モーツァルト ディヴェルティメント第12番 K.252(変ホ長調)――作品解説と聴きどころ

イントロダクション

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのディヴェルティメント第12番 変ホ長調 K.252(K6.240a)は、1776年に作曲された軽音楽的性格の室内作品であり、当時のサロンや宮廷の余興として演奏されることを意図した作品です。ディヴェルティメント(軽演奏曲、余興曲)は、当時の社交場や屋外での演奏で人気があり、形式的には多楽章から成ることが多く、舞曲やソナタ形式、ロンドなどを自由に組み合わせた多彩な構成を持ちます。本稿では作品の成立背景、楽曲の特徴と演奏上の留意点、楽曲分析や聴きどころをできるだけ事実に基づいて詳述します。

成立と時代背景(1776年のモーツァルト)

1776年、モーツァルトは20歳。ザルツブルクに在住し、宮廷楽長レオポルトやザルツブルク大司教の下で多くの教会音楽、儀式用音楽、社交用音楽を作曲していました。ディヴェルティメントはその中でも日常的に求められるジャンルで、祝賀会や晩餐会、屋外の催しなどで演奏されました。K.252はそのような需要に応えて書かれた一曲と考えられ、当時のモーツァルトがガラン(galant)様式やイタリア・オペラの旋律性、古典派ソナタ様式の構造を柔軟に統合していた様子がうかがえます。

編成とスコア出版について

ディヴェルティメントというジャンルは、多様な編成で書かれてきました。K.252に関しては現存する写譜や初期版に基づく編成表記があるため、興味がある方はスコア原典を参照することを推奨します。楽譜の公開はパブリックドメインとなっていることが多く、総譜やパート譜はデジタルアーカイブで確認できます(参考文献参照)。初期の刊行や写譜には書法のばらつきがあり、演奏時には校訂版や新全集(Neue Mozart-Ausgabe 等)を参照することが安全です。

楽曲の構造と音楽的特徴

ディヴェルティメントK.252は、社交用の気軽さを持ちながらも、モーツァルトらしい「均衡と歌謡性」を備えています。以下に、本作に典型的に見られる要素を整理します。

  • 調性と色彩:変ホ長調は古典派では温かく、堂々とした色合いを持つ調性とされ、優雅さや気品を表現するのに適しています。管弦楽や弦楽の響きで豊かな和音感が生まれやすく、伴奏と旋律の色分けが効果的に行われます。
  • 多楽章構成:ディヴェルティメントはしばしば4〜7楽章の構成をとり、急―舞曲―緩―舞曲―終楽章のように、歌と舞を交互に配するケースが多いです。K.252でも複数の短い楽章が並び、聴衆の集中力を保ちながら変化を与えます。
  • 主題処理と対位法の節度:モーツァルトはこの時期、対位法的処理を実用的に取り入れつつも、旋律の明晰さを保ちます。主題は明快かつ短い動機で構成され、展開部では動機の分割や転調を用いて効果的に発展させます。
  • 舞曲要素:メヌエットやホーンパイプ、ジグに由来するリズムが挿入され、社交的な踊りの雰囲気を残します。これにより各楽章の役割がより明確になります。

楽章別の聴きどころ(概説)

以下は一般的な聴きどころのガイドです。実際の楽章名や順序は版により表記が異なる場合があるため、詳細はスコアで確認してください。

  • 第1楽章(序奏的な速板/ソナタ風)

    序盤は活発なリズムと歌う主題が提示されます。ソナタ形式的な提示部-展開部-再現部の骨組みを持ちながらも、長大化せずに簡潔にまとめられるのが特徴です。提示された主題の動機が随所で伴奏に転用される点に注目してください。

  • 舞曲楽章(メヌエットやミヌエット類)

    古典派の舞曲は均整が取れており、対位的な応答やハーモニーの小さな曲折が聴き手の興味を引きます。中間部(トリオ)では調性や質感が転換されることが多く、演奏者は対比をはっきりと出すと効果的です。

  • 緩徐楽章(アンダンテ、アダージョ等)

    旋律の美しさが前面に出る楽章です。モーツァルトの歌謡性を味わう最良の場であり、フレージングやピッチの細やかな配慮、ヴィブラートの節度ある使用が重要です。和声の進行に潜む細かな模倣や装飾も聴きどころになります。

  • 終楽章(ロンドやプレスト風のフィナーレ)

    軽快さを取り戻し、リズミカルな動機が全体を牽引します。しばしば主題が反復され、対位法的な絡みや短いカデンツァ的瞬間が挿入されて終結へと導かれます。

演奏上の注意点(歴史的演奏慣習を踏まえて)

古典派のレパートリーを演奏する際には、現代的な浪漫主義的表現をそのまま持ち込まないことが重要です。具体的には、以下を心がけてください。

  • フレージングは歌うことを第一にしつつも、音楽構造を明確にする。
  • ヴィブラートは装飾として控えめに使用する。持続音で常時ヴィブラートをかけるのは避ける。
  • アーティキュレーションは短めの弓使いで明快に。スタッカートやマルカートの区別をはっきりと。
  • テンポは舞曲由来の楽章では躍動感を持たせつつも、躍りの感じを失わないよう注意する。
  • 反復の扱いはスコアに従いつつ、内声の聞かせ方を工夫することで同じ小節の反復に新鮮さを与える。

編曲・版の選択と校訂のポイント

原典写本と19世紀以降の刊行譜では表記の差異が見られることがあるため、演奏・録音を行う際は校訂版(Neue Mozart-Ausgabe 等)や信頼できる編集者による版を参照するのがよいでしょう。装飾記号やダイナミクスの多くは後補的に加えられている場合があり、史料批判的に扱うことが求められます。

鑑賞ガイド(初めて聴く人へ)

K.252を聴く際は、まず主題の「歌」を追い、次にその主題がどのように変形されていくかに注意を向けてください。舞曲楽章ではリズムの跳ねとトリオでの色彩変化を比較すると構成感が掴みやすく、緩徐楽章ではフレーズの呼吸を感じ取りましょう。終楽章では楽曲全体をまとめ上げるような推進力と、楽章間での素材の再利用を探すと面白みが増します。

まとめ

ディヴェルティメント第12番 K.252は、モーツァルトが社交的機能を果たす作品群の中で示した巧みな書法と旋律感覚を観察できる良い素材です。華やかさと均整、そして洗練された楽想の扱いが同居しており、演奏・研究の双方で多くの示唆を与えてくれます。スコアと複数の録音を比較しながら聴くことで、モーツァルトの古典派的語法の奥行きをより深く理解できるでしょう。

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参考文献