クレール・クロアザ(Claire Croiza)の魅力を徹底解説:フランス歌曲とドイツ・リートの名演と聴きどころ

序文 — クレール・クロアザという歌手

クレール・クロアザ(Claire Croiza, 1882–1944/1946)は、20世紀前半のフランスを代表するメゾソプラノ歌手の一人で、フランス歌曲(mélodie)を中心に、ドイツ語リートも高い水準で歌い上げたことで知られます。声質は重くはないが温かみと明瞭な語り口を併せ持ち、テキストへの深い理解と抑制の効いた表現で聴き手を惹きつけました。本コラムでは、彼女の代表的録音・名盤的聴きどころを挙げつつ、どの点に耳を向ければ彼女の魅力を最もよく味わえるかを詳しく解説します。

クロアザの聴きどころ:演奏の特徴

  • テクストの明瞭さと内的語りかけ:フランス語の発語・アクセントを非常に大切にしており、言葉がまず届く。意味表現に基づいたフレージングが特徴。
  • 自然なポートメントと抑制されたヴィブラート:感情を誇張せず、節度あるロングラインで曲の内面を描く。
  • 器楽的ではなく“語る”歌い方:ピアノと対話するような演奏で、伴奏者を引き立てつつ歌の物語を前面に出す。
  • ドイツ語リートでも堅実さを発揮:言語が異なってもテキスト重視の姿勢は変わらず、シューベルトやシューマンでも独自の解釈を提示する。

おすすめレコード(企画盤・選曲に基づく聴きどころ別ガイド)

1. フランス歌曲の入門盤 — フォーレ、デュパルク、ドビュッシー中心

おすすめ曲例:フォーレ「レクイエムの歌曲ではないが室内的短詩」的な作品、デュパルク「L'Invitation au voyage」、ドビュッシーの小品群(例:Beau soir など)

聴きどころ:

  • フォーレ:繊細な語尾処理と美しい語感。クロアザはフォーレの抒情性を誇張せず自然に表現します。
  • デュパルク:「旅への誘い」など詩情豊かな作品で、彼女の重心の低い中声が詩の暗い色合いをうまく引き出します。
  • ドビュッシー:色彩的な和音に対し語るように歌い、パレットの一色としてテキストを提示するやり方が明瞭に聴けます。

2. ドビュッシー/ラヴェルなどの近現代歌曲集

おすすめ曲例:ドビュッシーの細かな抒情、ラヴェルの歌曲(小品)

聴きどころ:

  • クロアザの抑えた表現は印象主義的な楽曲にぴったり。語りと音色の変化で色合いを作る聴き方を観察してください。
  • 伴奏とのバランスが秀逸で、ピアノと声が“会話”する様子がよくわかります。

3. デュパルクとフランス・ロマン派の深掘り盤

おすすめ曲例:デュパルクの代表作(L'Invitation au voyage など)、フォーレの抒情作品群

聴きどころ:

  • デュパルクでは詩のメランコリーや夢想性を、音の余白と小さな強弱の差で表現する。クロアザの歌唱は“詩の語り部”としての説得力があります。
  • 抑揚の付け方が過度でないため、歌詞の行間(息遣い・ポーズ)に注目すると彼女の解釈が深く理解できます。

4. ドイツ・リート集(シューベルト/シューマン)

おすすめ曲例:シューベルトの小曲、シューマンの詩的歌曲

聴きどころ:

  • 語学的な表現はフランス歌曲とは異なるが、テキスト中心のアプローチは共通。原語で歌う場合の母音の扱い、語尾の切り方に注目すると良いでしょう。
  • 温かさと落ち着きのある声で、叙情性と語りのバランスを保つ点が魅力です。

5. アンソロジー/全集盤(歴史的録音集)

おすすめ:クロアザの歴史的録音をまとめたコンピレーションや“Complete Recordings”的な復刻盤(78回転原盤を集成した編集盤)

聴きどころ:

  • 録音年代が古いため音質は時代相応ですが、表現の本質はしっかり伝わります。代表曲を時系列で聴くと彼女の解釈の変遷や成熟がわかります。
  • 伴奏者の名もチェックすると、共演ピアニストとの化学反応が楽しめます(当時の名伴奏者が多数参加)。

どの盤を選ぶか(購入・入手のヒント)

  • “全集”や“complete recordings”を謳う復刻盤は、曲目がまとまっていて入門に向きます。複数の短いセッション録音が年代順に並んでいるため、比較聴取に適しています。
  • 単発のテーマ別アンソロジー(「フランス歌曲集」「デュパルク特集」など)は特定の作曲家や色調を集中して聴きたい場合に便利です。
  • ライナー・ノーツ(解説)を読むと録音年代・共演者・テクストにつながる説得力のある情報が得られ、鑑賞が深まります。可能なら復刻盤の解説が充実した版を選びましょう。

聴くときの具体的ポイント(表現の聞き分け方)

  • 語尾の処理:フランス語での子音・母音の扱いを注視。テキストをどう「語る」かが演奏の核です。
  • ポーズ(間)の使い方:歌詞の行間に付けられた短い“間”が意味を拡張する場面を探してみてください。
  • 動的な抑揚の幅:極端にダイナミックな発声は少ないが、細かい強弱(クレッシェンド/デクレッシェンド)のコントロールが巧みです。
  • 伴奏とのアンサンブル感:ピアニストと声の呼吸の一致を感じられる瞬間が数多くあります。特にデュオの“間”に着目。

入門おすすめプレイリスト(短めにまとめて聴ける曲)

  • デュパルク:L'Invitation au voyage
  • フォーレ:代表的な小品(例:「夢のあとに」など)
  • ドビュッシー:Beau soir などの短い抒情曲
  • ラヴェル:小品群の中から語りが生きる曲
  • シューベルト/シューマンの小曲:言葉重視のリートを一つ加える

まとめ

クレール・クロアザは「声そのものの豪華さ」で聴かせるタイプではなく、言葉と音楽を一体化させる稀有な表現者です。歴史的録音特有の音質はあるものの、彼女の解釈は今なお色褪せません。まずはフランス歌曲集やデュパルクを軸に、全集的な復刻で時代を追いながら聴いていくと、彼女の芸術性が立体的に理解できるでしょう。

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参考文献