レスター・ヤング(Pres)入門:必聴名盤と聴きどころガイド
はじめに — 「Pres」ことレスター・ヤングとは
レスター・ヤング(Lester Young, 1909–1959)は、ジャズ史上もっとも影響力のあるテナー・サクソフォニストの一人です。流麗で軽やかなトーン、ビートの裏に置くようなタイミング、歌うように淡々と紡ぐフレージング──それらは当時の主流であった豪放なプレイとは一線を画し、後のクール・ジャズやモダン・ジャズ奏者に大きな影響を与えました。ニックネーム「Pres(プレズ/プレジデント)」と呼ばれるほどの尊敬を集め、カウント・ベイシー楽団時代のソロやビリー・ホリデイとの共演など、名演は数え切れません。
レスター・ヤングの音楽的特徴(聴きどころ)
- 軽やかなトーンと息づかい:鋭く太い音ではなく、息の流れを感じるような柔らかな音色が特徴。高音域でも軽快さを失いません。
- 裏拍にずらすタイミング:「ビートの後ろに居る」演奏で知られ、スウィング感を生み出す独特の間(ま)を持ちます。
- モダンなモチーフの使い方:フレーズはメロディックで、オスカー・ピーターソンやバド・パウエルらとは異なる「歌う即興」を展開します。
- 少ない音数での表現力:音符を詰め込むよりも「省略」と「余白」でドラマを作るタイプ。聞き手の想像力を刺激します。
おすすめレコード(聴きどころ付き)
以下は、レスター・ヤングの魅力を異なる側面から堪能できる代表的なレコード(アルバム/コンピレーション)です。各盤はオリジナル・セッションを集めたもの、あるいは名演をコンパクトにまとめた良盤が多く、入手しやすい再発も多数出ています。
カウント・ベイシー楽団時代のライブ/録音(1930年代〜1940年代)
聴きどころ:若き日のプレズがビッグバンドの中で放つソロは、彼のスタイルが形成されていく過程を追うには最適。代表的なナンバーは「Lester Leaps In」「Taxi War Dance」「Blue and Sentimental」。これらはベイシー関連の1930s〜40sコンピレーションにまとまっていることが多いので、ベイシーのオリジナル録音集や“Complete”系コンピで探すとよいでしょう。
Pres and the Oscar Peterson Trio(通称:Lester Young with the Oscar Peterson Trio)
聴きどころ:1950年代の小編成録音。オスカー・ピーターソン・トリオとの相互作用は特に温かく、バラードやスタンダードにおけるレスターの歌心が際立ちます。フレーズの余白、語りかけるようなフレージングをじっくり味わってください。
Pres and Sweets(レスター・ヤング & ハリー・“スウィーツ”・エディソン)
聴きどころ:スウィーツ・エディソンの端正なトランペットと並ぶ小編成セッション。互いに“引き算”の美学を持つ二人のバランスが絶妙で、スウィングの匂いと洗練された会話的ソロの妙を味わえます。
ビリー・ホリデイとの共演を集めた盤(Lady Day & Prez としてまとまることが多い)
聴きどころ:ホリデイとの相性は特筆に値します。ホリデイの歌をそっと包むようなプレイは、伴奏者としてのレスターの高い感性を示します。ホリデイ側のアルバムや共演集を通して聴くと、その相互作用の深さがわかります。
小編成/晩年のスタジオ録音(1950年代のVerve/Clef期の諸盤)
聴きどころ:健康や私生活の問題を抱えつつも、50年代のスタジオ録音には静かな叙情や成熟した表現が残っています。若い頃の切れ味とは異なる「円熟の余韻」を楽しめます。
コンプリート/ボックス系編集盤(例:The Lester Young Story 等)
聴きどころ:多数のセッションを時系列で追えるため、プレイの変遷や相互関係が手に取るように分かります。初期のスタイル、ベイシー時代の登場、ホリデイとの共演、晩年の録音まで一気に聴き通したいときにおすすめです。
各盤で注目すべき代表曲(聴きどころを明確にするためのガイド)
- Lester Leaps In:レスターの代名詞的ナンバー。リフ主体のテーマと自由なソロの対比に注目。
- Taxi War Dance:ベイシー時代の躍動。アンサンブルとソロのスリリングな掛け合いが魅力。
- Blue and Sentimental:歌心あふれるバラード。音の粒立ちと余白で語る表現を聴く。
- (ビリー・ホリデイ・セッションから)Body and Soul など:伴奏で示す“聴かせる”芸の深さを実感できます。
どの盤を買うか迷ったら(選び方のヒント)
- まずは「代表曲がまとまっているコンピ」や「ベスト盤」でレスターの特徴を掴む。
- 気に入った時代(ベイシー時代の若々しいプレイ/1950年代の円熟)を見つけたら、その時期のセッション集やボックスセットに手を広げると理解が深まる。
- 国外盤/国内再発で収録曲やジャケットが異なることがあるので、買う前に収録トラックを確認するのがおすすめです。
聴く際のポイント(詳しく味わうために)
- 「フレーズの終わり方」に注目:余韻を残すように終えることが多く、そこに演奏者の感情や意図が現れる。
- 伴奏との呼吸:ホーンの単独プレイだけでなく、ピアノやリズムセクションとの掛け合いで新たな表情が出ます。伴奏のアプローチが違えば、同じテーマでも受ける印象が変わります。
- 繰り返して聴く:一度で全部聴き取るのは難しいので、気に入ったソロを繰り返し聴いてフレーズ構造やモチーフの再利用を探すと学びが深まります。
まとめ
レスター・ヤングは「ひとつの声」を持った奏者です。音色・間・省略の妙が魅力で、ビッグバンド期から晩年の小編成まで、どの時期にも聴き所があります。まずは代表的なナンバー(Lester Leaps In / Blue and Sentimental など)を含む入門的なコンピ盤で彼の“声”を掴み、その後で特定のセッション盤や共演盤に深掘りしていく流れが良いでしょう。
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参考文献
- Lester Young — Wikipedia
- Lester Young — AllMusic(ディスコグラフィとレビュー)
- Lester Young Discography — JazzDiscography Project
- Lester Young — Britannica


