マティーニのすべて:歴史・レシピ・作り方・バリエーション完全ガイド
はじめに:マティーニとは何か
マティーニ(Martini)は、ジンとドライ・ベルモット(芳香強化ワイン)を主原料とするカクテルで、カクテル界の代表格として世界中で愛されています。シンプルな構成ながら微妙な配合、選ぶスピリッツやベルモットの違い、かき混ぜ方、ガーニッシュの選択により風味は劇的に変化します。この記事では、歴史・基本レシピ・作り方のコツ・代表的なバリエーション・保存や組み合わせまで、幅広くかつ詳しく解説します。
起源と歴史概要
マティーニの起源は完全には定まっていませんが、19世紀後半にヨーロッパとアメリカで誕生した諸説が有力です。現在のドライ・マティーニへと至るまでには“マルティネス(Martinez)”などの前身カクテルがあり、当時のレシピではスイート・ベルモットやマラスキーノ・リキュールを用いるものが多くありました。
20世紀に入ると、ベルモットのドライ化(フランスやイタリアのドライ・スタイル)やジンのスタイルの変化とともに、ドライ・マティーニが主流となりました。映画や文学(代表例:ジェームズ・ボンドの「シェイクしないで」など)によって文化的アイコンにもなり、バーテンダー文化の中で洗練されていきました。
基本の材料と役割
- ジン:ベース・スピリッツ。ロンドン・ドライ・ジンのような柑橘やジュニパー香が強いものが伝統的。近年はニューローカルなジンやクラフトジンも多く、個性が選択肢を広げる。
- ドライ・ベルモット:ワインを強化しハーブやスパイスで香り付けしたリキュール。全体の甘さと香りのバランスを決める重要素。
- ガーニッシュ:レモンのツイスト(皮の油分)またはオリーブ(塩味)を添えるのが一般的。味わいと見た目、香りに影響する。
- 氷と水:適度な希釈と温度管理が味を決める。冷やし方、撹拌時間が重要。
代表的なレシピと比率
マティーニには「これが正解」という唯一の比率はありませんが、よく使われる目安を示します。以下はすべて氷を入れたミキシンググラスでステア(撹拌)し、冷やしたカクテルグラスにストレインして作ります。
- クラシック(ややウェット): ジン 60ml : ドライ・ベルモット 30ml(2:1)
- スタンダード(ややドライ): ジン 60ml : ドライ・ベルモット 20ml(3:1)
- ドライ・マティーニ: ジン 60ml : ドライ・ベルモット 10ml(6:1に近い場合も)
- ベリー・ドライ/ボーンドライ: ベルモットを極少量(グラスにフリックする程度)または全く使わない
国際バーテンダー協会(IBA)の定義ではドライ・マティーニはジン+ドライ・ベルモット、レモンピールまたはオリーブのガーニッシュを用いることが示されています(比率は流派により変動)。
作り方の基本とテクニック
質の高いマティーニを作るには、温度・希釈・攪拌の三要素がカギです。
- グラスと器具を冷やす:カクテルグラスを冷凍庫で冷やすか、氷と水で冷やしておく。ミキシンググラスにも氷を入れて冷やす。
- 慣習的に「ステア(ステアード)」:マティーニは基本的にステア(スプーンで優しく撹拌)します。ステアは澄んだ外観を保ち、過度の泡や微細なエアレーションを避けます。シェイクすると急速に冷えるが、氷の破片が混ざり白濁しやすい(James Bondの影響でシェイクする人もいるが、伝統的にはステアが推奨される)。
- 希釈のコントロール:目安は20〜30回のゆっくりとした回転で約15〜30秒。これは氷の種類や室温により変わるため、最初は少なめにして味見しながら調整するのが良い。
- ストレイン(濾し):「ジャスト・スタイン」で氷をグラスに入れないこと。使用するストレーナーは細かい網目のものが理想。
- ガーニッシュの扱い:レモンツイストは皮側を上にして表面の皮脂(エッセンシャルオイル)をグラスに向かって絞り、香りをつけてからリムに沿って置く。オリーブは風味に塩味とコクを加える。
代表的なバリエーション
- ドライ・マティーニ:ベルモットを極少量に抑え、ジン主体のシャープな味わい。
