ステンレス鋼管の種類を徹底解説|建築・設備・プラントで使い分けるための基礎知識

耐食性と耐久性に優れたステンレス鋼管は、建築設備から工場プラント、土木インフラまで幅広い分野で使用されています。しかし、ステンレス鋼管には多くの種類が存在し、規格・製造方法・材質・用途の違いを理解しないと正しい選定ができません。

この記事では、建築・土木・設備の現場で使用される ステンレス鋼管の種類 を体系的にわかりやすく解説します。


ステンレス鋼管の種類は大きく3つに分類される

ステンレス鋼管は主に以下の3つの分類で整理できます。

  1. 製造方法による分類(シームレス / 溶接)
  2. 材質(SUS304 / SUS316 など)
  3. 用途・規格(JIS G 3448 / JIS G 3459 など)

それぞれを詳しく見ていきます。


1. 製造方法によるステンレス鋼管の種類


■ シームレス鋼管(継目無鋼管:Seamless)

鋼材を穿孔して筒状に成形した鋼管で、継ぎ目がありません。

特徴

  • 継ぎ目がないため高耐圧
  • 高温環境にも強い
  • 強度・信頼性が高い
  • 価格は高め

主な用途

  • 蒸気・高温高圧ライン
  • ボイラー周り
  • プラント設備
  • 重要な建築設備(連結送水管 など)

代表呼称:TP-A(例:SUS304TP-A)


■ 溶接鋼管(Welded)

鋼板を丸めて溶接し、筒状にした鋼管。

特徴

  • コストが安い
  • サイズが豊富
  • 一般配管に広く採用
  • 最近は溶接技術が進歩し品質が高い

主な用途

  • 一般給水・給湯
  • 冷温水
  • 衛生設備
  • 工場・ビルの設備配管

代表呼称:TP-W(例:SUS304TP-W)


2. 材質によるステンレス鋼管の種類

ステンレス鋼管は材質によって性能が大きく変わります。


■ SUS304(18Cr-8Ni:最も標準的な材質)

もっとも使用されるステンレス鋼。

特徴

  • 耐食性・耐熱性に優れる
  • 加工性良好
  • 建築設備の標準材
  • 価格と性能のバランスが良い

用途

  • 給水・給湯
  • 冷温水
  • 空調設備
  • 生活用水ライン

■ SUS316(18Cr-12Ni-2Mo:高耐食ステンレス)

モリブデン(Mo)を含み、塩害・薬品に強い。

特徴

  • 塩化物による腐食に強い
  • 塩害地域・化学工場で必須
  • 価格はSUS304より高い

用途

  • 海沿いの建物
  • 化学プラント
  • 下水処理場
  • 高腐食環境の冬季施設

■ SUS316L(低炭素タイプ)

溶接時の粒界腐食が起こりにくい材質。

用途

  • フランジやTIG溶接が頻繁にある配管
  • 食品・医薬・飲料ライン
  • 薬品配管

■ SUS310S(耐熱ステンレス)

耐熱性能が高く、800℃前後の使用に耐える。

用途

  • 高温炉の周辺機器
  • 高温排気ライン

3. 規格によるステンレス鋼管の種類(JIS)

日本の建築・設備分野でよく使用される規格は以下の2つです。


■ JIS G 3448(一般配管用ステンレス鋼鋼管:薄肉管)

建築設備向け、薄肉で軽量。
加工性が高く、プレス式や拡管式のメカニカルジョイントと相性が良い。

用途

  • 給水・給湯
  • 冷温水
  • 衛生設備
  • 住宅・ビルの設備配管

代表例:SUS304 / SUS316 の薄肉管


■ JIS G 3459(配管用ステンレス鋼鋼管:厚肉管)

工場・高圧配管向け。
強度・耐熱性に優れ、シームレスも多い。

用途

  • プラント設備
  • 高圧蒸気ライン
  • ボイラー配管
  • 食品・医薬のCIP/SIPライン

代表例:SUS304TP-A、SUS316TP-A など


その他の種類(用途としての分類)


■ 一般配管用(給水・給湯向け)

薄肉のSUS304・316が中心。コストと施工性が良い。


■ 衛生配管(食品・医薬用途)

内面精度の高い電解研磨管(EP管)を使用することもある。


■ 構造用ステンレス鋼管

手すり、建築外装、構造補強などに使用。


■ 酸洗管(Pickling)

表面のスケールを除去した管。溶接後の配管に多い。


ステンレス鋼管の種類選定のポイント

  1. 流体の種類(飲料水、蒸気、薬品、海水など)
  2. 温度・圧力
  3. 腐食環境(沿岸部・薬品環境など)
  4. 施工方法(溶接 / メカニカルジョイント)
  5. コストとメンテナンス性

適切な種類を選ぶことで、長寿命化や維持管理の最適化が可能になります。


まとめ(ステンレス鋼管の種類は用途に応じて選ぶ)

ステンレス鋼管は、
製造方法 × 材質 × 規格
の組み合わせによって多くの種類が存在します。

代表的な分類は以下の通り。

  • 製造方法:シームレス / 溶接
  • 材質:SUS304 / SUS316 / SUS316L など
  • 規格:JIS G 3448(薄肉) / JIS G 3459(厚肉)

そのうえで、

  • 一般給水:SUS304
  • 塩害地域:SUS316
  • 高温・高圧:シームレス(TP-A)
  • 衛生配管:SUS316LやEP管

など、用途に応じた選定が不可欠です。


参考文献