RSSとは?仕組み・歴史・使い方・実装の完全ガイド — WordPress・WebSub・セキュリティ対策まで
RSSとは:概要と目的
RSS(Rich Site Summary / Really Simple Syndication)は、ウェブサイトの更新情報を機械可読なXMLフォーマットで配信するための仕組みです。ユーザーは複数のサイトを個別に巡回する代わりに、RSSリーダー(フィードリーダー)で購読することで、見出しや要約、公開日時、場合によっては本文やメディアファイル(ポッドキャストなど)をまとめて受け取れます。ニュース配信、ブログ更新通知、ポッドキャストの配信などに広く使われています。
歴史的背景とバージョンの混乱
RSSは1999年頃に登場し、当初は「RDF Site Summary(RDFベースのフォーマット)」としてNetscapeによって策定されたバージョン(0.90)がありました。その後、Dave Winerらによる簡略化版のRSS 0.91→0.92、さらに開発グループによるRDFベースのRSS 1.0(名前空間や拡張を強化)と、再びシンプルさを志向したRSS 2.0(現在広く使われる形式)が並立するなど、仕様面で分岐と競合が起きました。
この分岐と曖昧さを受けて、より整合性のある代替としてAtomという新しいフィード標準(RFC 4287, 2005)が登場しましたが、現実的にはRSS(特にRSS 2.0)は多くの既存システムやCMS(例:WordPress)のデフォルトフォーマットとして今も広く使われています。
技術的な構造(RSS 2.0 を中心に)
RSS 2.0はXMLベースで、基本的な構造は以下のようになります(簡略):
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<rss version="2.0">
<channel>
<title>サイト名</title>
<link>https://example.com/</link>
<description>サイトの説明</description>
<item>
<title>記事タイトル</title>
<link>https://example.com/post1</link>
<description>要約や抜粋(HTMLを含むことも)</description>
<pubDate>Tue, 10 Nov 2025 12:00:00 +0000</pubDate>
<guid>https://example.com/post1</guid>
</item>
</channel>
</rss>
主要な要素:
- channel:フィード全体のメタ情報(title, link, descriptionなど)
- item:個々のエントリ(title, link, description, pubDate, guid など)
- enclosure:音声や動画などのメディアファイルを示す属性(ポッドキャストで重要)
日付・文字コード・MIMEタイプ
RSS 2.0のpubDateはRFC 822形式(例:Tue, 10 Nov 2025 12:00:00 +0000)を使うことが多く、XML宣言でUTF-8などのエンコーディングを指定します。配信のMIMEタイプは一般に application/rss+xml が推奨されます(ブラウザやクライアントの互換性により text/xml や application/xml が使われる場合もあります)。
拡張と名前空間
RSS自体はシンプルですが、実務では様々な拡張が使われます。代表的なもの:
- content:encoded(WordPress が使う拡張)— 記事のフルHTML本文を含めるために使われる
- itunes: — Appleのポッドキャスト用メタデータ(カテゴリ、エピソードの番号、サマリーなど)
- Dublin Core(dc:)— 詳細なメタデータ用
- Media RSS(media:)— Yahoo発のメディア拡張
これらはXML名前空間(xmlns)で宣言され、RSSの柔軟性を高めますが、互換性確認が重要です。
フィードの検出と購読方法
ウェブページでフィードを見つける一般的な方法は、HTMLヘッダ内の link 要素による自動検出(例:<link rel="alternate" type="application/rss+xml" title="RSS" href="https://example.com/feed/" />)です。ユーザーはURLをRSSリーダーに直接追加することでも購読できます。
購読側は定期的にフィードをポーリングして更新を取得しますが、更新頻度を下げるためのTTL指定や、よりリアルタイムに近い配信を実現するプロトコル(WebSub / PubSubHubbub)を用いることもあります。