- ウェット・マティーニ:ベルモットを多めにしてまろやかさとハーブ感を強調。
- ダーティ・マティーニ:オリーブの漬け汁(オリーブ・ブライン)を加え、塩味とコクを出す。
- ギブソン(Gibson):ガーニッシュにピクルスオニオン(小玉ねぎ)を用いることで独特の酸味と食感。
- ヴェスパー(Vesper):イアン・フレミングの『カジノ・ロワイヤル』で登場。ジン、ウォッカ、リレ・ブランやリレ・ヴェール(元の処方はキナ・リレット)を用いる。レシピは原作に基づく。
- マルティネス(Martinez):マティーニの祖先とされる一種で、スイート・ベルモットとマラスキーノ・リキュールを使うレシピが多い。
材料選びのポイント
- ジンの選択:ロンドン・ドライはクラシックだが、ジンごとのボタニカル(ジュニパー、コリアンダー、柑橘など)の違いを楽しむのもマティーニの醍醐味。より柑橘寄りのジンはツイストと好相性、草本寄りはドライ・ベルモットとよく合う。
- ベルモットの選択:ドライ・ベルモットでもブランドやボタニカルによって甘みや苦味が異なる。スプーンひとさじの違いが風味を左右するため、複数試して好みを見つけるのが良い。
- オリーブとレモン:オリーブは塩味と旨味を、レモンピールは香りと爽快感を与える。どちらも味の方向性を大きく変えるので、提供先やペアリングを想定して選ぶ。
保存・管理:ベルモットとジン
ジンはアルコール度数が高く安定しているため長期保存が可能ですが、ベルモットはワインをベースにした調味料的な性質があり、酸化に弱いです。開封後は冷蔵保存し、1〜3ヶ月以内に使い切るのが望ましい(風味の劣化を避けるため)。予め小さめのボトルに分けておくなどの工夫も有効です。
よくある間違いと改善策
- 過度なシェイク:見た目や急冷は得られるが氷の断片やエアレーションで香りが飛びやすい。クラシックはステアが基本。
- ベルモットを使わない習慣:極端にドライにするのは個人の好みだが、少量のベルモットがスピリッツの角を丸め、風味の複雑性を高める。
- 常温のグラス:カクテルは冷たく提供することが前提。グラスや器具を冷やしておかないと希釈や香りが変わる。
- 古いベルモットの使用:開封後に風味が劣化したベルモットは全体のバランスを悪くする。定期的に新しいボトルで試すこと。
食べ物とのペアリング
マティーニはそのドライさとハーブ感から、塩味や旨味のある前菜、魚介類、オリーブやチーズ、燻製した料理とよく合います。ドライ寄りのマティーニは牡蠣や軽い寿司、ウェット寄りはブルーチーズや生ハムとも合わせやすいです。
文化的影響とモダンな潮流
映画や文学を通じて「大人のカクテル」としての象徴性を獲得しており、バー文化の中ではカスタムメイド的な注文(比率、ガーニッシュ、ステアorシェイクなど)が一般的です。近年はクラフトジンや小規模生産のベルモットの台頭により、個性派のマティーニを提供するバーが増えています。
まとめ:究極の一杯を作るために
マティーニはシンプルだからこそ奥が深いカクテルです。材料の選択、温度管理、希釈のコントロール、ガーニッシュの使い方のすべてが味に直結します。まずは基本レシピを押さえ、自分の好み(ドライ寄りかウェット寄りか、オリーブかツイストか)を見つけましょう。バーで注文する際には比率やガーニッシュの指定をすることで、より自分好みの一杯に出会えます。
参考文献
- Martini (cocktail) — Wikipedia
- Classic Martini Recipe and History — Liquor.com
- Martini recipes and history — Difford's Guide
- How to Make a Classic Martini — The Spruce Eats
- A Brief History of the Martini — Smithsonian Magazine
- How to Mix Drinks (Jerry Thomas) — Archive.org
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