一般配管用ステンレス鋼鋼管の基礎知識|特徴・規格・用途・メリットをわかりやすく解説

一般配管用ステンレス鋼鋼管は、建築設備・工場設備・医療施設など幅広い現場で使用される、耐食性と耐久性に優れた配管材です。従来はSGP(炭素鋼鋼管)が主流でしたが、赤水の問題や長寿命化のニーズ、衛生性の向上から、ステンレス鋼鋼管の採用が急増しています。

本記事では、一般配管用ステンレス鋼鋼管の特徴、JIS 規格、用途、メリット・デメリット、選定ポイントまで詳しく解説します。


一般配管用ステンレス鋼鋼管とは?

一般配管用ステンレス鋼鋼管とは、水・空気・蒸気・薬品などの流体を安全かつ衛生的に輸送するために使用されるステンレス製の配管用鋼管です。
特に建築設備や工場設備で多く用いられ、耐食性と耐久性の高さから長寿命配管として評価されています。

主に使用されるステンレス材は以下の2種です。

  • SUS304(18Cr-8Ni)
  • SUS316(18Cr-12Ni-2Mo)

316材は塩分・薬品に強いため、腐食要因が多い環境で採用されます。


一般配管用ステンレス鋼鋼管の規格(JIS)

一般配管用に使用されるステンレス鋼鋼管は、主に以下のJIS規格に分類されます。


■ JIS G 3448(一般配管用ステンレス鋼鋼管:薄肉管)

建築設備の給水・給湯配管で特に使用される薄肉ステンレス管。
軽量で施工性が良く、最近の新築物件では主流となりつつあります。

特徴

  • 肉厚が薄く軽い(施工性向上)
  • SUS304・SUS316が対象
  • メカニカルジョイント(拡管式・プレス式)との相性が良い
  • 住宅、ビル設備に最適

■ JIS G 3459(配管用ステンレス鋼鋼管:厚肉管)

工場設備・高圧配管などにも使用される厚肉管。

特徴

  • 肉厚があり強度が高い
  • 高温・高圧のラインに対応
  • 溶接施工(TIG)が一般的
  • プラント設備や工業配管で広く採用

一般配管用ステンレス鋼鋼管の種類

一般配管向けのステンレス鋼鋼管には、主に以下のタイプがあります。


■ 1. シームレス鋼管(継目無鋼管)

継ぎ目がないため高圧・高温のラインに信頼性が高い。

特徴

  • 継目がないため高耐圧
  • 耐熱性が高い
  • 価格はやや高い
  • 高温水、蒸気、薬品ラインなどに使用

■ 2. 溶接鋼管(電縫鋼管)

建築設備で最も多く使用される方式。

特徴

  • コストが安く量産可能
  • 一般給水・給湯に最適
  • 最近は溶接部の品質向上で信頼性も高い
  • サイズ展開が豊富

■ 3. ライニングステンレス鋼管

ステンレスの耐食性をさらに高めるため、樹脂を内面にライニングした鋼管。

特徴

  • より赤水に強い
  • 高純度水・食品系ラインにも使用
  • 初期コストは高め

一般配管用ステンレス鋼鋼管の接続方法

ステンレス配管では、以下の接続方式が用いられます。


■ 1. 溶接接続(TIG溶接)

最も信頼性が高い接続方法。

  • 高気密・高強度
  • 厚肉管(JIS G 3459)に最適
  • 熟練技術が必要

■ 2. メカニカルジョイント(プレス式・拡管式)

施工スピードが速く、住宅・ビル設備で普及。

  • 火気不要で安全
  • 技術レベルの均一化が可能
  • 薄肉管(JIS G 3448)と相性が良い

■ 3. フランジ接続

機器接続や、大口径での分解・点検に便利。

  • 点検性が良い
  • パッキン管理が重要

一般配管用ステンレス鋼鋼管が選ばれる理由(メリット)

■ 1. 圧倒的な耐食性で赤水が出ない

炭素鋼鋼管(SGP)は年数が経つと赤水が出るが、ステンレスは腐食しにくく、水質を保てる。


■ 2. 耐久性が高く長寿命

50年以上使用できるケースも多く、長期的な維持管理コストを削減。


■ 3. 衛生的で給水品質を保てる

食品工場・病院・学校など衛生基準が高い現場で評価が高い。


■ 4. 高圧・高温にも対応できる

蒸気・温水・薬品ラインなど特殊用途にも強い。


■ 5. 豊富な接続方法と施工性

  • 薄肉管は加工が容易
  • メカニカルジョイントで工期短縮
  • 火気作業不要の現場に最適

一般配管用ステンレス鋼鋼管の主な用途

実際の建築・土木・設備現場での用途は非常に広いです。

  • 給水・給湯配管
  • 高層ビルの立て管
  • 医療施設・食品工場の衛生配管
  • 空調設備の冷温水ライン
  • 工場の薬品ライン
  • 高温・高圧の工業配管
  • 海沿いなど腐食環境の強い地域の配管
  • 消火設備の一部(連結送水管などで採用例あり)

耐食性や衛生性が求められる場所で特に重宝されています。


一般配管用ステンレス鋼鋼管の注意点(デメリット)

もちろん弱点もあります。

■ 初期コストが高い

SGPや塩ビ管より高価。


■ 溶接品質の管理が必要

  • 酸化スケール
  • ルート面のガス管理
    など熟練した施工が求められる。

■ もらい錆が発生する場合がある

ステンレス自体は錆びにくいが、鉄粉が付着すると表面が茶色く変色することがある。


一般配管用ステンレス鋼鋼管の選定ポイント

配管材を選ぶ際のポイントは以下の通り。

  • 流体(水・空気・薬品・蒸気など)
  • 温度・圧力条件
  • 腐食環境(海沿い・薬品・地下など)
  • 施工方法(溶接・プレス・フランジ)
  • コスト(初期費用+維持費)
  • 使用年数の要求水準

建物の用途・水質・施工環境により材質や規格を適切に選ぶことが重要です。


まとめ

一般配管用ステンレス鋼鋼管は、耐食性・長寿命・衛生性の高さから、建築設備や工場設備で広く用いられている信頼性の高い配管材です。JIS G 3448(薄肉管)と JIS G 3459(厚肉管)を中心に、用途に応じて材質(SUS304・SUS316)や接続方式を選定する必要があります。

ライフサイクルコストを重視する現場が増えている現在、一般配管用ステンレス鋼鋼管の需要は今後も高まっていくと考えられます。


参考文献(クリック可能リンク)