メルセデス・ソーサ名盤ガイド|入門に最適なおすすめレコードと聴きどころ
はじめに — メルセデス・ソーサという声
メルセデス・ソーサ(Mercedes Sosa、1935–2009)はアルゼンチンを代表するフォルクローレ/ニュー・カンシオンの歌姫で、「ラ・ネグラ(La Negra)」の愛称でも親しまれました。豊かで深みのあるアルトは、民衆の歌を通して社会的・文化的メッセージを届ける役割を担い、ラテンアメリカ全域で広く尊敬されています。本コラムでは、初めて聴く人にもディープリスナーにも役立つ“おすすめレコード”をピックアップし、その背景・聴きどころ・収録曲のお勧めポイントを詳しく解説します。
選曲方針と聴き方の提案
- 「作品の歴史的価値」「代表曲の収録」「演奏・編曲の質」「録音/ライヴのエネルギー」を重視して選びました。
- 聴き方の順序は、初期のフォルクローレ作品→政治的・亡命期の重要曲→晩年のコラボレーション作品、という流れがおすすめです。声の変遷・表現の深まりが追いやすく、彼女のキャリアの文脈が見えてきます。
おすすめ盤 1:Gracias a la Vida(代表的な録音・入口として)
「Gracias a la Vida」は、ラテンアメリカの名曲を含む、メルセデス・ソーサを知るうえで欠かせないレパートリーを集めた盤の代表例です。アルトで深く歌い上げられる「Gracias a la Vida」は、彼女が民衆の感情を一身に表現する力を端的に示しており、初めて聴く人にも強い印象を残します。
- 聴きどころ:静かなフレーズで力をため、サビで一気に開くダイナミクス。声に宿る“慈愛”と“憂い”が共存する表情。
- 代表曲(盤ごとに異なる場合あり):Gracias a la Vida、Alfonsina y el mar、Canción con todos 等。
- おすすめポイント:フォルクローレの伝統を尊重しつつ、ポピュラー性も兼ね備えた演奏が多く、入門盤として最適。
おすすめ盤 2:政治/亡命期の録音(70–80年代の重要曲を収めたアルバム群)
1970年代から80年代にかけての作品やライブ録音は、ソーサの音楽が政治的メッセージと密接に結びついていた時期を反映します。軍事独裁下での弾圧、国外での活動、そして帰国後の復興といった歴史が、歌詞と歌唱表現に刻まれています。
- 聴きどころ:歌詞の持つ「抵抗」「共感」「追悼」の要素。編曲は民族楽器を基調にしつつ時にストリングスやコーラスを重ね、ドラマ性を演出します。
- おすすめ曲:Solo le pido a Dios(時に彼女の歌唱で深い説得力を持つ)、Zamba/Chamamé など地域色豊かな楽曲群。
- おすすめポイント:歴史的文脈を知ることで歌詞と表現の深みが増します。歌詞の和訳や背景を合わせて聴くと理解が深まります。
おすすめ盤 3:Cantora(2009)— 晩年のコラボレーション傑作
Cantora(正式タイトルは「Cantora, un viaje íntimo」)は、晩年のコラボレーションアルバムで、国内外の著名アーティストと共演した作品群を収めています。グスタボ・セラティ、シャキーラ、ファン・マヌエル・セラートらが参加し、彼女の声が現代のポピュラー音楽と邂逅する興味深い一枚です。
- 聴きどころ:世代やジャンルの異なる歌手たちとのアレンジ対話。ソーサの歌が他の声と混ざることで新たな表情を見せます。
- 代表的な共演:Gustavo Cerati、Shakira、Joan Manuel Serrat など。
- おすすめポイント:伝統と現代性の架け橋として、彼女の音楽が持つ普遍性を再認識させる作品。
おすすめ盤 4:ライヴ盤(ステージの力を味わう)
メルセデス・ソーサの魅力はスタジオ録音だけでなくライヴにあります。観客との呼応、即興の語り、長く伸ばされるフレーズなど、ライヴ録音では彼女の表現力がよりダイレクトに伝わります。
- 聴きどころ:MC(客席への語りかけ)や拍手、会場の空気感が残っている音源は、当時の社会的高揚や共感を感じられます。
- おすすめ曲構成:代表曲を一連で聴くと、彼女のカリスマ性と観客への影響力がよくわかります。
- おすすめポイント:初めて“生の説得力”を体感するなら、ライヴ盤を1枚は聴いてください。
収集・購入時のポイント(レコード選びの観点)
- 音源の年代や編曲を確認する:同じ曲でも年代や編曲が異なると表情が大きく変わります。オリジナル録音と後年の再録音を比較する楽しみも。
- ライナーノーツ/曲目表をチェック:アルバムに付属する解説や歌詞は、背景理解に有益です(和訳の有無も確認すると良い)。
- コラボレーション盤は参加アーティストをチェック:ゲストの存在によってアレンジや編曲の方向性が変わります。
代表曲の聴きどころ(短評)
- Gracias a la Vida:深い感謝と諦観が同居する歌唱。フレーズの端々に情感が宿る。
- Canción con todos:ラテンアメリカ的連帯感を象徴するアンセム的ナンバー。合唱的な余韻が強い。
- Alfonsina y el mar:詩情豊かなナラティブを音で描く、抒情性の極致。
- Solo le pido a Dios:社会的・倫理的な訴えを包含する楽曲。説得力のある歌唱が心に残る。
深く楽しむための補助的な読み物・見どころ
- 歌詞の翻訳や詩人・作曲者(Ariel Ramírez、Violeta Parra、Atahualpa Yupanqui、Armando Tejada Gómez など)の背景を読むと、曲の文脈がさらに深まります。
- 彼女の伝記的情報(亡命、帰国、国際的評価)を追うと、アルバムごとの音楽的変遷が見えてきます。
- 異なる年代の録音を並べて聴く:声の変化、表現の深化がクリアになります。
まとめ
メルセデス・ソーサの音楽は、単なる“良い歌”を超え、文化的・政治的な文脈と深く結びついています。まずは代表的なスタジオ盤で歌声とレパートリーを掴み、ライヴ盤や晩年のコラボレーションで新たな側面を知る。歌詞の背景や作曲者の物語も手がかりにすれば、聴く体験はさらに豊かになります。今回挙げたアルバム群を手がかりに、自分なりの“メルセデス・ソーサ名盤巡り”を楽しんでください。
参考文献
- メルセデス・ソーサ - Wikipedia(日本語)
- Mercedes Sosa - Wikipedia(English)
- Mercedes Sosa | Biography & Discography — AllMusic
- Mercedes Sosa — Discogs(ディスコグラフィ参照)
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