リー・コニッツ徹底ガイド:クールジャズの象徴・アルトサックスの線的即興と名盤の聴き方
はじめに — リー・コニッツという存在
リー・コニッツ(Lee Konitz, 1927–2020)は、アメリカのアルト・サックス奏者で、クール・ジャズ/リンニートリスターノ派を代表する重要人物です。軽やかで少し乾いたトーン、メロディに対する独自の解釈、即興の線的展開(linear improvisation)を特徴とし、ジャズ・アンサンブルの中で「和声にとらわれない自由な声」を常に追求しました。
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ここではリー・コニッツのキャリアを象徴する主要盤を、楽曲の特徴や聴きどころとともに紹介します。時代ごとの変化や共演者との化学反応を意識して選んでいます。
1. Birth of the Cool — Miles Davis Nonet(参加作)
概要:マイルス・デイヴィスの「Birth of the Cool」セッション(1949–50)にリー・コニッツはアルト奏者の一人として参加。ビッグ・バンド的な編成でありながら、クールで緻密なアレンジが特徴です。
聴きどころ:アンサンブルの緻密さ(ホーンの重なりや対位法的な書法)、コニッツの抑制された表現。彼が「声」としてどうアンサンブルに溶け込み、また主役を取るかを聴き比べてください。
代表曲:“Jeru”, “Darn That Dream”, “Boplicity”
2. Subconscious-Lee(初期リーダー作)
概要:コニッツ初期のリーダー・セッションをまとめた代表作。トリスターノ派に近い感性が強く出た演奏群で、モダン・ジャズの台頭期を象徴する一枚です。
聴きどころ:シリアスで冷静なフレージング、メロディの再構築。若き日の実験的な即興観が聴き取れます。コニッツのメロディ形成の原点を知るには最適。
代表曲:タイトル曲“Subconscious-Lee”ほか、短いテーマを高度に発展させる即興に注目。
3. Motion(1961)
概要:トリオ編成(アルト+ベース+ドラム)で録音された名盤。リズム・セクションが最小限である分、コニッツの線的な即興と時間の扱いがよりはっきりと現れます。
聴きどころ:空間の使い方、間(ブレイク)と音の選び方。エルヴィン・ジョーンズのドラミング(本作に参加していることが多く語られます)が与える揺らぎと対話する様子が面白い。
代表曲:柔軟なテンポ変化やモーダル寄りの即興を味わえるトラックを中心に。
4. Lee Konitz meets Warne Marsh(共演盤)
概要:同世代でありトリスターノ門下の盟友ワーン・マーシュとの共演は、コニッツ理解に欠かせません。互いに「線」を重視する奏法がぶつかり合い、また溶け合います。
聴きどころ:対位法的インタープレイ(2本のサックスの掛け合い)、テーマの解体と再構築。アンサンブル内での個性の出し方の参考になります。
代表曲:スタンダードの即興解釈や互いのオリジナル曲での対話。
5. Lone-Lee(ソロ・アルバム)
概要:リー・コニッツのソロ(またはほぼソロに近い)演奏を集めた一作。伴奏がない状況下で、音楽の構築力と即興哲学が露わになります。
聴きどころ:メロディの語り直し、フレージングの繊細さ、音の選択が全てを語ります。伴奏に頼らない「語り」としてのサックス演奏を堪能してください。
代表曲:ソロ演奏ならではの自由なテンポと空間処理に注目。
6. 後年の名盤(例:共演・ライヴ盤)
概要:1970〜2000年代にかけてコニッツは多くの共演作やライヴ録音を残しています。スタンダードに新しい息吹を吹き込む再訪盤や、意外なミュージシャンとの化学反応を示すものも多数あります。
聴きどころ:成熟期の自由度、古いテーマの再解釈、年齢を重ねても変わらない探究心。ライヴでは即興の瞬発力が光ります。
代表的な探し方:共演者(ピアノやギター奏者)やライヴの会場・年代で選ぶと、コニッツの多面性が見えやすいです。
聴きどころの詳細(フレーズ/リズム/表現)
リー・コニッツの演奏を深く楽しむための聴取ポイントを挙げます。
- フレージングの「間」と「余白」:同じ音数でも向き合い方が違い、余白の美学がある。
- モチーフの反復と変奏:短いモチーフを異なる角度で繰り返すことで成り立つ構造を追う。
- メロディ優先の即興:コード進行の追従だけでなく、歌うように主題を再解釈する姿勢。
- アンサンブルでの“声”の使い分け:ソロのときは語り、セクションに入るとバランスを優先する—その切り替えを見る。
どの盤から聴き始めるか(初心者向けガイド)
- 初めてなら:Birth of the Cool(コニッツを含む歴史的重要作)を通して彼の位置づけを理解。
- 次に:Subconscious-Leeで彼の個人的なフレージングを確認。
- さらに深めるなら:Motion(トリオでの即興)→ Warne Marshとの共演(対位法的対話)→ Lone-Lee(ソロでの表現)という順がおすすめ。
コレクションの選び方のヒント(内容重視)
- オリジナルLP/初期録音は歴史的価値が高いが、演奏そのものはリマスターや良質なCD/配信でも十分味わえます。
- ライナーノーツや録音年代・共演者情報をチェックすると、演奏の背景理解が深まります。
- ライヴ録音はテイクごとの瞬発力が魅力。スタジオ録音は構築性とアレンジの妙に注目。
聴き方の提案 — ただ「音楽を聴く」以上の体験にするために
コニッツの演奏は「何を弾くか」だけでなく「どのように弾くか」が重要です。以下を試してみてください。
- 曲の冒頭テーマをまず静かに聴き、その後ソロの入りでテーマがどう扱われるかを追う。
- 同じスタンダードを異なる時期の録音で比べ、解釈の変化を味わう。
- ソロや小編成では「音の間」を意識して、呼吸のようなフレーズを感じ取る。
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