モーツァルト:コントルダンス 変ロ長調 K.123 — 歴史・音楽分析・演奏のポイント

導入:愛らしい舞曲の一つ、K.123とは

モーツァルトの「コントルダンス 変ロ長調 K.123(K6.73g)」は、社交の場で踊られるために書かれた軽やかな舞曲の代表例の一つです。短く親しみやすい主題、明快なリズム、舞踏のために整えられた形式を持ち、モーツァルトが青春期に手がけた《ダンス作品群》の流れの中に位置づけられます。本稿では、作品の成立背景、楽曲構造と和声的特徴、当時の演奏慣習、現代における演奏・録音の取り扱い、そして曲を聴き・演奏する際の注目点を詳しく掘り下げます。

歴史的背景と成立

コントルダンス(contredanse)は18世紀にヨーロッパ各地で流行した社交舞曲で、二対のラインで踊るフォークダンス由来の形式が上流社会にも取り入れられました。モーツァルトは少年期から西欧各地での旅行や宮廷、都市のサロンでの演奏を通じて、こうした舞曲の需要をよく知っており、若年期に多くのメニューエットやコントルダンスを作曲しています。K.123はそのうちの一曲で、編年目録(ケーゲル目録)ではK.123、後年の版やカタログでは補助番号としてK6.73gと表記されることもあります。

作曲年は正確に確定しにくいものの、一般には1771年から1772年頃の作品と推定されており、モーツァルトが十代前半に宮廷や市民の舞踏会のために作曲・提供した軽音楽の伝統に属します。こうした舞曲は必ずしもコンサート作品としての深い思索を目的とせず、実用的・機能的に書かれている点が特徴です。しかしモーツァルトは短い舞曲の中にも魅力的な音楽的工夫を凝らすことで知られ、K.123も例外ではありません。

編成と楽曲の位置づけ

コントルダンスは当時、宮廷オーケストラの小編成(弦楽器を中心に木管やホルンを加えることが一般的)や、鍵盤楽器のための編曲(ピアノやクラヴィコードのための独奏)など複数の編成で演奏されました。K.123も同様に、オリジナルの楽器編成に関する明確な一次資料が限られる場合があるため、原スコアが鍵盤用の簡易な筆写で残っていたり、舞曲素材として編曲・流通した可能性が高いことに留意する必要があります。

したがって、現代の演奏ではピアノ独奏、ピアノ連弾(鍵盤の簡略版)、あるいは小編成の室内アンサンブルや古楽器編成での演奏のいずれも適合します。曲の性格上、速度や装飾はその時代の舞踏慣習を反映させることでより自然な表情が得られます。

楽式と構造:短い中に凝縮された舞曲形式

K.123は典型的な18世紀舞曲の形式を踏襲しており、二部構成(A/B)でそれぞれが反復されるAABB形式が基本的な骨子となることが多いです。冒頭の主題は明るく呼吸の短いフレーズで構成され、リズムの明確さと旋律の愛らしさが強調されます。ハーモニーは安定したトニック(変ロ長調)とドミナント(ヘ長調)を主軸に短い経過和音を用いながら進行し、大きな転調や劇的な展開は通常見られません。

しかし注目すべきは、その簡潔さの中に配された小さな対位法的な掛け合いや、短い助旋律の挿入による色彩的な工夫です。モーツァルトはしばしば短いシーケンスや模倣を用いて展開を豊かに見せるため、AセクションとBセクションの対比や内部の細かな転調(属調への一時的な接近など)に耳を傾けると、楽曲の巧みさが感じられます。

和声・旋律の特徴

旋律面では、親しみやすい動機が反復と変形を通して発展します。装飾は控えめで、歌うようなフレーズと明確なリズムが共存します。和声面では、機能和声に基づく単純明快な進行が主体ですが、モーツァルトらしい短い借用和音や副属和音の導入、終止形の微妙な変化などで彩りを加えています。舞曲としての明瞭な拍節感を保ちながらも、旋律線のニュアンスで表情が作られている点がポイントです。

演奏上のポイントと解釈

  • テンポと舞曲性:舞踏曲としての目的を忘れず、あまり遅くしすぎないこと。軽快で踊りたくなるような推進力を持たせる。
  • 反復の扱い:AABBの反復は当時の慣習に従って装飾や微妙なニュアンスの変化を入れて演奏することで聴き手の興味を保てる。完全に同一に弾くのではなく、ダイナミクスやアーティキュレーションを工夫する。
  • 装飾とアゴーギク:古楽的な観点からは付点や装飾の取り扱いに注意。過剰なロマンティックなルバートや過度のポルタメントは避け、フレーズの自然な言葉感を大事にする。
  • アンサンブル的配慮:小編成で演奏する場合、メロディと伴奏のバランスを明確にして、舞曲のリズムを下支えする低音の安定感を確保する。

楽譜・版についての注意

この種の舞曲は当時の写譜や地方公演用の簡易版が複数残ることがあり、版によって小さな音型や息継ぎ、装飾の有無が異なる場合があります。演奏者は可能であれば原典版(原資料)やNeue Mozart-Ausgabe(新モーツァルト全集)など信頼できる校訂版にあたり、版差に留意することをおすすめします。IMSLPなどの公開資料も有用ですが、校訂の有無を確認して使用してください。

レパートリーとしての位置づけと現代の聴きどころ

K.123のような短い舞曲は、コンサートの前半やアンコール、小品集の一つとして効果的です。モーツァルトのピアノ作品や交響曲のような大作に比べると、単体では目立ちにくいかもしれませんが、プログラムに挿入することで時代の空気感やモーツァルトの親しみやすさを伝えることができます。聴きどころはその端的なメロディー、舞曲としての律動感、そして短い中に覗く作曲家のユーモアや繊細さです。

代表的な録音や参考演奏

K.123自体は多くの全集録音には単独で収録されないことがありますが、舞曲集やモーツァルトの小品集に含まれる形で聴くことができます。古楽系アンサンブルによる演奏、ピリオド楽器を用いた録音、またはピアノ編曲での演奏など、編成の違いによって雰囲気が大きく変わるため、複数の録音を聴き比べることをおすすめします。

まとめ:短い舞曲に宿る創意

「コントルダンス 変ロ長調 K.123」は、モーツァルトの若き才能が実用的な舞曲においても光ることを示す作品です。簡潔な形式と明快なリズムの裏に、旋律の工夫や和声的な彩りが潜み、演奏者の解釈次第で多彩な表情を見せます。歴史的背景と当時の演奏慣習を踏まえて演奏・鑑賞することで、より深い理解と楽しみが得られるでしょう。

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参考文献