ヴェルディ・バリトンの至宝 ピエーロ・カプッチッリの必聴レコードと聴きどころガイド

はじめに — ピエーロ・カプッチッリとは

ピエーロ・カプッチッリ(Piero Cappuccilli、1929–2005)は、20世紀後半を代表する“ヴェルディ・バリトン”の一人です。重厚で堅牢、しかし柔軟さも併せ持つ声質、語り口の明晰さ、劇的な場面での集中力が持ち味で、特にヴェルディのレパートリーで高く評価されました。本稿では「聴くべきレコード」を中心に、各盤の魅力と聴きどころを深堀りして紹介します(レコードの再生・保管・メンテナンスの解説は割愛します)。

おすすめレコード総論 — 選び方の視点

  • 役(レパートリー)に注目する:カプッチッリはヴェルディの主要バリトンを得意としました。まずは自身が好きな作品(リゴレット、トラヴィアータ、アン・バッロ・イン・マスケラ、アイーダ、ドン・カルロなど)で彼がどの場面を担当しているかを確認すると良いです。
  • スタジオ録音 vs ライヴ:スタジオ録音は音質・バランスが整い、全体像がわかりやすい。一方、ライヴは即興的な表現や緊張感、観客の反応など生の迫力が楽しめます。両方を聴き比べるとカプッチッリの芸の幅がよくわかります。
  • 編成(共演者・指揮者)をチェック:共演する歌手や指揮者・オーケストラによって作品の色合いが変わります。自分の好みに合う組み合わせを探すのも楽しみの一つです。
  • 最新のリマスター/ボックスセット:複数盤を収めたボックスやリマスター版は音質が向上・補正されていることが多く、初めて聴くなら利便性が高いです。

必聴のおすすめ盤(作品別・聴きどころ付き)

1) リゴレット(Rigoletto) — カプッチッリの代表格を体感する

なかでも「リゴレット」はカプッチッリの情感と語りの技巧が際立つ代表役。リゴレットの苦悩や父としての悲哀を、声の色彩と抑制した表現で示す場面が多数あります。特に劇終盤の追い詰められた感情表現、独白に注目すると彼の芸の真骨頂がわかります。

  • 聴きどころ:第3幕のクライマックスやリゴレットの独白的な場面。声の「支え」とフレージングの扱い。
  • 盤の選び方:スタジオ録音で全体の完成度を味わうか、有名劇場でのライヴで緊迫感を楽しむか好みで選ぶと良いです。

2) ラ・トラヴィアータ(La Traviata) — ジョルジョ・ジェルモン(Germont)としての深み

ジェルモンの父親としての説得力・内面の矛盾を描く役で、カプッチッリは「大きな声」を誇示するだけでなく、抑制した美しいレガートで説得力のある人物像を作ります。

  • 聴きどころ:「Di Provenza il mar」などのアリア場面における温度感、息の運び、対話的なフレージング。
  • 盤の選び方:共演のソプラノとの相性(声の当たり具合)を重視すると、ドラマの成立がより明瞭になります。

3) アン・バッロ・イン・マスケラ(Un Ballo in Maschera) — レナート役の迫力と誠実さ

レナートは感情の揺れが激しい役で、過剰になりがちな場面をカプッチッリは内面からの説得力で緩急を付けます。憤怒と悲嘆が交差する場面での声の変化と語りの巧みさが聞きどころです。

4) アイーダ(Aida) — アモナスロの堂々たる存在感

父としての威厳と内なる苦悩を併せ持つアモナスロ。オーケストラとの呼吸、モチーフを繰り返す中での表現の変化を見ると、カプッチッリのドラマ作りの手法が掴めます。

5) ヴェルディ作品のアリア集/コンピレーション盤(総合的に聴きたい人向け)

初めて聴くなら、彼の「ヴェルディ・アリア集」やベスト盤、あるいは「Complete Recordings」や2〜3枚組のアンソロジーが便利です。多様な役を短時間で比較でき、彼の声の変化や解釈の幅を把握しやすい利点があります。

  • 聴きどころ:短いセグメント単位で、役ごとの言葉の運び・語尾の仕上げ方を比較する。
  • 盤の選び方:収録年代が幅広い盤は、若い頃と成熟期の差異も楽しめます。

聴きどころの具体ポイント(全般)

  • レガートとブレスの扱い:カプッチッリの魅力は「大きな声の安定感」だけでなく、息のつなぎ方による自然なフレーズ感にあります。フレーズの終わりの処理に注目してください。
  • 言葉(イタリア語)の明瞭さ:語尾や子音の明快さが演技の説得力に直結します。セリフのような語り口に耳を傾けると良いです。
  • ダイナミクスのコントロール:大声と小声の切り替えがドラマを生みます。感情の爆発前後で声の色がどのように変わるかを追うと表現意図が見えてきます。
  • アンサンブルでの存在感:共演者との掛け合いで如何に役を立てているか(押し引き)を見ると、歌手としての成熟度がわかります。

実践的な聴き方の提案

  • 同一役の複数録音を比較する:若い頃と晩年の録音を並べると、声の色や解釈の変化が明瞭になります。
  • 楽曲のスコア(訳詞)を手元に置く:言葉の意味と発音の扱いを照合すると表現の意図が深く理解できます。
  • ライナーノートや批評を読む:録音当時の背景や指揮者・共演者情報が、演奏の文脈を補完してくれます。

まとめ

ピエーロ・カプッチッリは「ヴェルディの語り手」としての稀有な存在です。個々のアリアや場面だけでなく、役全体を一定の線で貫く「人物造形」に長けており、聴き込むほどに表現の層が見えてきます。最初はベスト盤や集中的なアンソロジーで代表作を掴み、気に入った役の全曲録音やライヴ盤に広げていく聴き方をおすすめします。

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参考文献