Bathory(バソリー)の全史:ブラックメタルの父が切り開いたヴァイキング・メタルと北欧叙事詩の世界
Bathory — プロフィール
Bathory(バソリー)は、1980年代初頭にスウェーデンで結成された重要なエクストリーム・メタル・プロジェクトで、中心人物は本名トーマス・ボリエ(通称Quorthon)。1983年頃の活動開始から2004年にQuorthonが逝去するまで、Bathoryはブラックメタルの初期様式を確立し、その後の「ヴァイキング・メタル」へと音楽性を転換するなど、ジャンル史において極めて大きな影響を残しました。Bathoryはスタジオ主体のプロジェクトであり、ツアーやライブ活動はほとんど行われませんでした。
音楽的特徴と魅力
初期(ブラックメタル期)の特徴:粗いローファイな録音、スピード感のあるリフ、ブラストビートやトレモロ奏法に近いギター・ワーク、尖ったスクリーム系のヴォーカル。シンプルかつ冷たい音像で不穏な空気を作り出し、「黒くて寒い」サウンドの原型を提示しました。
中期以降(ヴァイキング/エピック期)の特徴:楽曲が長尺化し、メロディックで荘厳なアレンジ(アコースティック・ギター、コーラス的な重ね録り、ストリングス風の響きなど)を取り入れ、北欧神話やヴァイキング的叙事詩をテーマにした叙情的で雄壮な世界観へと変貌。これが「ヴァイキング・メタル」と呼ばれる潮流を生み出しました。
作曲/制作の個性:Quorthonは多くの楽器を自身で演奏し、ひとりで楽曲制作・録音を完結させることが多かったため、強いアーティスト性と一貫した美学が保たれています。また敢えて粗い音質を残す演出や、物語性の高い歌詞世界もBathoryの魅力です。
テーマ性:初期は反キリスト的・暗黒主題が前面に出ることもありましたが、中期以降は北欧神話、英雄譚、自然や季節感といったより叙事的な題材へと移行し、聴き手の想像力を刺激する叙事詩的世界を構築しました。
代表作・名盤の紹介(概説)
Bathoryの作品群は大きく「初期のブラックメタル期」「ヴァイキング/エピック期」「実験的な時期」に分けられます。下記は特に影響力の大きいアルバムと、その聴きどころです。
Bathory (1984) — デビュー作。荒削りで攻撃的なサウンドは後のブラックメタルの鋳型となりました。「原点」として必聴。
The Return…… (1985) — よりダークで速いテンポ、冷たい音像を深化させた2作目。初期ブラックメタルの代表格。
Under the Sign of the Black Mark (1987) — 初期の集大成的作風と完成度の高さで高く評価される一枚。シーンに与えた影響は非常に大きいです。
Blood Fire Death (1988) — ブラックメタル的強烈さと、叙情的/エピックな要素が混在する転換期の傑作。ここから以降の展開に重要な布石が打たれています。
Hammerheart (1990) — ヴァイキング・メタルの出発点とも評される代表作。荘厳で叙事詩的な楽曲が中心で、北欧神話的世界観を音で表現したアルバム。
Twilight of the Gods (1991)、Nordland I (2002)、Nordland II (2003) — Hammerheart以降の流れを発展させた作品群。特にNordlandシリーズは晩年の叙事的スタイルの到達点とされます。
Requiem / Octagon(1994–1995) — 露骨にモダンな産業系/スラッシュ寄りのサウンドに振れた実験的作。賛否が分かれる時期ですが、Bathoryの幅を示す重要なフェーズです。
代表曲(例)
「代表曲」は人によって評価が分かれますが、以下はBathoryを語る際によく挙がるナンバーの例です。
- Sacrifice
- The Return of Darkness and Evil
- A Fine Day to Die
- Blood Fire Death
- One Rode to Asa Bay
Bathoryが残した影響と評価
ブラックメタルへの影響:Bathoryの初期作品が持つ冷たく荒々しい音像・美学は、ノルウェーのセカンド・ウェーブ・ブラックメタル(Mayhem、Darkthrone、Burzum ら)に大きな刺激を与えました。「ブラックメタルの父」と称されることもあります。
ヴァイキング・メタルの発明:Hammerheart以降に確立された、叙情的で歴史的・神話的物語性を伴うスタイルは、多くのバンドに影響を与え、Amon Amarthのような後続のヴァイキング/メロディック・デス系にも通じる潮流を生みました。
DIY精神とアーティスト性:Quorthonの一貫した制作姿勢、スタジオ中心の創作スタイル、音響美学は「商業性に左右されない純粋な表現」の象徴となり、後世のアーティストにとってのロールモデルとなりました。
聴き方ガイド(初心者向けの順序)
黒い原点を知る:まずは Bathory(1984)→ The Return……(1985)で初期の生々しさを体感。
影響力の核心:Under the Sign of the Black Mark(1987)、Blood Fire Death(1988)でその影響の深さを確認。
叙情的世界へ:Hammerheart(1990)→ Twilight of the Gods → Nordland I/II でヴァイキング/叙事詩的な側面を味わう。
幅を知る:Requiem / Octagon といった実験作も聴いて、Bathoryの振れ幅を理解すると全体像が見えてきます。
制作上のトピック(補足)
Bathory作品の多くはスタジオ制作で完結しており、Quorthon自身が多重録音で主要なパートを担当しました。初期は意図的なローファイ感、後期は多層的なコーラスやアコースティックを取り入れた広がりのあるサウンドが特徴です。ライブ活動をほとんど行わなかったことも、神話化されたイメージを強めています。
まとめ
Bathoryは、音楽的にはブラックメタルを確立し、その後ヴァイキング/エピックな表現へと大胆に舵を切った稀有なプロジェクトです。粗く冷たい「黒」の美学から、雄大で叙事詩的な「北の物語」へと至る変遷は、エクストリーム・メタル史を語るうえで避けて通れないもの。Quorthonの個人的なビジョンが貫かれた作品群は、今日でも多くのミュージシャンやリスナーに刺激を与え続けています。
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参考文献
- Bathory — Wikipedia
- Bathory — AllMusic
- Bathory — Encyclopaedia Metallum
- The 10 essential Bathory tracks — Louder Sound


