Jaco Pastorius(ジャコ・パストリアス)入門:フレットレス・ベースの名盤・聴きどころと影響力ガイド
Jaco Pastorius — プロフィールと概要
Jaco Pastorius(ジャコ・パストリアス、本名 John Francis Pastorius III, 1951年12月1日 - 1987年9月21日)は、アメリカのジャズ/フュージョン・ベーシスト。電気ベースを「ソロ楽器」へと押し上げた革新的な演奏スタイルと音楽観で知られ、特にフレットを抜いて使用したフレットレス・エレクトリック・ベースを用いた歌うようなトーンとハーモニクス(倍音)を多用した演奏が特徴です。
音楽的な魅力・特徴
- フレットレスの歌うような音色:フレットを取り除いたベースによる滑らかなポルタメント(音の滑り)と豊かな倍音が、ギターやピアノとは違う「声」のような存在感を生み出しました。
- ハーモニクスの多用:ナチュラル/アーティフィシャル・ハーモニクスを楽曲のメロディやイントロで効果的に使い、ベース単体でも旋律的かつ美しい表現を可能にしました(代表曲「Portrait of Tracy」など)。
- メロディックかつリズミックなアプローチ:ベースを伴奏の低音に留めず、メロディやカウンターメロディを積極的に弾くことで「ベース=主役」の新しい役割を提示しました。
- ダイナミクスとアレンジ力:ソロ・アルバムや大編成アレンジ(後のワード・オブ・マウスなど)で作曲・編曲も手掛け、ベース以外の楽器の色づけやハーモニー感覚にも優れていました。
- 即興性とテクニック:ジャズ的な即興性を基盤に、速いフレーズ、複雑なビートの中での明瞭なライン、巧みな右手のタッチコントロールを見せます。
代表作・名盤(選)
- Jaco Pastorius (1976) — ソロ・デビュー作。自身の代表作で、ベース単体の可能性を示した「Portrait of Tracy」「Donna Lee(ソロ・バージョン)」などを収録。ジャコの技術と音楽性をダイレクトに味わえるアルバムです。
- Weather Report — Heavy Weather (1977) — Weather Report在籍期の重要作。ジャコのベースが大きくフィーチャーされており、「Teen Town」などは彼のベース・プレイが曲の要となる名演です。
- Word of Mouth (1981) — ジャコが編曲・指揮を行った大編成の作品。オーケストレーション的なアプローチで彼の音楽的視野の広さがうかがえます。
- Live/編集盤・追悼盤 — 生前・没後に数多くのライブ録音や編集盤が出ており、ステージでの瞬発力やアレンジの多様性に触れることができます(例:「The Birthday Concert」など)。
演奏の聴きどころ・楽しみ方
- イントロや間奏のハーモニクスを聴く:「Portrait of Tracy」のようなハーモニクス主体の短い曲は、ジャコの音色美と倍音感を直に体験できます。
- ベースをメロディ楽器として聴く:ソロ曲や「Teen Town」などではベースが歌い、メロディの主軸を担います。ベースのフレーズをメロディとして意識して聴くと新しい発見があります。
- リズム隊との対話に注目:ドラムやキーボードとの掛け合いで見せる瞬発力やグルーヴ感は、フュージョン期の重要な聴きどころです。
- アレンジの細部を追う:特に「Word of Mouth」等ではベース以外の編成や和声の使い方もユニーク。彼がどのように音を配置しているかを意識すると曲の構造理解が深まります。
影響と継承
ジャコは「エレキベースを単なるリズム担当から前景に引き上げ、メロディックかつソロ楽器として成立させた」点で、後続世代のベーシストに多大な影響を与えました。マーカス・ミラー、ジョン・パティトゥッチ、ヴィクター・ウッテンら現代の名手たちにも影響を与え、ロック、ジャズ、フュージョンをまたいで彼の演奏技法や音楽観は広く受け継がれています。
人物像と生涯(簡潔に)
フロリダ出身。若年期から音楽に親しみ、1970年代にプロ活動を本格化。Weather Report加入を経て名声を確立しましたが、晩年は精神的な問題や薬物問題に苦しみ、公的な場でのトラブルもありました。1987年、フロリダ州の事件で負傷し、35歳で亡くなりました。その波乱の生涯も含めて、現在でも熱心なファンや研究対象になっています。
聴く際の注意・心構え
- ジャコの録音は音色や倍音のニュアンスが重要なので、機材によってはその魅力が十分再現されないことがあります(高品質な再生環境が望ましい)。
- ライブ音源はスタジオ録音と異なる即興の連続です。荒削りな部分も含めて「瞬間の魔法」を楽しむつもりで聴くと良いでしょう。
まとめ
Jaco Pastoriusは、フレットレス・エレクトリック・ベースを通じてベースの役割を根本から広げた革新者です。彼の音色、ハーモニクスの美しさ、メロディックなアプローチは、ただの技巧の誇示を超えて「楽器で歌う」ことの新たな地平を切り開きました。名盤を通じて彼の演奏を追体験すれば、ベースに対する見方が大きく変わるはずです。
参考文献
- Jaco Pastorius — Wikipedia (英語)
- Jaco Pastorius — AllMusic Biography (英語)
- Jaco Pastorius: The Tragic, Gifted Bassist — NPR (英語)
- Jaco Pastorius features and retrospectives — Rolling Stone (英語)
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