Azureとは?主要サービス・料金・導入手順をわかりやすく解説|企業向け完全ガイド
Azureとは
Azure(Microsoft Azure、正式には Microsoft Entra を含むエコシステムを持つクラウドプラットフォーム)は、マイクロソフトが提供するパブリッククラウドサービス群です。仮想マシンやストレージ、ネットワークといった基礎的なIaaSから、PaaS、サーバーレス、データベース、AI/分析、セキュリティ、IoT、ハイブリッド運用を支える機能まで幅広いサービスを提供し、オンプレミスからクラウドまでのアプリケーション設計・運用・監視・ガバナンスを包括します。
歴史と背景(簡潔)
Azureは元々「Windows Azure」として発表され、2010年代にかけて機能追加と成長を続け、2014年以降は「Microsoft Azure」のブランドで広く知られるようになりました。クラウド市場での主要プレーヤーの一つとして、グローバルなデータセンター(多数のリージョン)とエンタープライズ向け機能を強みに、企業のクラウド移行やモダナイゼーションを支援しています。
基本的な概念とアーキテクチャ
- リージョンと可用性ゾーン:Azureは世界各地にリージョン(データセンターの集合)を持ち、可用性ゾーンにより高可用性設計が可能です。リージョン間でのレプリケーションにより災害対策を実現します。
- サブスクリプションとリソースグループ:課金やアクセス単位はサブスクリプションで管理し、関連リソースはリソースグループにまとめてライフサイクルや権限を管理します。
- Azure Resource Manager(ARM):Azureの管理プレーンはARMを通じて提供され、ARMテンプレート(宣言的なIaC)やBicepなどを用いてリソースを定義・デプロイできます。
- アイデンティティとアクセス管理:従来の Azure Active Directory は Microsoft Entra ID としてリブランドされており、シングルサインオン、多要素認証、外部ID統合、条件付きアクセスなどを提供します。
主要サービスカテゴリ(代表的なサービスと用途)
コンピューティング
- Azure Virtual Machines(VM):IaaSでOSレベルのフルコントロールが可能。
- Azure Virtual Machine Scale Sets:スケーラブルなVMの自動スケーリング。
- Azure App Service:WebアプリやAPIのPaaSホスティング(自動スケール、デプロイ機能内蔵)。
- Azure Kubernetes Service(AKS):マネージドKubernetesサービス。
- Azure Container Instances(ACI):短期間/単一コンテナの実行に便利。
ストレージ
- Azure Blob Storage:オブジェクトストレージ(未構造データ、バックアップ、アーカイブ)。
- Azure Files:SMB/NFSプロトコル対応のファイル共有。
- Azure Disk Storage:VM用のブロックストレージ。
- Queue / Table(ストレージサービスの一部、Tableは歴史的にはTable Storage/NoSQL用途)。
ネットワーキング
- Virtual Network(VNet):クラウド内のネットワーク分離とIP管理。
- Azure Load Balancer / Application Gateway:レイヤ4/レイヤ7の負荷分散。
- Azure Front Door:グローバルなアプリ配信・WAF機能。
- ExpressRoute / VPN Gateway:オンプレミスとAzure間の専用線/VPN接続。
- Traffic Manager / Azure DNS:DNSベースのトラフィック制御とドメイン管理。
データベース・データサービス
- Azure SQL Database:マネージドなリレーショナルDB(単一/ハイパフォーマンス/マネージドインスタンス)。
- Azure Database for PostgreSQL/MySQL/MariaDB:各種オープンソースDBのマネージドサービス。
- Azure Cosmos DB:グローバル分散、マルチモデルのNoSQLデータベース(SQL API, MongoDB API, Cassandra API, Gremlin等)。
- Azure Synapse Analytics:データウェアハウスとビッグデータ統合の分析サービス。
サーバーレス・イベント駆動
- Azure Functions:イベント駆動のサーバーレス実行。
- Azure Logic Apps:ノーコード/ローコードのワークフロー自動化。
