Emperorの名盤を徹底解剖:ノルウェー黒メタルをレコードで聴く完全ガイド
Emperor — ノルウェー黒メタルの至宝としての位置づけ
Emperorは1990年代のノルウェー・ブラックメタル・シーンを代表するバンドの一つで、交響的(シンフォニック)なアレンジと、高度に構築された楽曲で他の追随を許さない存在感を放ちました。本コラムではアナログ(レコード)で手に入れる価値の高い代表作・名盤を中心に、各作品の特色・聴きどころ、コレクター視点での選び方を深掘りして紹介します。音楽的背景や収録曲のハイライトに重点を置き、リスナー/コレクターがレコードで聴く際に何を期待できるかを解説します。
おすすめレコード一覧(スタジオ作中心)
In the Nightside Eclipse (1994)
Emperorのデビューアルバムにして代表作。ブラックメタルの荒々しさに、教会的なオルガンやシンセの重層的なアレンジを組み合わせた“交響性”を確立した作品です。当時のシーンにおける革新性、そして楽曲構築の緻密さが強く感じられます。
- 聴きどころ:荘厳なイントロから疾走する楽曲のコントラスト、トレードマーク的なリフ・フレーズ、Atmosphericなキーボードの層。
- 代表曲:“Inno a Satana”(典型的な暗黒美),“I Am the Black Wizards”(名曲),“The Majestic Morning Star”。
- レコード選びのポイント:オリジナル・プレスはコレクション価値が高いが、アナログマスターやリマスターの有無で音色/ダイナミクスが変わる。ライナーノーツやジャケットの状態も重要。
Anthems to the Welkin at Dusk (1997)
より技巧的で現代的なプロダクションへ進化した2作目。テンポ変化や複雑なリフワーク、さらにはクラシカルな和声感がより強く表に出たアルバムで、ブラックメタルの枠を拡張した一枚です。
- 聴きどころ:曲構成の予測不能さ、アグレッシブなツインギター・ワーク、濃密なメロディーライン。
- 代表曲:“Thus Spake the Nightspirit”,“The Loss and Curse of Reverence”。
- レコード選びのポイント:ヘヴィで複雑なバンドサウンドを忠実に再生するため、マスタリングに配慮したプレス(オフィシャル・リマスター等)をチェックすると良いです。
IX Equilibrium (1999)
より生々しく、ギターやリズムに重心を置いた作品。前作の華やかさから一転してダークで直線的なアプローチを取りつつ、Emperorらしい大局的な構築力は健在です。過去作とは異なる“重量感”が魅力。
- 聴きどころ:ヘヴィなミドルパート、しなやかなリフの流れ、ヴォーカルの表現幅。
- 代表曲:“Curse You All Men!”,“Towards the Pantheon”。
- レコード選びのポイント:曲ごとのダイナミクスが大きいので、リマスター盤で低域の解像感が改善されているものは聴きごたえがあります。
Prometheus: The Discipline of Fire & Demise (2001)
技術性と作曲的野心が極まった最終スタジオ作。長尺の楽曲と緻密なアレンジで、ジャズ風のリズム感やクラシカルな対位法的要素まで取り込み、黒メタルというジャンルの枠組みすら拡張した一枚です。玄人好みの難度と深さがあります。
- 聴きどころ:複雑なリズム、長い展開部、情緒の変化に富んだテーマの反復と発展。
- 代表曲:“The Loss and Curse of Reverence”とは対極の構築性を見せる楽曲群、アルバム全体を通しての統一感。
- レコード選びのポイント:音像の分離やステレオ感が重要なアルバムなので、高品質なプレス(アナログ・リマスター、重量盤など)を選ぶと楽曲の細部が楽しめます。
Wrath of the Tyrant / 初期デモ音源(コレクション向け)
デモ/EP類はEmperorの初期の荒々しさと原初的な激情を伝える重要な資料です。音質はレコーディング当時のまま粗さがありますが、その“記録性”と歴史的価値は高い。コレクターやバンドの成立過程を深く知りたいリスナーにおすすめ。
- 聴きどころ:生のエネルギー、後の名曲の萌芽となるリフやメロディー。
- レコード選びのポイント:正規のコンピレーションや公式再発で、当時のアートワークやボーナストラックを含むものが狙い目です。
ライブ/編集盤(補完的におさえたいタイトル)
Studios作以外にも、2000年代の再結成ライヴやオフィシャル・コンピレーションはステージのスケール感や別ミックスを楽しめます。完全なディスクグラフィよりは、好きな時期の演奏を補完的に集めるのが良いでしょう。
どのレコードを買うか——聴き手/コレクター別の選び方
目的によって選ぶ盤は変わります。以下の指針を参考にしてください。
- はじめてEmperorをアナログで聴く:代表作の『In the Nightside Eclipse』の正規盤(高評価のプレス)を。サウンドの基準が分かります。
- 音質・細部を重視して聴きたい:リマスターやアナログ・リマスター(マスターに忠実な重量盤)を探すと細部が聴き取りやすいです。
- コレクション重視:オリジナル・プレスや限定色(カラーヴァイナル)、初回封入物の揃ったものが良い。状態(ジャケット、インナー、シリアル等)を確認。
- 楽曲・作曲の変遷を辿りたい:初期デモ→In the Nightside Eclipse→Anthems→IX→Prometheusの順で聴くと発展が分かりやすいです。
サウンド面・収録差異のチェックポイント(購入前に見るべき点)
- プレス情報:初回プレス/再発/リマスターの区別をチェック。リマスターは音像やダイナミクスが変わることがあります。
- エディション特典:ボーナストラックや別ミックス、ブックレット/ポスターの有無は収集価値に直結します。
- ジャケットとアートワーク:オリジナルのアートワークや印刷の再現度は盤の雰囲気に影響します。縮小・切替がされている場合があるため注意。
- 公式か否か:海賊盤や非公式編集は価格が安くてもマスタリングや収録が信用できないケースがあるため、購入元の表記を確認。
聴きどころの深掘り(楽曲分析の視点)
Emperorの名曲は「テーマの反復と変奏」「対位法的なギター/鍵盤の絡み」「劇的なダイナミクス」に特徴があります。短いフレーズが曲の主題となり、それが複数のパートで反復されながら徐々に展開していく構造をよくとります。レコードで一度に、あるいはアルバム通しで聴くと、その構築美が見えてきます。
購入・収集の実用的アドバイス(簡潔に)
- 信頼できる販売元(公式ストア、実績あるレコードショップ、主要マーケットプレイスのセラー)を選ぶ。
- 出品情報にあるプレス番号、リリース年、重量盤/カラーヴァイナルの記載を確認。
- 写真でジャケット・盤面の状態を確認し、疑問点はセラーに問い合わせる。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- Emperor (band) — Wikipedia
- Emperor — Encyclopaedia Metallum: The Metal Archives
- Emperor — Discogs(ディスコグラフィと各プレス詳細)
- Emperor — AllMusic(レビューと背景情報)


