Bud Powell のビバップ・ピアノを深く知るための厳選レコードと聴き方ガイド

Bud Powell とは — ビバップ・ピアノの革命児

Bud Powell(バド・パウエル、1924–1966)は、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーと並ぶビバップ期の中心人物として知られるジャズ・ピアニストです。ホーン奏者のラインをピアノ右手で再現するような速いフレーズ、シンプルかつ的確な左手のコンピング、そして即興の展開力はその後のモダン・ジャズ・ピアノに決定的な影響を与えました。

コラムの目的と読みどころ

ここでは「Bud Powell を深く知るためのレコード選び」を中心に、代表的な録音の聴きどころ、各盤が残した音楽的意義、そしてどのような順番で聴くと理解が深まるかを解説します。音盤の再生・保管・メンテナンスの技術的説明は省き、音楽そのものとリスニングのための選盤ガイドに重点を置きます。

おすすめレコード — 聴きどころと選び方

  • The Amazing Bud Powell(Blue Note 系列の代表編集)

    なによりもまず押さえておきたいのが「The Amazing Bud Powell」シリーズ(Blue Note による編集盤群)。初期のビバップ期におけるパウエルの演奏の「爆発力」と作曲力が凝縮されています。

    • 聴きどころ:代表曲「Un Poco Loco」「Tempus Fugue-it(Tempus Fugueit)」など、リズムの切れと右手のラインが際立つ名演が多数。
    • 音楽的意義:ピアノ単体のソロ力と、ビバップ語法をピアノへ完全に移植した点が明瞭に分かる録音群。
    • どの盤を選ぶか:オリジナル編集(Blue Note の編集盤や近年のRVGリマスター)やコンプリート集でまとめて聴くと時期差や演奏の変化が分かりやすい。
  • The Genius of Bud Powell(Norgran / Verve 系の重要録音)

    ビバップの精神を受け継ぎつつ、より“歌心”のある演奏やバラード表現も豊富に残された時期の編集盤。テクニックだけでなく、メロディやフレーズの洗練が聞き取れます。

    • 聴きどころ:アップテンポ曲の鋭さと、バラードでの抒情性の対比。
    • 音楽的意義:初期のアドリブの革命性だけでなく、成熟したピアニズム(表現の幅)に触れられる。
    • どの盤を選ぶか:Verve 系のまとまった編集盤や再発CDを。セッションごとの違いを確認できるライナーノーツ付きが特におすすめ。
  • Jazz Giant(編集盤/代表的スタジオ演奏の集成)

    タイトルどおりパウエルの「巨匠」ぶりが伝わる録音を集めた編集。技巧と表現の両面からパウエルを楽しめます。

    • 聴きどころ:スタジオ録音ならではの緊張感と明瞭な音像。名曲の安定した名演を味わえる。
    • 音楽的意義:ビバップ的即興の典型に触れたいリスナーに最適。
  • 欧州セッション/ライブ録音(Bud in Europe / Bud Powell in Paris など)

    50年代に欧州ツアーを行った際の録音は、アメリカ本国での録音と比較してリラックスした演奏が多く、時に自由度の高い即興が聴けます。海外のリスナーやミュージシャンとの化学反応が魅力です。

    • 聴きどころ:ローカル・リズムセクションとの相互作用、会場の空気感が演奏に影響する場面。
    • 音楽的意義:パウエルの演奏がどのように環境に反応したか、国際的な評価を知るうえで参考になる。
  • 晩年のトリオ録音(RCA / その他のトリオ作など)

    60年代に至る晩年のトリオ作品には、暴発的な速さよりも「間」や「響き」を活かした演奏が増えます。技術的な側面だけでなく、音楽の深さ、歌心を感じたいときに。

    • 聴きどころ:ゆったりしたテンポの中でのフレーズ選択、ハーモニーの扱い。
    • 音楽的意義:若き日の技巧的ショウケースとは異なる、成熟した解釈の世界を示す。

代表曲と作曲/演奏上の特徴

Bud Powell は多数の名曲を残しましたが、下記は特に重要なレパートリーです。

  • Un Poco Loco — リズムの妙と右手のオブリガートが印象的。ビバップの新解釈的な一曲。
  • Tempus Fugue-it(Tempus Fugit) — 高速で切れ味のあるテーマと奔放な即興が見どころ。
  • Celia — メロディアスで親しみやすいバラード風の楽曲(愛称を込めたタイトル)。
  • Bouncing with Bud などの標準的なビバップ・チューン — ホーンのレパートリーとも共有されやすい作品。

聴き方の提案 — 初心者から中級者へ

  • 順を追って聴く:まずは Blue Note 系の初期演奏で「ビバップとしての衝撃」を実感し、次に Norgran/Verve などの中期録音で表現の幅を確認、最後に欧州録音や晩年作で解釈の深まりを味わうと理解が深まります。
  • 譜面と比較する:ピアノ奏法の勉強にも最適。主要ソロは譜例化されていることが多く、譜面と照らし合わせると右手と左手の役割がよく分かります。
  • 他の奏者との比較:チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、セロニアス・モンクなど同時代の演奏と交互に聴くと、パウエルの個性が際立ちます。

どのエディションを買うか(簡単ガイド)

  • オリジナル盤は魅力的だが入手困難かつ高価。音質を重視するなら近年のリマスター盤(Blue Note のRVG リマスター等)や正規のコンプリート編集を優先すると良い。
  • Mosaic Records 等のボックスセットは音源を網羅的に収めていることが多く、資料性が高い。限定盤が多いので入手タイミングに注意。
  • ライナーノーツ付の再発は、セッション背景や演奏解釈の手がかりが得られるため初心者にもおすすめ。

パウエルを深く味わうための追加アドバイス

  • 同一曲の異演を聴き比べる:別セッションでの即興展開の差が学びの宝庫です。
  • ピアノの役割に注目する:バップ・アンサンブルにおけるピアノの「ホーン化」(メロディック・ライン)と「伴奏化」(コンピング)の両面を意識して聴くと、パウエルの革新性が明確になります。
  • 伝記や評論を補助に:演奏が産まれた背景(健康問題や時代状況)を知ることで、フレーズの“諧調”がより重みをもって伝わります。

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参考文献