マックス・スタイナーの映画音楽を聴く:ライトモティーフと名盤サウンドトラック厳選5枚
導入:Max Steinerとは何者か
Max Steiner(マックス・スタイナー、1888–1971)は、ハリウッド黄金期を代表する映画音楽作家の一人で、映画音楽における「モチーフ(ライトモティーフ)」や管弦楽による感情描写を体系化した先駆者です。数多くの映画で劇的で叙情的なスコアを残し、キングコング(1933)やGone with the Wind(風と共に去りぬ、1939)など、映画史に残る名作の音楽を手がけました。ここでは、レコード(主にサウンドトラック/コンピレーション)の観点から、聴く価値のあるおすすめ作品を詳しく解説します。
おすすめレコード(厳選5枚)
King Kong (1933) — オリジナル・スコアの魔力
ポイント:映画音楽史に残る革命的なスコア。原始的な恐怖と冒険を描く交響的な書法が特徴です。
- なぜ聴くか:映画音楽における「場面と感情を音で直接語る」手法が明瞭に示されており、現代の多くのスコアに影響を与えています。
- 注目曲:主要モチーフの断片的な展開—低音弦・金管の重層による不安の表現。
- 盤の選び方:オリジナルのモノラル・トラックを中心に収めた音源(オリジナル盤や信頼できる復刻)と、後年の拡張版CD(追加スコアや未公開パートを含む)を聴き比べるのがおすすめです。
Gone with the Wind (1939) — 壮麗なロマンとテーマの運用
ポイント:叙事詩的な語り口と美しいメロディで映画のスケールを支える代表作。
- なぜ聴くか:長大な物語を音楽でつなぐ配慮、主要テーマの再現力は映画音楽の教科書的存在です。
- 注目点:テーマの変奏とオーケストレーションの工夫—場面ごとに同じモチーフが異なる楽器編成やハーモニーで語られます。
- 盤の選び方:映画公開当時の音源(オリジナル・アルバム)と、後年の完全版/拡張版(リマスター)が存在します。音の鮮度やプログラムの完遂度で選び分けましょう。
Now, Voyager(1942)/代表的ラブ・テーマ集
ポイント:「Now, Voyager」のテーマは映画外でも愛される旋律。スタイナーの叙情性が凝縮されています。
- なぜ聴くか:少ない素材でも心を揺さぶるメロディ作法、映画の心理描写を音楽で補強する極上の実例。
- 注目曲:「Now, Voyager」テーマの弦楽アレンジ。演奏表現の繊細さに注目してください。
- 盤の選び方:単独のサウンドトラックとしてリリースされた盤に加え、スタイナー作品を集めたコンピレーション盤にも良い音源が入っています。
Casablanca(1942)関連スコア集 — テーマと劇的効果の融合
ポイント:劇中歌("As Time Goes By")が有名ですが、背景スコアの職人技も見どころです。スタイナーはこの作品の音楽面で重要な役割を果たしました。
- なぜ聴くか:劇中での既存曲(ポピュラーソング)とオリジナル・スコアの混在を巧みに処理する手腕が学べます。
- 注目点:スコアがどのように場面のムードを補強するか(インテリジェントな挿入と沈黙の使い方)を聴くこと。
- 盤の選び方:サウンドトラック単独盤や名場面集のコンピレーションにスコア素材が収録されているケースが多いので、解説やトラックリストを確認して選ぶとよいです。
Little Women(1933)/Jane Eyre 等 初期ドラマ系スコアのコンピレーション
ポイント:スタイナーの初期作に見られる繊細な室内楽的書法と、人物心理に寄り添う手法を味わえる選曲。
- なぜ聴くか:大作とは違う、小さな場面を丁寧に音楽化する技術がよく分かるため、作曲の幅を理解するのに適しています。
- 注目点:木管やハープなどを使った色彩的表現、室内的な扱い方。
- 盤の選び方:スタイナー作品を年代順に収めたアンソロジー盤や、映画ごとのリイシューで聴き比べると作風の変遷が分かります。
聴きどころ(音楽的な深掘り)
ライトモティーフの運用:スタイナーのスコアでは、登場人物や感情を象徴する短いモチーフが場面ごとに変奏され、映像の語りを補助します。モチーフの「変形」を追っていくと、物語の心理的変化が音で追体験できます。
オーケストレーションの色彩感:豊かな弦の重層、効果的な金管の使い方、木管による細やかな描写が特徴です。特にラヴテーマでは弦楽合奏のアーティキュレーションに注目。
ハリウッド的「大衆表現」と作曲技法の両立:メロディアスでわかりやすい主題と、映画語法に即した機能的な書法(場面の緊迫を和声やリズムで支える)とのバランスが学べます。
原盤 vs 拡張版での違い:古い映画音源はしばしばモノラルで、後年のリマスターや再録(オーケストラ再演)でステレオ化されたものがあります。オリジナルの「現場感」を重視するならオリジナル音源、楽曲の全貌(組曲・未発表パート)を味わいたいなら拡張版が適しています。
レコード購入時のチェックポイント(音質や音源の見分け方)
収録内容の確認:オリジナル・モノラル録音か、後年の再録(リメイク)か。楽曲の抜粋集か、映画用スコアの完全収録かをチェック。
ライナー/解説:作曲家の意図や録音の由来が解説されている盤は、聴取体験が深まります。出所の明確なリマスター情報や、使用ソース(フィルム原盤、マスターテープ等)があるか確認しましょう。
盤の版元(レーベル):La-La Land Records、Film Score Monthly、Varese Sarabande、Intrada といったフィルムスコア再発に定評のあるレーベルは、完全版や高品質な補遺を出すことが多いです(必ず盤ごとの詳細を確認してください)。
まとめ:Max Steiner をレコードで聴く意義
Max Steiner のサウンドトラックをレコードで聴くことは、ハリウッド映画音楽がどのように感情を形成し、物語を補強してきたかを「歴史的な音色」で体験することです。オーケストレーションの巧みさ、モチーフによる語り、そして映画との強い結びつき――これらは現代の映画音楽にも直結する要素です。まずはキングコングや風と共に去りぬといった代表的なスコアから入り、少しずつ初期作品やコンピレーションで作風の幅を確かめていくと、聴き応えがあります。
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参考文献
- Max Steiner — Wikipedia
- Max Steiner | Biography — AllMusic
- Max Steiner — IMDb
- Max Steiner — FilmReference


