B.B. King — ブルースの王が遺した音楽と文化的遺産を深掘りする

イントロダクション — B.B. Kingとは何者か

Riley B. King(1925年9月16日–2015年5月14日)、通称B.B. Kingは、20世紀を代表するアメリカのブルース・ギタリスト、歌手、作曲家であり、しばしば "The King of the Blues(ブルースの王)" と称される人物です。シングルノート中心の表現力豊かなギター・ソロ、歌唱における感情表現、ツアー活動の旺盛さにより、ブルースを大衆音楽の重要な柱の一つへと押し上げました。本コラムではその生涯、演奏スタイル、代表曲、機材(特に“Lucille”のエピソード)、評価・受賞、そして後世への影響を詳しく掘り下げます。

幼少期と音楽の原点

キングはミシシッピ州イッタベナ(Itta Bena)で生まれ、貧しい農家の環境で育ちました。幼少期は労働のかたわら教会でのゴスペルに触れ、後に黒人コミュニティのセカンドラインやバーベキュー・パーティーなどで演奏するようになります。若き日の経験は、彼の歌詞や演奏に深い感情表現と生活感を刻みました。

ラジオと名の由来:"B.B." の誕生

キングは若くしてミシシッピからメンフィスへ移り、ラジオ局でディスクジョッキーやパフォーマーとして働いた経験があります。当時のニックネームである "Beale Street Blues Boy" が略されて "B.B." となり、それが芸名となりました。ラジオでの活動は彼の知名度を高め、後のレコード契約やツアーの基盤を作りました。

キャリア初期とブレイク

1949年以降、キングはレコーディングとツアーを本格化させ、1951年に録音した「Three O'Clock Blues」がヒットして広く知られるようになりました。この曲は1952年にR&Bチャートで成功を収め、キングを全国区のアーティストへ押し上げました。以降、1950年代を通じて多数のシングルとツアーを重ね、独自のスタイルを確立していきます。

演奏スタイルとテクニック — “歌うギター” の秘密

B.B. Kingの音楽的アイデンティティは“声のように歌うギター(the guitar that sings)”にあります。以下に主な特徴を挙げます。

  • シングルノートのフレージング:和音を多用するよりも、単音でメロディを歌わせるアプローチを多用。
  • ビブラート:長く、感情に富んだビブラートは彼の“署名”であり、持続する音に深い表情を与える。
  • フレージングの間(スペース):フレーズ間のポーズや沈黙を効果的に使い、聴き手の期待を操作する。
  • ミクソリディアンやブルーノートの活用:ブルース音階を基盤としつつジャズ的な表現も取り入れている。
  • バンドとの対話:小編成のリズム・セクションと緊密に絡むことで、ギターが歌の延長となる。

これらによりB.B. Kingのギターは"歌う"ような人間的な表現力を獲得し、単なる即興を超えたドラマ性を持ちます。

ルシール(Lucille) — 名ギターにまつわる逸話

"Lucille" はB.B. Kingが生涯にわたって呼び続けたギターの名です。1950年のある夜、キングがアラバマ州のダンス会場で演奏中に暖房用の石油ストーブが倒れて火災が発生。演奏を途中で止めて楽器を取り戻すために会場へ戻った経験があり、後にその火事の原因となった争いが一人の女性(ルシール)に関する争いから始まっていたと知り、自分のギターを"Lucille"と名付けました。それ以後、彼はすべてのギターを“Lucille”と呼び、ギターの扱いや火の扱いに関して周囲に注意を促し続けたという話は非常に有名です。

代表曲とアルバム

数多くの楽曲の中でも、とくに重要なものを挙げます。

  • Three O'Clock Blues(1951)— 初期の代表作でキャリアを飛躍させた。
  • The Thrill Is Gone(1969)— オーケストラ的なアレンジを背景にした大ヒット曲。商業的成功と批評的評価を得て、ジョニー・ギター的な孤独感を歌う名曲。
  • Everyday I Have the Blues、Sweet Little Angel、Paying the Cost to Be the Boss など — ライブやシングルで長く親しまれた楽曲群。

アルバムでは1969年の『Completely Well』に収録された「The Thrill Is Gone」が特に重要で、ブルースをロックやポップの大衆市場へ橋渡しする役割を果たしました。

機材とサウンド:ギブソンのESシリーズとピックアップ

B.B. Kingはエレクトリック・ギターとして主にギブソンのセミアコースティック機を愛用しました。特にES-335やES-355といったモデルで知られ、彼のシグネチャーモデルもリリースされています。クリーンで甘く伸びるトーン、そしてアンプの適切なブーストとリバーブの使い方が彼の温かいサウンドを支えました。

ツアー精神とライヴ文化

キングは生涯にわたって演奏を続け、ツアー活動を重視しました。長年にわたる"It’s been my life"的なツアー哲学は、多くの都市で定期的にコンサートを行うことでブルースを庶民の日常へ浸透させました。彼のライヴはスタジオ録音とはまた異なる即興性と観客とのインタラクションが魅力であり、多くのライブ盤がリリースされています。

コラボレーションとクロスオーバー

B.B. Kingはブルース界にとどまらず、ロック、ポップ、ジャズのアーティストとも積極的に共演しました。エリック・クラプトン、スティーヴィー・ワンダー、U2など多岐にわたるアーティストと共演し、世代やジャンルを越えた影響力を示しました。こうしたコラボレーションはブルースの裾野を拡げるうえで重要でした。

受賞歴と公的評価

キングは生涯にわたり数々の賞を受賞しました。代表的なものとしてはロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)への1987年の殿堂入り、複数のグラミー賞(生涯で多数受賞、広く15回の受賞が紹介されることが多い)、さらには政府からの栄誉として2006年に大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)を授与されるなど、音楽界のみならず文化的な評価も高いものでした。

後期の活動と晩年、死

高齢になってもキングは演奏と公演を続け、後進の育成やチャリティ活動にも携わりました。晩年は健康問題に悩まされることもありましたが、2015年5月14日にラスベガスで89歳で逝去しました。彼の死は世界中で追悼され、音楽史上の一つの時代の終わりを象徴しました。

遺産と影響—次世代への橋渡し

B.B. Kingの最も大きな遺産は、ブルースという表現を単なる地域音楽からグローバルなポピュラー音楽の主要要素へと押し上げたことにあります。ギター奏法のフレージングやビブラートの技術、ライヴでの表現方法は多くのギタリストに受け継がれ、エリック・クラプトン、ジョン・メイオール、ジェフ・ベックなどロック系ギタリストの演奏哲学にも影響を与えました。また、ブルース教育や保存活動の重要性を示した点も見逃せません。

おすすめの聴きどころ(入門編)

  • Three O'Clock Blues(初期の感情表現を知る)
  • The Thrill Is Gone(商業的成功とアレンジの融合を体感)
  • ライブ盤(生のインタープレイと観客との掛け合いを味わう)
  • 共演作(クラプトンらとのコラボで時代を繋ぐ視点を得る)

まとめ — B.B. Kingが示した普遍性

B.B. Kingは、ブルースを単なる“郷愁的な音楽”に留めず、表現の普遍性によってあらゆる世代と文化に届く音楽へと昇華させました。ルシールに象徴される音楽への忠誠心、ステージでの誠実な語り口、そして演奏における“歌うギター”の哲学は、今も世界中のミュージシャンと聴衆に影響を与え続けています。彼の人生と音楽を振り返ることは、ブルースそのものが持つ感情の力と文化的価値を再確認することでもあります。

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

エバープレイオンラインショップのバナー

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery

参考文献