モアシール・サントス完全ガイド:名盤『Coisas』で学ぶ和声・編曲と聴きどころ

イントロダクション — モアシール・サントスとは

モアシール・サントス(Moacir Santos)は、20世紀ブラジル音楽の中でも独自の世界を築き上げた作曲家・編曲家・演奏家です。ブラジル的リズム感覚とジャズ由来の和声観、クラシック的なオーケストレーション感覚を融合させた作風で、同時代のどの作曲家とも異なる独創性を持っていました。特にアルバム「Coisas」はブラジル音楽の名盤として広く知られ、現在でも再発や再評価が続いています。

簡潔なプロフィールと経歴(要点)

  • ブラジル出身の作曲家・編曲家・演奏家として活動。
  • 初期は地元のバンドや放送局で演奏・編曲を行い、その後リオやサンパウロなど音楽都市圏で評価を高めた。
  • 1960年代に発表した作品群で高い注目を集め、代表作「Coisas」は彼の作風を象徴するアルバムとなった。
  • のちに国外でも評価され、再評価・再発によりグローバルな聴衆やジャズ/サンプリング系アーティストにも影響を与えた。

モアシール・サントスの音楽的魅力 — 深掘り解説

彼の音楽の魅力はおおむね以下の要素に集約されます。これらが複合して「ブラジルらしさ」を超えた普遍性と新奇性を生んでいます。

1) ハーモニーの独自性

サントスの和声はジャズ的な拡張和音や色彩的なテンションを多用しつつ、単なるジャズ模倣に終わりません。モードの扱いやクロマティシズム、予想外の転調や和音進行が登場し、聴く者の耳を常に新しい方向へ導きます。和声が旋律と密接に関係し、編曲全体が“和声的な物語”を語るような構成感があります。

2) リズム感とブラジル伝統の取り込み

サンバやショーロ、北東部のリズムなどブラジル固有のリズムを基盤にしつつ、それらを変形したりポリリズム的に重ねたりすることで、洗練されたグルーヴを作り出します。ただの民族音楽風味ではなく、リズムがハーモニーやアレンジと結びついて楽曲の表情を細かく制御します。

3) オーケストレーション/アレンジのセンス

管弦楽的な色彩を軽やかに使いこなし、管楽器や打楽器の組み合わせで独特のテクスチャーを構築します。声部の重なり方や間の取り方により、室内楽的な繊細さとビッグバンド的なダイナミズムを同居させる点が特筆に値します。

4) メロディの魅力と抽象性

旋律自体は一見シンプルに聴こえることがある一方、リズムと和声が与える文脈で何層もの表情を見せます。これは「メロディを単独で聴かせる」のではなく、編曲・和声・リズムの連関で音楽を提示する作法と言えます。

代表作・名盤の紹介

彼のディスコグラフィーには評価の高い作品が複数ありますが、まずは以下を押さえておくと良いでしょう。

  • Coisas — モアシール・サントスを象徴する一枚。和声的・編曲的な独創性が濃縮されており、初めて聴く人にも強い印象を残します。多層的なアンサンブルとブラジル的リズムの組み合わせが見事です。
  • Coisas(続編や同時期の作品群) — 「Coisas」で提示されたアイディアは周辺作や続編的な作品でも展開され、彼の作風をより深く理解する手がかりになります。
  • アメリカ滞在期の録音や再評価期の再発盤 — 後年に入手しやすくなった輸入再発盤やコンピレーションで、様々な編成の面白さを確認できます。

聴きどころガイド(初めて聴く人向け)

  • まずは「Coisas」の冒頭から全体を通して聴き、楽曲間での和声・編曲のバリエーションを味わってください。
  • 一曲ごとに、①メロディ、②和声(コードの色彩)、③リズム(拍節の取り方やアクセント配置)、④編成(楽器の使い方)に注意して聴くと、彼の手法が見えてきます。
  • 同じテーマが異なるアレンジで再現される箇所があれば、対比を楽しんでください。変奏や配置替えで生じる微妙な“意味変化”がサントスの醍醐味です。

影響と評価 — なぜ再評価されるのか

生前はブラジル国内外で限定的に知られていた面がありましたが、後年になってレコード再発やリスナー/クリエイターの発掘により国際的評価が高まりました。理由としては:

  • ジャンルの境界を越える普遍性:ブラジル音楽のリズム感とモダンな和声感を融合しており、ジャズや現代音楽のリスナーにも訴求する点。
  • 編曲家としての洗練された技術:個々の楽器の役割や色調を細やかにコントロールする能力が高い。
  • サンプリング/リイシュー文化との相性:ビートやユニークなアレンジがヒップホップやエレクトロニカ系のプロデューサーにとって魅力的なソースとなったこと。

聴き方の提案(プレイリスト作りのヒント)

  • 「Coisas」中心に、ブラジルのショーロやボサノヴァ、現代ジャズの曲を混ぜて対照を作るとサントスの独自性が浮き彫りになります。
  • 同じリズム/拍子をもつ他アーティスト(たとえばジョアン・ジルベルトやエリス・レジーナなど)と並べて聴き、ハーモニーやアレンジの違いを確認するのも有効です。
  • 編曲やテクスチャーに注目したい場合はヘッドフォンでの聴取を推奨します。

まとめ — モアシール・サントスの魅力を一言で

モアシール・サントスは「ブラジルのリズム感覚」と「モダンな和声・編曲」を独自に融合させた作曲家であり、その作品はジャンルを越えて今なお新鮮に響きます。深く聴き込むほどに隠れた構造や色彩が見えてくる、聴き手にとって発見の多い作家です。まずは代表作を通して彼の音楽語彙に触れてみてください。

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