サージングとは何か?建築設備・配管・ポンプで起こる振動・圧力変動のメカニズムと対策を徹底解説
サージングとは
**サージング(Surging)**とは、配管・ポンプ・送風機などの流体系システムにおいて発生する、周期的な圧力変動・流量変動・振動現象の総称です。
建築設備(給水・排水・空調・冷凍設備)や土木施設(ポンプ場、水道施設)において、サージングは機器の故障原因にもなり得る重要な現象です。
水撃(ウォーターハンマー)と混同されやすいですが、サージングは継続的に発生する振動現象、水撃は瞬間的な圧力衝撃という違いがあります。
サージングが発生する主な場面
1. ポンプ運転時のサージング
遠心ポンプや給水ポンプでは、次のような条件でサージングが起こりやすくなります。
- 流量が極端に少ない運転(低流量域)
- ポンプの吐出抵抗が大きい状態
- ポンプが性能曲線の不安定領域で運転されているとき
- 配管抵抗が急に変化したとき
このとき、吐出圧の上下振動が周期的に発生し、ポンプ本体・配管が揺れることがあります。
代表的な症状:
- ポンプの振動・騒音が大きくなる
- 圧力計の針が周期的に振れる
- 流量が安定しない
- ポンプモーターの負荷電流が変動する
2. 送風機・ターボ機器のサージング
空調設備や産業用送風機でもサージングは発生します。
特に遠心式送風機で、静圧が高く、風量が不足している状態で起こりやすい現象です。
症状:
- ドンッ、ゴンッという周期的な衝撃音
- ダクトの振動
- モーター負荷の変動
- 過負荷トリップの発生
送風機のサージングが繰り返されると、羽根車や軸受に重大な損傷を与えることがあります。
3. 大規模配管設備でのサージング(給水・消火・排水)
大口径配管や長距離配管では、流体の慣性が大きいためサージングが発生しやすく、
- ポンプの起動・停止
- 電磁弁の急閉
- バルブの急開・急閉
- 高低差の大きい配管
こうした条件の組み合わせで、周期的な圧力波が配管内を行き来する現象が起こります。
サージングの原因を理解する:流体系システム特有の不安定現象
● 原因①:流量と圧力のバランス崩壊
ポンプや送風機は、本来、
**「流量が増えると圧力が下がる」**という特性(特性曲線)を持っています。
しかし、ある条件下では逆に、
流量が下がると圧力も下がる不安定領域が現れます。
ここで運転すると、機器内部で流れが失速し、圧力が周期的に上下します。
● 原因②:逆流や失速による流れの乱れ
ポンプ内部や送風機内部で失速(サージングポイント)に達すると、
- 逆流
- 旋回流(サージロール)
- 流れの剥離
などが起こり、これが振動の原因になります。
● 原因③:配管系の固有振動と共振
長距離配管では、配管内の圧力波が反射し、
配管固有の周期と一致するとサージングが増幅されます。
サージングを放置するとどうなるか?
● 機器故障のリスク
- ポンプ羽根車の破損
- 軸受(ベアリング)の異常摩耗
- モーターの過負荷・焼損
- 送風機の羽根車割れ
● 配管損傷のリスク
- 配管支持金具の緩み
- バルブの破損
- フランジ部の漏れ
- 配管破裂(極端な例)
● システム運転不安定
- 流量が安定しない
- 圧力が設定値に保てない
- ポンプ交互運転が乱れる
サージングの対策:実務で使われる代表的な方法
1. ポンプの運転点を安定領域にする
- ポンプ選定を見直す
- バルブ調整で適正流量にする
- バイパスラインを設置して最低流量を確保する
特に給水ポンプでは、**最低流量バイパス(ミニマムフローライン)**が一般的です。
2. インバータ制御によるスムーズな運転
急激な負荷変動を防ぐために、
- 起動・停止のランプ時間を長くする
- PID制御のゲイン調整
が有効です。
3. 配管系の圧力変動を抑える
- サージタンク(加圧水槽)の設置
- エアチャンバー・アキュムレータの設置
- チェックバルブ(逆止弁)の選定見直し
- バルブの急閉防止
特に長距離配管では、サージタンクが非常に有効です。
4. 送風機のサージング対策
- バイパスダンパの設置
- 入口ガイドベーンの調整
- インバータ制御による風量の最適化
- 風量が不十分な運転条件を避ける
サージングとウォーターハンマーの違い(技術者が混同しやすい点)
| 現象 | サージング | ウォーターハンマー |
|---|---|---|
| 発生するタイミング | 継続的、周期的 | 一瞬(ミリ秒~数秒) |
| 原因 | 流量と圧力の不安定領域、失速 | バルブの急閉、ポンプ停止 |
| 主な対象 | ポンプ、送風機、大規模配管 | 給水配管、消火配管 |
| 現象 | 振動、脈動 | 衝撃音、圧力スパイク |
| 被害 | 振動疲労、機器損傷 | 配管破裂、継手破損 |
サージングは振動現象、ウォーターハンマーは衝撃現象という点が最も重要な違いです。
まとめ
サージングとは、ポンプ・送風機・大規模配管で発生する圧力と流量の周期的な変動現象です。
設備の振動、流量不安定、機器の早期損傷の原因となるため、建築設備・土木設備において重要視されます。
建築・土木現場でサージングを防ぐためには、
- 適切なポンプ・送風機の選定
- 流量の安定化
- インバータによる制御最適化
- サージタンク等の付加設備
などを組み合わせることが有効です。
参考文献
※以下はクリック可能なリンク形式でまとめています。
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/50/451/50_451_2423/_pdf
- https://www.pumps.org/
- https://www.tlv.com/global/ja/steam-theory/pump-cavitation.html
- https://www.jma.or.jp/attachments/10102/download


