でワンフレーズを置くことでリズムを強調。余白を活かす表現。
- 究極のスイング感:リズム・セクション(後述の"オール・アメリカン・リズム・セクション")が生む推進力は、聴く者を自然に体を動かさせる力を持つ。
- リフとコール&レスポンス:カンサスシティ由来の繰り返しフレーズ(リフ)を軸にした構造で、即興とアンサンブルのバランスが絶妙。
- アレンジの多様性:シンプルなスモールグループの感覚を大編成で実現する「軽み」を維持しながら、1950年代以降は洗練されたモダン・アレンジを取り入れた。
代表曲・名盤(初心者向けの聴きどころ付き)
- "One O'Clock Jump"(1940年代以降のライブでも頻繁に演奏)— ベイシーの代表曲。リフ主体の楽曲で、バンドのまとめ役としてのベイシーの哲学が見える。ソロやソリストの紹介も聴きどころ。
- April in Paris (アルバム、1956) — タイトル曲「April in Paris」は、ビッグバンドのダイナミクスを活かした名演。特に最後の"one more time"的な演出("Oh yeah"を入れるなど)のライブ感が有名。
- The Atomic Mr. Basie (別名: Basie and E=mc2, 1957) — ニール・ヘフティらのアレンジで、編曲の妙が光る一枚。1950年代のベイシーの勢いと洗練が結実した名盤。
- Count Basie Swings, Joe Williams Sings (含む "Every Day I Have the Blues") — ボーカルとのコラボレーションで、ブルースとスウィングの絶妙な接点を示した作品群。
- Original Decca/Kansas City Recordings(1930sコンピレーション) — カンサスシティ時代のリフ・ベースのスウィングを知るうえで重要。初期のベイシー・サウンドの原点が詰まっている。
ベイシー・バンドの核 — リズム・セクションと主要メンバー
ベイシー・サウンドの要は、いわゆる「オール・アメリカン・リズム・セクション」。要所を挙げると:
- フレディ・グリーン(ギター)— チャンクではなく、リズムを刻み続ける「踏み台」としてのギター。音量やアプローチは控えめだが存在感は絶大。
- ウォルター・ページ(ベース)— 4ビートの強い支え。カンサスシティのリズム感を作る主役。
- ジョー・ジョーンズ(ドラム)— シンバル・ワークでスウィングを生む。ベイシーの軽やかさに適合したドラミング。
- カウント・ベイシー(ピアノ)— 最小限の和音・リフで「間」を作り、ソロは短く的確で、バンド全体を牽引。
アレンジとソロのバランス
ベイシー楽団の魅力は「アレンジ」と「個々のソロ」が両立している点にあります。典型的にはリフやホーンズのユニゾンで曲が推進し、適所でソロが入る。アレンジャー(ニール・ヘフティ、アーニー・ウィルキンス、フランク・フォスター、ジミー・マンディなど)が楽団の持ち味を活かす工夫を凝らしました。
- ショウト・コーラス(Shout Chorus):楽曲のクライマックスでホーンズが一気に畳み掛ける場面。大編成の快感。
- 控えめなソロ美学:ベイシー自身のピアノ・ソロは装飾を抑え、瞬間的なフレーズで聴き手の耳を掴む。
聴くときのポイント(ガイド)
- リズム・セクションに注目する:フレディ・グリーンのギターの「押し」、ジョー・ジョーンズのシンバル、ウォルター・ページのベースの歩みを聴き分けてみると、ベイシー・スウィングの構造が分かる。
- 「間」を感じる:音と音の余白、ための取り方が演奏のグルーヴを生む。無音の部分も音楽の一部として耳を傾ける。
- アレンジの変化を追う:同じ曲でも編成や年代によってアレンジが変化する。例えば「One O'Clock Jump」や「April in Paris」は録音ごとの違いを比べて楽しめる。
- ソロの短さを楽しむ:長尺のソロは少ないが、瞬間瞬間の選び抜かれたフレーズが味わい深い。
影響と遺産
ベイシーの影響はビッグバンドの枠を超え、モダンジャズや後世のスウィング再評価運動にも及びます。多くのミュージシャンが「ベイシー流の間と軽やかさ」を模倣・学習し、カウント・ベイシー・オーケストラは彼の死後も活動を続け、遺産を現代のリスナーに伝えています。
おすすめの聴き方(入門プレイリスト案)
- One O'Clock Jump(複数年代の録音を比較)
- Jumpin' at the Woodside
- April in Paris(特に1956年盤)
- Lil' Darlin'(ニール・ヘフティの代表的アレンジ)
- Every Day I Have the Blues(Joe Williamsとの共演)
- The Atomic Mr. Basie(アルバム通して、編曲の魅力を堪能)
終わりに
カウント・ベイシーは「派手さ」ではなく「確かな味わい」を音楽にもたらした巨匠です。ビッグバンドという大きな枠の中で、いかに“軽さ”と“グルーヴ”を保つかを体現し、多くのリスナーとミュージシャンにとっての規範になりました。初めて聴くときは、楽器一つひとつ、アレンジの隙間、そしてベイシーの“省略された”ピアノのフレーズに耳を澄ませてみてください。
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参考文献
- ウィキペディア「カウント・ベイシー」
- Encyclopaedia Britannica — Count Basie
- AllMusic — Count Basie
- The Count Basie Orchestra 公式サイト
- JazzDiscography — Count Basie Discography


