モーツァルト『ディヴェルティメント第6番 ハ長調 K.188(K.240b)』:成立・構成・聴きどころ完全ガイド
モーツァルト:ディヴェルティメント第6番 ハ長調 K.188(K.240b)について
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのディヴェルティメント第6番 ハ長調 K.188(旧表記 K.240b)は、18世紀後半のサロン音楽としての機能を色濃く残しつつ、若き作曲家の技巧と均整の取れた様式感が表れた作品です。作曲年としてしばしば示される1776年の時点でモーツァルトは20歳。ザルツブルク宮廷で求められる祝祭・社交の場向けの音楽を多数手掛けており、本作もそのような文脈の一作と位置づけられます。
成立と編年の問題(K.188 と K.240b の表記)
モーツァルトの作品番号は初版のクーヘル目録から改訂が続けられ、作品番号に複数の表記が存在することがあります。本作は原初のクーヘル番号では K.188 とされる一方、後の補訂や断片的資料の解釈により K.240b と併記されることがあるため、資料や版によって表記が異なる点に注意が必要です。作品の成立年については1776年とする資料が多く、モーツァルトがザルツブルクに滞在していた時期の作と考えられています。
ジャンルと社会的機能
ディヴェルティメントは17〜18世紀に人気を博したジャンルで、社交的な場での気軽な演奏を目的とします。セレナーデと近いがやや軽い位置づけで、ダンスや行進、短いソナタ形式の楽章を交えた多楽章構成が典型です。K.188 もその機能を受け継ぎ、聴衆が飽きないようにテンポや性格の異なる楽章が配されていますが、モーツァルトの手になるために音楽的完成度や表現の繊細さが凡作の域を超えています。
編成と楽器法
ディヴェルティメントは編成が流動的で、写本や刷り出しによって弦楽のみ、混成アンサンブル、管楽器を加えた編成など様々に記されることがあります。K.188 についても複数の版が存在し、現代の演奏では弦楽合奏や室内オーケストラ形式で演奏されることが多いです。演奏時には音量のバランス、ホールや編成に応じたアーティキュレーションの調整が重要になります。
楽曲構成と様式的特徴(概説)
本作は典型的なディヴェルティメントの流れを踏襲しつつ、モーツァルトらしいメロディの自然さ、均整の取れたソナタ形式処理、舞曲の優雅さが現れます。以下では主要な楽章構成を概説し、各楽章で注目すべきポイントを挙げます(楽章名・速度標語や配列は版により異なる場合があります)。
第1楽章:序奏を持たない快速楽章(ソナタ形式)
楽章開頭は明るく開放的な主題で始まり、ハ長調の優位を明確に打ち出します。モーツァルトは短い動機を巧みに組み合わせて主題群を構成し、転調部では華やかな技巧よりも機能的な和声進行で安定した流れを保ちます。展開部では主題素材が断片的に扱われ、動機の模倣やシーケンスが用いられてダイナミズムが生まれます。終結は再現部での主要主題の回帰が明晰に処理され、古典派ソナタ様式の均衡感が際立ちます。
中間部(緩徐楽章と舞曲)
緩徐楽章では歌謡的で親しみやすい旋律が提示され、装飾は控えめにしてメロディーの自然な発展を尊重するのが好ましい解釈です。モーツァルトは和声の小さな色合いを変えることで感情の微細な揺らぎを演出します。舞曲(メヌエットとトリオ)では古典期の舞踏様式を踏襲しつつ、トリオでは異なる調性やリズムの対比を用いて全体に変化を与えます。
終楽章:ロンドまたは活気ある小ソナタ形式
終楽章は軽快なリズムと対位法的な動きで締めくくられます。ロンド形式であれば主題の回帰と小エピソードの対比に、ソナタ形式であれば短い展開を用いた明快な終息に重きが置かれます。いずれにせよ、聴衆に余韻を残す明朗で快活な締めが特徴です。
楽想の特徴と作曲技法
- 旋律線の自然さ:流れるような歌い回しと短い動機の連結が巧みで、装飾は効果的かつ節度を保つ。
- 和声の明快さ:大胆な感情表現よりも機能和声の確かさで進行し、古典派らしい均衡が保たれる。
- 対位法的要素:短い模倣や伴奏と主題の掛け合いが随所に見られ、単に伴奏をつけるだけでない入念さがある。
- 舞曲性と会話的アンサンブル:社交場に適した歌いやすさと演奏者同士の掛け合いが魅力。
演奏と解釈のポイント
演奏にあたっては次のような点が聴きどころを引き出す鍵になります。
- フレージングの自然さ:歌うようなフレーズの始めと終わりを明確にし、無理な力感を避ける。
- スピードのバランス:若々しい躍動感は保ちつつ、各楽章の性格に合わせてテンポを微調整する。
- ダイナミクスの対比:原典には細かい記譜が少ないため、演奏者の判断で内声を浮かせるか控えるかを決める必要がある。
- 装飾とアーティキュレーション:過度なロマンティックな表現を慎み、古典派の節度を守ることが多くの指揮者に好まれる。
版と校訂上の注意
本作のスコアは複数の写本や初期版が存在するため、版によっては小節の符尾や拍の取り扱い、指定音域などに差異があります。信頼できる現代版としてはデジタル・モーツァルト・エディション(Neue Mozart-Ausgabe の電子版)や、校訂を経た出版社版を参照するのが良いでしょう。無料で楽譜を参照したい場合は IMSLP の写本・版を比較することで原典に近い読解が可能です。
おすすめの聴きどころガイド
初めて聴く場合は次の点に注意して聴くと理解が深まります。第1楽章の動機がどのように楽章全体を牽引するか、緩徐楽章での簡潔な旋律の中に潜む色彩変化、メヌエットでのリズムの切り返しとトリオでの対比、そして終楽章での主題回帰の爽快さ。これらを意識するだけで曲の構造と作曲技法の妙が感じ取れます。
録音と演奏史についての概観
ディヴェルティメントというジャンル自体が長らく社交音楽として演奏されていたため、近代の録音歴はそれほど多くありませんが、20世紀後半以降の古楽復興や室内楽ブームにより多数の演奏が録音されるようになりました。歴史的な演奏慣行を重視する古楽アンサンブルと、より大編成で作品の歌わせ方を重視する近代的弦楽オーケストラの対照を聴き比べると新たな発見があります。
総評:なぜ聴くべきか
K.188 は軽やかさと洗練が同居する作品で、モーツァルトの若年期の成熟を窺わせます。社交場で愛された背景を持ちつつも、音楽的完成度は高く、古典派様式の基本やモーツァルト独特の抒情性を短時間で楽しめる良い入門作です。演奏側にとってもアンサンブル感覚や古典期のスタイル理解を深める格好の素材となります。
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参考文献
- IMSLP: Divertimento in C major, K.188 (Mozart)
- Digital Mozart Edition(Neue Mozart-Ausgabe)
- ウィキペディア(日本語): モーツァルトのディヴェルティメント
- Oxford Music Online / Grove Music Online(要購読)
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