- Event Grid:イベントルーティングのためのPub/Subサービス。
AI・分析・データサイエンス
- Azure Cognitive Services:画像・音声・言語などの事前学習済みAPI群。
- Azure Machine Learning:モデル開発・学習・デプロイのためのプラットフォーム。
- Azure OpenAI Service:OpenAIのモデルをAzure上で利用するサービス(利用には申請や制約がある)。
セキュリティ・運用
- Microsoft Defender for Cloud(旧:Azure Security Center):脅威検出・ベストプラクティス評価。
- Microsoft Sentinel(旧:Azure Sentinel):クラウドネイティブのSIEM/SOAR。
- Azure Key Vault:機密情報や鍵管理。
- Azure Monitor / Application Insights / Log Analytics:監視・ログ収集・アプリ可観測性。
ハイブリッドとマルチクラウド
- Azure Arc:オンプレや他クラウドのリソースをAzure管理で一元化。
- Azure Stack:オンプレ環境にAzureサービスを持ち込むための製品群。
料金体系と契約形態(概略)
Azureは基本的に従量課金(Pay-as-you-go)ですが、長期利用や固定リソースに対する割引(予約インスタンス/Reserved Instances)、スポットVMのような割引付き短期リソース、エンタープライズ契約(EA)やパートナーを通じたCSPなど複数の契約形態があります。リソースごとに異なる課金単位(時間・秒・リクエスト数・ストレージ容量など)があるため、事前のコスト見積りと継続的なコスト管理が重要です。
運用・ガバナンス
- RBAC(ロールベースアクセス制御)で詳細な権限付与を行い、管理グループやポリシー(Azure Policy)で準拠性を強制できます。
- 監視はAzure Monitorを中心にメトリクスとログで実装し、Application Insightsでアプリケーションレベルの可観測性を確保します。
- Infrastructure as Code(ARM/Bicep/Terraform)を活用した再現可能な環境構築と変更管理が推奨されます。
セキュリティとコンプライアンス
Azureは多数の国際的・業界別コンプライアンス認証(ISO、SOC、PCI DSS、HIPAA など)を取得しており、データ暗号化、キー管理、アイデンティティ保護、多要素認証、脅威検出といった機能を提供します。とはいえ、クラウド責任共有モデルの下で「顧客側が管理すべき部分(アプリケーションの設定、アクセス制御、データ保護)」は顧客が適切に実施する必要があります。
導入の進め方(実務的なステップ)
- 要件定義:性能、可用性、セキュリティ、コンプライアンス要件を明確にする。
- 設計:ネットワーク、アイデンティティ、運用フロー、バックアップ/DRを含めた参照アーキテクチャを作成。
- PoC:重要機能やパフォーマンスの検証。Azure MigrateやDatabase Migration Serviceで移行性の確認。
- 自動化とIaC:デプロイ自動化、CI/CDパイプライン(Azure DevOps / GitHub Actions)を構築。
- 運用開始と改善:監視/アラート設定、コスト最適化、定期的なセキュリティレビュー。
メリットと注意点
- メリット:グローバル展開、豊富なマネージドサービス、エンタープライズ向けサポート、オンプレとの強い連携機能(ExpressRoute/Arc/Stack)が挙げられます。
- 注意点:サービスの組み合わせや構成ミスによるコスト増、アクセス制御/ネットワーク設計の不備によるセキュリティリスク、リージョン選択やデータ主権に関する要件への配慮が必要です。
まとめ
Azureは、企業のクラウド化・デジタルトランスフォーメーションを支える多機能なクラウドプラットフォームです。導入にあたっては、ビジネス要件に合致したサービス選定、堅牢なアイデンティティとネットワーク設計、IaCや監視による運用自動化、そして継続的なコスト・セキュリティ管理が重要になります。現場の要件に合わせてPaaSやサーバーレスを積極的に活用すれば、運用負荷を下げつつ迅速な開発・展開が可能です。
参考文献
- Microsoft Azure 公式サイト
- Microsoft Learn — Azure ドキュメント
- Azure Architecture Center
- Wikipedia — Microsoft Azure
- Microsoft — Azure セキュリティ ファンダメンタル
- Azure Resource Manager(ARM)ドキュメント


