Ahmad Jamalの名盤ガイド:初心者から中級者まで楽しむジャズ・トリオの聴き方と代表アルバム
はじめに — Ahmad Jamalとは
Ahmad Jamal(アーマッド・ジャマル、1930–2023)は、ピアニスト/作曲家としてジャズ史に独自の足跡を残した人物です。繊細なタッチ、余白を生かした間(ま)の使い方、リズム感に富んだトリオ演奏で知られ、特に1950〜60年代のトリオ録音は多数のミュージシャンに影響を与えました。本稿では「レコード(アルバム)」という切り口で、初めて聴く人にも愛好家にもおすすめできる代表作と聴きどころを深掘りして紹介します。
おすすめレコード(名盤セレクション)
以下はジャンル横断的に評価が高く、Ahmad Jamalの魅力をよく伝えるアルバム群です。各盤の背景、聴きどころ、なぜ聴くべきかを解説します。
At the Pershing: But Not for Me(1958、Argo)
最も有名で入門盤の定番。シカゴのパーシング・ラウンジでのライブ録音で、ベース=Israel Crosby、ドラム=Vernel Fournierというトリオ編成が生み出す緊密なアンサンブルが堪能できます。代表曲「Poinciana」はここでの演奏が大ヒットし、Jamalの名前を広めました。
聴きどころ:静と動のコントラスト、余白を活かしたフレージング、リズムの微妙なズレを利用したグルーヴ。まさに“音と沈黙の美学”がわかりやすく体感できます。
聴く人に与える印象:ジャズのトリオ演奏が持つ可能性を最短で理解できる一枚。初めてJamalを聴くならまずここから。
Count ’Em 88(1956、Argo)
1950年代中頃のスタジオ録音で、Jamalのピアノスタイルが成熟していく過程を示す重要作。ピアノの軽やかさとリズム隊の緊密な連携が特徴で、レパートリーはスタンダード中心ですがJamalらしいアレンジ性が光ります。
聴きどころ:スウィングする場面と抑制の効いた間の取り方が共存する点。初期の代表作として、ライブ盤とは異なるスタジオ録音の細やかさも楽しめます。
The Awakening(1970、Impulse!)
1970年代初頭の作で、Jamalの音楽がモダンジャズの要素とソウル/ファンク的グルーヴを取り込んで深化した時期の一枚。インパルス移籍後の作品で、サウンドの幅や編曲の多様性が増しています。
聴きどころ:モーダル要素、エレクトリック楽器の導入傾向、そしてJamal特有のリリシズムが混ざる点。70年代のジャズ的トレンドと彼の美学がどう融合したかを知るのに有益です。
Live at the Pershing, Vol. 2 / 他ライブ録音
「At the Pershing」があまりに有名ですが、同時期/近年のライブ録音を聴くことで、Jamalの即興性や観客とのインタラクションをより深く理解できます。ライブでは曲の展開やテンポの取り方がスタジオ録音と異なり、トリオワークの妙が際立ちます。
聴きどころ:即興の伸びやかさ、ソロと伴奏の呼吸、ライブならではのダイナミクス。ライブ盤を複数比較することで、同じ曲でも解釈が変わる面白さを味わえます。
1970年代以降のアルバム(代表的なものを拾って聴く)
Jamalは長いキャリアの中でしばしば編成や方向性を変えています。70年代のジャズ・ファンク寄りの作品や、80〜90年代の安定した演奏、2000年代以降の円熟期の作品など、年代ごとに聴き比べることで「進化の軌跡」が見えてきます。
聴きどころ:時代ごとに反映されるアレンジや編成の違い。若い頃の緊張感と、晩年の詩的な余裕を比較してみてください。
アルバムの選び方と聴き方のコツ(作品解釈に注目)
「トリオの会話」に耳を澄ます:Jamal作品の魅力はピアノだけでなくベースやドラムとの相互作用にあります。ソロが終わった後も伴奏が応答するような瞬間を探してみてください。
「間(ま)」とダイナミクスの使い方を体感する:短い沈黙や音量の落とし込みからドラマが生まれるのがJamal流。フレーズが意図的に“空けられて”いる箇所に注目しましょう。
同じ曲の複数演奏を比較する:特に「Poinciana」など、スタジオ版とライブ版で異なるテンポ感やアレンジが楽しめます。比較するとJamalの即興的アプローチがよくわかります。
時代背景を踏まえて聴く:50年代のシンプルなトリオ録音、70年代の拡張されたサウンド、以降の成熟期と、それぞれの時代性が音に表れます。
Ahmad Jamalが与えた影響
Jamalのアプローチは多くのジャズ・ミュージシャンに影響を与えました。特に「音の余白」「リズムの再解釈」「トリオ内の対話」を重視する手法は、モダンジャズの表現幅を広げました。有名な例として、マイルス・デイヴィスがJamalのサウンドや間の使い方に注目していたことがしばしば語られます(その影響は直接的・間接的両方に見られます)。
どの盤を買うべきか(初心者〜中級者向けガイド)
初心者:まずは「At the Pershing: But Not for Me」。Jamalの核となる魅力が集約されています。
中級者:スタジオ録音(Count ’Em 88 等)や70年代の作品(The Awakeningなど)で時代ごとの変化を追ってみると理解が深まります。
愛好家:ライブ録音を複数集め、同一曲の異なる解釈を比較することでJamalの即興観がより深く分かります。
最後に — 聴くときの心構え
Ahmad Jamalの音楽は「聞き流す」よりも「注意深く聴く」ことで真価を発揮します。速いフレーズだけでなく、音と音の間や小さなアクセントに意味が込められていることを意識すると、新しい発見が必ずあります。ジャズ入門者から玄人まで、各時代の録音を順に聴き進めることをおすすめします。
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参考文献
- Ahmad Jamal — Wikipedia
- At the Pershing: But Not for Me — Wikipedia
- Ahmad Jamal — AllMusic
- Ahmad Jamal — Discogs(ディスコグラフィ)


