バッハ BWV37「Wer da gläubet und getauft wird(信じて洗礼を受けし者は)」—信仰告白と音楽表現の深層を読む
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はじめに — タイトルと聖句が示すもの
『Wer da gläubet und getauft wird(信じて洗礼を受けし者は)』BWV 37 は、題名そのものがマルコによる福音書(特にマルコ16:16「信じて洗礼を受ける者は救われる」)の言葉を直接掲げるカンタータです。バッハは聖書の短い命題を素材として、教会暦の教理的要請に応える音楽を作り上げました。本稿では、テキストの神学的側面、バッハによる音楽化の手法、楽曲構成と表現、現代の演奏上のポイント、そして参考となる録音・資料を通じてBWV 37 を深掘りします。
テキストと神学:言葉がもたらす中心命題
BWV 37 の核は「信仰」と「洗礼」による救いの確保という教理的命題です。マルコ16:16は使徒的宣教の言葉の一つであり、教会の洗礼理解と直結します。バッハの時代、ルター派教会では洗礼は信仰共同体への加入を意味する主要な秘跡であり、救いと密接に結びつけて解釈されました。
バッハは単に経文を引用するだけでなく、詩の中で個人の信仰告白と共同体の儀礼という二重の視点を描き分けます。ソリストや合唱の配置、写実的あるいは象徴的な音楽表現を通じ、信仰の内的体験(個の確信)と洗礼という外的儀礼(共同性・教会秩序)を同時に示します。
構成と音楽的手法:バッハが選んだ語法
BWV 37 ははっきりとした対比と連続性に基づく構成を持ちます。バッハの教会カンタータに共通するように、合唱曲、独唱アリア、レチタティーヴォ、終結部分へと至る流れの中で、主題の変奏と展開が行われます。テキストの重要語("gläubet"や"getauft"など)はモティーフ化され、リズムや音高によって強調されます。
バッハはしばしば福音の直接的な語句を合唱の大合唱で堂々と提示し、その後の独唱部分で個人的応答や内省を描きます。器楽伴奏は単なる付随ではなく、テキストの意味を補強する語彙を提供します。たとえば、洗礼=水のイメージには流動感のある連符や下降線が用いられ、信仰の堅さや確信には安定した和音進行や長い保続音が使われることが多いです(BWV 37 においても同様の対比的扱いが読み取れます)。
アフォクト(情感)の扱い:論理と感情の調和
バロック音楽ではアフォクト理論(情感理論)が重要です。BWV 37 では「救いの確信」「洗礼による浄化」「信仰の応答」といった多様な情感が短い時間で切れ目なく提示されるため、バッハは和声的手段(モード的な転換、属和音への解決)やリズム的対比(切迫感のある短音形 vs. 静的な長音形)を駆使します。その結果、神学的命題が単なる説教ではなく、音楽的体験として聴衆に届くのです。
声部と伴奏の相関:語り、説得、応答
典型的なバッハのカンタータと同様、BWV 37 は多声的テクスチャーの中で役割を分担します。合唱は公の宣告、独唱は個の応答、器楽は心理的・象徴的背景を担います。たとえば、合唱のフレーズが聖句の明確な断言を行う一方で、独唱アリアでは信仰の不安や救いの確信が内省的に表現されることが多く、器楽のソロ線がその心情を象徴的に補助します。
楽式的観点からの分析(典型的要素)
- 冒頭合唱:命題提示の場。モティーフが明瞭に提示され、教理的権威が音楽で示される。
- レチタティーヴォ:テキストの説明的・物語的箇所に用いられ、語りのテンポ・リズムは説得力を増す。
- アリア:個人的感情(懺悔、確信、願望)を表現する場。器楽のイメージが重要。
- 終結合唱またはコーラル:共同体への帰着。信仰共同体としての応答を音で示す。
演奏と解釈のポイント
現代演奏では歴史的演奏慣習の研究に基づいた解釈が多用されますが、BWV 37 の演奏にあたっては以下の点が重要です。
- テキストの明瞭さ:ドイツ語の発音・アクセントを明確にして、聖句の重みを伝える。
- テンポの選択:命題提示部は堂々と、内省部は呼吸感と余韻を大切にする。急速すぎると神学的な重みが薄れる。
- 器楽色の扱い:水のイメージや救済の安心感など、器楽の描写性は過度に誇張せず支えとして機能させる。
- 合唱の均衡:合唱は力強さと透明さを両立させ、ソロと合唱の輪郭を明確にする。
- 情感表現:バッハの対位法的な堅牢性を保ちつつ、言葉の意味を最優先にする。
現代への意味付け — 社会的・信仰的視点
BWV 37 のようなテキスト中心のカンタータは、単に宗教音楽の枠を超えて時代を超えるコミュニケーション手段となり得ます。信仰の表明、共同体としての儀礼、個の確信というテーマは、現代の聴衆にも普遍的に響くものです。音楽はその命題を抽象化し、感覚的に体験させることで、理知的な理解を超えた共感や省察を促します。
録音と演奏史の手がかり(入門ガイド)
BWV 37 自体はバッハの数多い教会カンタータ群の一つですが、近年の古楽復興運動により多様な解釈・録音が存在します。歴史的演奏慣習に基づく演奏(低めのピッチ、原典に基づく副旋律処理、装飾の抑制等)と、より現代的な合唱・オーケストラによる高音質録音の双方にそれぞれの魅力があります。初めて聴く場合は、複数の演奏を比較して、テキストの扱いと音色の違いを確かめることを勧めます。
まとめ — 音と語りがつむぐ救いの物語
BWV 37 は短い命題を基軸に、信仰と洗礼という教理的テーマを音楽的に立体化した佳作です。バッハはテキストへ厳密に応答することで、宗教的メッセージを美的経験へと転換します。本曲を理解する鍵は、まず言葉(聖句)への注意深い傾聴、次にその言葉をどう音で表現しているかを探ることです。演奏者は言葉の意味を最優先に据え、和声・リズム・音色を使って聴衆にその確信を伝えます。
参考文献
- Bach Digital(バッハ・デジタル) — 楽譜、移行文書、学術的記録のデータベース
- Bach Cantatas Website — 各カンタータの解説・テキスト・録音情報の総合サイト
- IMSLP(国際楽譜ライブラリ・プロジェクト) — 楽譜の原典や版の参照に便利
- Bärenreiter / Neue Bach-Ausgabe — 新バッハ全集(学術校訂版)についての情報
- Oxford Music Online — バッハ研究やカンタータの背景を探るための英語辞典・論考集
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