ジョニー・グリフィン入門ガイド:小さな巨人が紡ぐビバップのテナーサックス技術と聴き方のコツ
プロフィール
Johnny Griffin(ジョニー・グリフィン、1928年4月24日 - 2008年7月25日)は、アメリカ出身のテナー・サクソフォン奏者。シカゴ生まれで、1950年代から60年代にかけてビバップ/ハードバップの第一線で活躍し、小柄ながら力強い音色と超絶的な高速フレーズで「The Little Giant(小さな巨人)」という愛称で親しまれました。1960年代に渡欧して長期にわたりヨーロッパを拠点とし、晩年まで精力的に演奏を続けました。
音楽的な魅力(概観)
ジョニー・グリフィンの魅力は、テクニックと表現の両立にあります。高速で流麗なラインを吹き切るだけでなく、節回しやブルース感、リズムへの切り返しで聴き手を惹きつける表現力を備えています。以下に主要なポイントを示します。
- 圧倒的なスピードと正確さ:ダブルタイムや高速のパッセージを安定して鳴らす技術が特長です。速くても音が詰まらず、明快にフレーズが展開します。
- 明るくエッジの効いたトーン:小柄ながらも芯のある音で、アタックが明確。デクスター・ゴードンやソニー・ロリンズとはまた違う、張りのあるサウンドです。
- ブルース的語法とモダン・ハーモニーの融合:伝統的なブルース感覚を土台に、ビバップ~ハードバップの複雑なハーモニーやモダンなアプローチを自然に組み合わせます。
- 対話力(インタープレイ):リズム・セクションや共演者との掛け合いを意識したフレーズ作りを行い、ソロだけでなくバンド全体を活かすプレイが魅力です。
- テンポ感とユーモア:ライブではテンポを自由に扱い、リズムの裏を突いたり、時折ユーモラスな引用やフレーズで聴衆を楽しませます。
代表作・おすすめアルバム(入門ガイド)
グリフィンは多数のリーダー作を残しています。初めて聴く人におすすめの、いくつかの重要盤を紹介します。
- Introducing Johnny Griffin(1956)
デビューに近い時期の録音で、彼の若き技術とセンスが詰まった一枚。初期作として彼のプレイの基本を知るのに適しています。 - A Blowin' Session(1957)
同世代の名手たちとのセッション盤で、競演による刺激的なインタープレイが楽しめます。セッションの熱気とグリフィンの勢いを体感できます。 - The Little Giant(1959)
「The Little Giant」というニックネームを冠した代表作のひとつ。彼のキャッチーなリードとソロの巧みさがまとめられています。 - グリフィン&Eddie "Lockjaw" Davis(共演盤)
エディ・“ロックジョー”・デイビスとの“テナー・バトル”シリーズは、二人の個性の対比と掛け合いが楽しめる名作群です。テンションの高いライブ感が魅力。 - ライヴ録音(各種)
グリフィンはライブで真価を発揮するタイプでもあり、各地でのライヴ録音には瞬発力とコミュニケーションが溢れています。スタジオ盤と併せて聴くことをおすすめします。
代表的な共演者・シーン
グリフィンは多くの名だたるミュージシャンと共演しました。彼のキャリアを語るうえでしばしば名前が挙がるのは、ジョン・コルトレーンやリー・モーガン、ハンク・モブレー、エディ・“ロックジョー”・デイビス、ライオネル・ハンプトン期の経験などです(共演歴はアルバムやツアーによって異なります)。特に他のテナー奏者との“バトル”形式の演奏は名物で、グリフィンの速さと応酬力が際立ちます。
聴きどころ・聴き方のコツ
- フレーズの「始まり」と「終わり」を意識する:グリフィンはソロのまとめ方が巧みです。フレーズの節回しや終息のつけ方に注目すると構築力がわかります。
- テンポを変えた録音を比較する:同一曲でもライブとスタジオ、違う演奏年代を比べると表現の変化が見えて学びになります。
- 他のテナー奏者と聴き比べる:デクスター・ゴードン、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンらと比較すると、グリフィンの音色・リズム感・語法の個性がより明確になります。
- スコアやトランスクリプトでフレーズを追う:その速さゆえに一聴では見えづらい細かいモチーフやモーダルな処理が見える化され、理解が深まります。
なぜ今も聴かれるのか — 影響と遺産
グリフィンは単に早く吹ける奏者ではなく、「音楽的に速い」奏法を体現した点が重要です。技術が演奏の目的にならず、メロディやハーモニー、グルーヴのために機能しているため、今も色あせない魅力があります。また、欧州に拠点を置いて国際的に活動したことから、ヨーロッパのジャズ・シーンへ与えた影響も大きく、後進のサクソフォン奏者たちにとって重要な参照点となっています。
まとめ
Johnny Griffin は、鋭く明瞭な音色、驚異的なテクニック、そして音楽的に説得力のあるソロ構築を兼ね備えたテナー奏者です。初めて聴く人は代表的なスタジオ盤とライヴ盤を両方聴き、速いパッセージだけでなく歌心やバンドとのやり取りにも注目してみてください。彼の演奏は、聴くたびに新たな発見があり、テナー・サックスの魅力を再確認させてくれます。
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参考文献
- Johnny Griffin - Wikipedia
- Johnny Griffin | AllMusic
- Johnny Griffin | Discogs
- Obituaries / Jazz coverage (例: The Guardian)
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