WebSub(旧PubSubHubbub)によるプッシュ配信
従来のポーリングは遅延やサーバ負荷の問題を生みます。WebSub(元のPubSubHubbub)は、発行者→ハブ→購読者の経路で更新をプッシュ配信するプロトコルで、リアルタイム性を高め、ポーリング負荷を軽減します。WordPressや各種サービスでのサポートが進んでいます。
RSSとAtomの違い
- 標準化:AtomはIETFでRFCとして標準化(RFC 4287)。RSSは複数のバージョンが存在し、仕様の統一が難しかった歴史がある。
- 構造の一貫性:Atomはエントリ/更新日時などの扱いが明確で、日付はRFC 3339(ISO 8601派生)を使うなど明確。
- 互換性:実務上はRSS 2.0が依然広く使われ、CMSやポッドキャストディレクトリがRSSを想定しているケースが多い。
ユースケース(現代での利用例)
- ニュース・ブログの更新配信(ユーザー向けの購読)
- ポッドキャスト配信(enclosure と itunes: タグ)
- サイト監視やコンテンツモニタリング(特定ページの更新を検知)
- 自動化ワークフロー(IFTTTやZapierでRSSトリガーを使った連携)
- 企業内の情報配信や通知システム
実装上の注意点とベストプラクティス
- 完全なURLを用いる:リンクやGUIDは絶対URLを使うと互換性が高い。
- エンコーディング:UTF-8で統一し、XML宣言を正しく設定する。
- HTMLの取り扱い:descriptionやcontent:encodedにHTMLを含める場合はCDATAや適切なエスケープを使う。
- キャッシュと条件付きリクエスト:Last-ModifiedやETagに対応して、無駄な転送を減らす。
- 更新の頻度表示:ttlやhubによるプッシュで無意味なポーリングを避ける。
- ポッドキャストはenclosureのlength/typeを正確に設定する。
セキュリティとプライバシーの考慮点
RSSはXMLを扱うため、パーサーの設定次第でXXE(XML External Entity)やDTD展開による脆弱性が発生する可能性があります。信頼できないフィードを解析する際は外部エンティティを無効化し、パーサーの安全設定を行ってください。また、フィード内に混入するスクリプトや不正コンテンツに対するサニタイズも重要です。
ツール、ライブラリ、サービス
- フィードリーダー:Feedly、Inoreader、The Old Reader など
- CMSのサポート:WordPress はデフォルトでRSS 2.0フィードを生成(/feed/)
- ライブラリ:PHPのSimplePie(WordPressも内部でSimplePieを利用)、Pythonのfeedparser など
- 管理サービス:FeedBurner(かつて広く使われた配信管理サービス、現在は更新停止や機能縮小の経緯あり)
WordPressにおけるRSSの扱い(実務的メモ)
WordPressは標準で複数のフィードを生成します(RSS2、Atomなど)。URL例:/feed/ または /?feed=rss2。WordPressは記事全文を出力するか抜粋を出力するかを設定で切り替えられ、content:encoded でフルコンテンツを含めることが一般的です。ポッドキャスト配信にはプラグインでiTunesタグを追加するのが通例です。
まとめ:RSSは今も現役の「配信基盤」
RSSは1990年代から続く古参の技術ですが、シンプルさと柔軟性ゆえに現在も多くの用途で使われています。AtomやWebSubなどの新技術と組み合わせることで、既存のエコシステムと共存しながらリアルタイム配信や拡張メタデータを実現できます。実装では互換性、エンコーディング、セキュリティ、配信効率(ポーリング vs プッシュ)を意識すると良いでしょう。
参考文献
- RSS 2.0 Specification — RSS Advisory Board
- RSS — Wikipedia(歴史とバージョンの解説)
- RFC 4287 — The Atom Syndication Format
- WebSub — W3C Recommendation
- WordPress フィードに関するドキュメント — WordPress.org
- SimplePie — PHP フィードパーサー
- feedparser — Python フィードパーサー
- OWASP — XML External Entity (XXE) Processing
- FeedBurner — Wikipedia(歴史的背景)


