Ghostとは?ブログ・会員制メディア向けCMSの特徴・WordPress比較と導入ガイド

Ghostとは — 要約

Ghostは、コンテンツ出版(ブログ/パブリッシング)に焦点を当てたオープンソースのプラットフォームです。Node.jsで実装され、Markdownベースのエディタやテーマ機能、公開用のContent API、管理用のAdmin APIなどを備え、個人ブログからメディア系の有料会員サイトまで幅広い用途で使われます。公式のホスティングサービス「Ghost(Pro)」も提供されており、セルフホストとマネージドホスティングの両方を選べます。

歴史と背景

Ghostは、WordPressの複雑さに代わるシンプルでモダンなブログプラットフォームを目指して始まりました。創始者がKickstarterで資金募集を行い、コミュニティと開発者の支援を受けて成長してきました。以降、オープンソースとしてGitHub上で公開され、活発に開発・保守が続けられています(ライセンスはMIT)。公式チームはコア開発のほか、公式ホスティングやエコシステム整備も行っています。

技術スタック

  • サーバーサイド:Node.jsで実装。軽量でモダンなJavaScriptランタイム上で動作します。
  • データベース:開発環境ではSQLiteがデフォルト、運用環境ではMySQL(推奨)を利用することが一般的です。
  • テンプレート:テーマはHandlebarsテンプレートを採用。HTML/CSS/JSで自由にカスタマイズできます。
  • API:公開用のContent API(読み取り)と、記事作成などを行うAdmin API(管理操作)を提供。外部アプリやフロントエンドとの連携が容易です。
  • CLI/デプロイ:公式のGhost-CLIやDockerイメージがあり、セルフホストの導入・運用をサポートします。

主な特徴(機能)

  • Markdownエディタ:直感的な執筆環境でMarkdownを使い、プレビューしながらコンテンツ作成が可能。
  • テーマとレイアウト:Handlebarsベースのテーマで見た目を柔軟に変更できる。テーマのインストールやカスタムテンプレートも容易。
  • パブリッシングに特化:投稿の作成・公開・スケジュール機能、タグやシリーズ管理など、記事中心のワークフローに最適化。
  • 会員・課金機能:近年のバージョンでは会員登録・サブスクリプション(Stripeなど経由の決済)や限定コンテンツ配信、ニュースレター機能を標準でサポート。
  • ヘッドレス対応:Content APIを利用してヘッドレスCMS的に利用することが可能。カスタムフロントエンド(React/Vue等)と組み合わせて使えます。
  • メール配信機能:サイトから直接ニュースレターを配信できる機能を内蔵(外部サービスとの連携も可能)。
  • 高速性:Node.jsベースで軽量に設計されており、初期設定のままでも比較的高速に動作します。

ホスティングと運営モデル

Ghostは大きく分けて「セルフホスト」と「公式ホスティング(Ghost(Pro))」の2つの運用モデルがあります。

  • セルフホスト:自分でサーバー(VPS、クラウド)を用意し、Ghost-CLIやDockerでインストール。自由度が高くコストを抑えられるが、バックアップ・SSL・アップデートなど運用管理は自己責任。
  • Ghost(Pro):Ghost公式によるマネージドホスティング。初期設定、アップデート、バックアップ、SSLなどを提供する代わりに、月額の利用料が発生します。ビジネス用途や運用負荷を下げたい場合に適します。

WordPressとの比較(よくある疑問)

  • 用途の違い:WordPressは汎用CMS+巨大なプラグインエコシステムを持ち、ECやフォーラム、複雑なサイト構築に向きます。Ghostはコンテンツの執筆・公開に特化しており、特にブログ・出版・ニュースレター・会員制メディアに向きます。
  • パフォーマンス:初期構成ではGhostのほうが軽快に動きやすい傾向があります。ただしWordPressもキャッシュや最適化で高速化可能です。
  • 拡張性:WordPressはプラグインで何でもできる反面、プラグインの品質や互換性に注意が必要。Ghostは拡張性はあるものの、エコシステムはWordPressほど大きくありません。
  • 学習曲線:執筆・公開に特化している分、執筆者にとってはGhostの方が扱いやすいことが多いです。

導入と運用のポイント

Ghostを導入する際の実務的なポイントを整理します。

  • データベース選択:本番運用ではSQLiteではなくMySQL(推奨)を使う。バックアップやリストアの運用設計を行うこと。
  • TLS/HTTPS:公開サイトでは必須。Ghost(Pro)は自動で対応しますが、セルフホストの場合はLet's Encryptなどで証明書を設定する。
  • アップデート:セキュリティや機能追加に伴い定期的にアップデートを行う。Ghost-CLIを使えば比較的簡単です。
  • スケール:トラフィックが大きくなる場合はロードバランサやキャッシュ(CDN)導入を検討。API利用の設計も重要。
  • 検索とコメント:デフォルトで高度な全文検索やコメント機能は搭載されていないため、Algoliaや外部コメントサービスとの連携が一般的。

セキュリティとスケーラビリティ

Ghost自体はモダンな設計で比較的セキュアですが、セルフホストでは以下を守る必要があります。

  • 常に最新版へアップデートし、既知の脆弱性に対処する。
  • 管理画面へのアクセス制限(強力なパスワード、2要素認証の運用など)を行う。
  • 定期的なバックアップ(DBとファイル両方)を実施する。
  • 公開環境ではHTTPSを必須にし、クロスサイトスクリプティング等への対策を行う。

カスタマイズとエコシステム

GhostはテーマやAPIを通したカスタマイズが中心で、プラグインによる拡張という形はWordPressほど発達していません。以下のポイントによりサイトを拡張できます。

  • テーマ開発:Handlebarsテンプレートでレイアウトやデザインを作成。部分テンプレートやパーシャルで再利用可能。
  • API連携:Content APIを使ってヘッドレスCMS的に扱い、独自のフロントエンドにコンテンツ配信。
  • 外部サービス連携:メール配信(Mailgun等)、検索(Algolia)、課金(Stripe)などと組み合わせることで機能を補完できる。

導入例とユースケース

Ghostは下記のようなケースに特に向いています。

  • 個人ブロガーや技術系ブログの運営
  • ニュースレターと連携したコンテンツマーケティング
  • 有料会員制のオンラインメディア(課金・会員管理を利用)
  • シンプルな企業ブログやドキュメンテーションの公開

導入の判断基準(まとめ)

  • コンテンツ中心のサイトで、執筆体験や配信機能を重視するならGhostは有力な選択肢。
  • 巨大なプラグイン群や複雑な非記事機能(EC・会員フォーラム等)を必要とするならWordPressの方が向く場合もある。
  • セルフホストで運用コストを抑えつつ自由度を確保したいか、マネージドで運用負荷を下げたいかでGhost(Pro)の採用を検討する。

最後に

Ghostは「書くこと」と「届けること」に集中した設計思想が魅力で、モダンで軽快なスタックを好む技術者や編集者に広く支持されています。機能の範囲やエコシステムの規模はWordPressほど大きくありませんが、会員・配信機能の標準装備やAPIベースの柔軟性により、現代的なパブリッシングに適した選択肢です。導入の際は運用体制(セルフホストかマネージドか)、バックアップ・セキュリティ方針、外部サービスとの連携計画を明確にしておくことをおすすめします。

参考文献