HWV(ヘンデル作品目録)とは何か:成立・構成・実践的活用ガイド

HWV(ヘンデル作品目録)とは

HWVは「Händel-Werke-Verzeichnis(ヘëンデル作品目録)」の略称で、ジョージ・フリードリヒ・ヘンデル(George Frideric Handel, 1685–1759)の作品を体系的に整理して番号を付した目録です。現代の学術・演奏界では、オプス番号や初期の出版番号が混乱を招くことが多いため、HWVによる一意の識別が広く使われています。HWV番号は楽曲の同定、版の比較、ディスコグラフィの整理、プログラム表記などで標準的に参照されます。

成立の経緯と歴史的背景

ヘンデル研究には長年にわたり複数の編集刊行物や目録が存在しました。19世紀にはFriedrich Chrysanderらによる「Händel-Gesellschaft(HG)」全集が編まれ、20世紀には批判校訂を目指す「Hallische Händel-Ausgabe(HHA)」などが進められました。それらに並行して、ヘンデルの全作品を体系化し現代の研究に対応する目的で作られたのがHWVです。HWVは個々の作品に通し番号を付与することで、異なる版や出版社の番号体系に左右されない共通の指標を提供します。

作成者と版の位置づけ(概略)

HWVはヘンデル作品の総覧的目録として学界で受け入れられ、各作品に固有の番号(HWV番号)を与えます。学術的な批判校訂や新版刊行(HHAなど)と相補的に用いられ、図書館目録、楽譜データベース、CD解説などで広く参照されています。目録自体は研究の進展や新資料の発見に伴い更新や注記の改訂が行われることがあります。

HWVの構成と番号の意味

HWVは作品をジャンルごとに分類し、各作品に番号を振ることで整理しています。基本的には以下のような目的で構成されています(細部の分類法や番号付けルールは目録本体の注記を参照してください)。

  • ジャンル別の整理:オペラ、オラトリオ、宗教作品、合唱曲、器楽曲、協奏曲、舞曲、室内楽、鍵盤楽、断片・帰属不明作品など。
  • 同一作品内の部分曲や楽章にも参照番号を付すことで、アリアや合唱、序曲など単位でも同定できる。
  • 既知の版(当時の出版譜)や写本との照合、作曲年代の推定に基づき注記を付す。

よく使われるHWVの事例(実用例)

HWVは楽曲の同定に便利です。以下は代表的な例で、演奏会や教材、ディスコグラフィで頻繁に参照されます。

  • オラトリオ「メサイア(Messiah)」はHWV 56として広く知られています。
  • 「Water Music(ウォーター・ミュージック)」は複数の組曲から成り、HWV 348–350のように連続番号で扱われることが一般的です。
  • 「Music for the Royal Fireworks(王宮の花火の音楽)」はHWV 351として識別されます。

(注:上記のように有名曲はHWV番号によって誤解なく参照できますが、細かな版や編曲の違いには別途注記が必要です。)

HWVと他のカタログ・版の関係

ヘンデルの作品を記述する際には、複数の参照系が併用されることがあります。主なものは次の通りです。

  • HG(Händel-Gesellschaft):19世紀に進められた初期の全集。古い版や校訂における伝統的な参照。
  • HHA(Hallische Händel-Ausgabe):20世紀以降の批判校訂による全集。学術的にはこちらが参照されることが多い。
  • Op.(オプス番号)や出版番号:当時の出版譜に基づく番号で、演奏史的には重要だが番号体系が重複・断片的である。

HWVはこれらの参照系と相互参照が可能なように目録内で対応表や注記が付されていることが多く、例えばプログラムやディスコグラフィでは「Messiah, HWV 56 (HHA/またはHG番号など)」のように併記されることがあります。

学術的・実務的な利点と限界

HWVの利点は次の点にあります。

  • 一意性:同一曲に対して世界共通の識別子を与えることで混乱を防ぐ。
  • 体系性:ジャンル別や作曲年代に基づく整理により研究がしやすい。
  • 実務的便宜:図書館、楽譜データベース、レコード会社、コンサート主催者が共通の番号で情報をやり取りできる。

一方で限界や注意点もあります。

  • 版の違い:HWVは作品を識別する番号体系であり、特定の版や編曲の詳細までは示さない。したがって演奏や刊行に際しては版情報(校訂版、原典版、編曲者など)を明確にする必要があります。
  • 帰属問題:ヘンデルに帰属されない作品や、複数の作曲者の可能性がある断片は目録内で扱いが慎重になる。新資料の発見で番号付けや注記が更新されることがある。
  • 更新の必要性:研究が進むにつれて再検討が必要となる箇所があり、紙の目録は随時注記・増補が行われるが、最新版の確認が重要です。

実務での使い方(演奏家・指揮者・プログラマ向け)

演奏会のプログラム作成や録音リリース、楽譜の注文などでHWV番号を利用する際の実践的なポイントを挙げます。

  • 作品名の後に「HWV番号」を付記する:例 "Messiah, HWV 56"。これで聴衆や購入者が正確な作品を特定できる。
  • 版情報の併記:原典版(Urtext)、特定の校訂版(例:HHA版)の記述を併記して版の差異を明示する。
  • 録音や販売時は、収録曲目にHWVを入れて検索性を高める。デジタル配信ではメタデータにHWVを含めるとユーザーの利便性が上がる。
  • 古い資料やプログラムでは異なる番号体系が使われていることがあるため、比較の際は対応表を確認する。

例:研究やレパートリー開拓における具体的応用

研究者はHWVを軸に作曲年代や版差を比較し、未研究の断片や地方写本の検討を進めます。演奏家はHWVで編曲や転用の痕跡を追い、オリジナルの編成に近い復元演奏を試みることができます。また、音楽学の教育現場ではHWVを通じてヘンデルの様式変化やジャンル横断的な特徴を俯瞰する教材として有用です。

よくある誤解と注意点

いくつかの誤解に注意してください。

  • HWVは版を示すものではない:HWVは作品識別のための番号であり、版や校訂の推奨を直接示すものではありません。
  • 全作品が確定しているわけではない:帰属や成立年代に不確実性がある作品は注記されるため、最新の目録注記を確認することが重要です。
  • 異なるデータベース間で表記ゆれがある:英文表記・独文表記・和文表記での表記揺れに注意し、HWV番号で照合する習慣をつけると確実です。

実務者向けの参考アドバイス

実務でHWVを活用する際は、以下を習慣にするとよいでしょう。

  • 楽曲を引用する際は作品名+HWV番号+(版情報)を明記する。
  • 古い専門書や録音を参照する場合、HG/HHAや出版オプス番号との対応表を併用する。
  • 最新のデータベース(図書館カタログ、IMSLP、学術データベース等)でHWV番号を確認して差異をチェックする。

まとめ

HWVはヘンデル研究・実演活動において不可欠な識別ツールです。作品を正確に同定し、版の差や由来を慎重に扱うための基盤を提供します。研究者・演奏家・企画者はいずれも、HWV番号を軸にして版情報や最新の学術注記を確認する習慣を持つことで、誤解を避け、より精度の高い情報発信が可能になります。

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参考文献