イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズ入門:代表曲・名盤・ライヴの聴きどころを徹底解説

導入:なぜIan Dury and the Blockheadsは今も語り継がれるのか

Ian Dury and the Blockheads(以下「ザ・ブロックヘッズ」)は、1970年代後半の英国ロック/ニューウェイヴの渦中にありながら、ポップス、ファンク、ジャズ、パブロック、詩的な語り口(トーキング・シンギング)を融合させた独自の音楽で強烈な個性を放ち続けました。リードシンガーのイアン・デューリー(Ian Dury)が作り出す言葉の機知、ブロックヘッズの卓越した演奏力とグルーヴ感が合わさり、シーンの一角を確立。単なるヒットメーカーではなく、「語り」「街の人物像」「ブラックユーモア」をポップに落とし込む表現者として、今日でも熱心なファンを持ちます。

イアン・デューリーの人となりと背景

イアン・デューリーは、子どもの頃にポリオに罹り身体に障害を抱えながらも、アートスクールで学び、初期はイラストや演劇にも関わっていました。そのバックグラウンドが、歌詞の視覚的イメージや舞台上での演技めいた存在感に結びつきます。彼の言葉はしばしばロンドンや英国の下町を舞台にした人物描写や、社会的なスケッチが織り込まれており、単純なロックの歌詞を超えて“短編小説”のような読み応えがあります。

ザ・ブロックヘッズとは:結成と特徴

ザ・ブロックヘッズはイアン・デューリーのヴォーカルを中心に、多彩なバックグラウンドを持つ優れたセッション/バンド・ミュージシャンが集まったバンドです。主要メンバーにはチャズ・ジャンケル(Chaz Jankel、作曲・ギター/鍵盤)、ノーマン・ワット=ロイ(Norman Watt-Roy、ベース)、デイヴィー・ペイン(Davey Payne、サックス)、ミック・ギャラガー(Mick Gallagher、キーボード)、チャーリー・チャールズ(Charley Charles、ドラム)らがいます。高度なリズムセクションとジャズやファンクの香りを持つアンサンブルが、デューリーの言葉に独特の土台を与えています。

音楽性と作詞の魅力

  • 言葉の力(リリシズム):イアン・デューリーの歌詞は、会話体の反復、スラング、ユーモア、辛辣な観察眼が特徴。登場人物の弱さや滑稽さを突きつつも人間味を失わない視点で描きます。
  • トーキング・シンギング:デューリーはメロディを朗読するような歌唱(話し言葉に近い発声)を用いることが多く、それが歌のナラティヴ性を強めています。
  • ジャンル混交の音楽:ファンクのグルーヴ、ジャズのコードワーク、パブロックやニューウェイヴの直球なエネルギーが同居。技術的に優れた演奏がポップでありながら複雑なアレンジを支えます。
  • コラボレーションの妙:特にチャズ・ジャンケルとのコンビネーションは、曲のフックや鍵盤・ギターのフレーズで作品に鮮烈な色を与えました。

代表曲と名盤(聴きどころ)

以下はザ・ブロックヘッズ/イアン・デューリー周辺の代表的な楽曲・アルバムです。初めて聴く人は、まずこれらから入るとバンドの魅力を効率よく掴めます。

  • New Boots and Panties!!(1977) — イアン・デューリー名義で発表されたソロ作品ですが、後のブロックヘッズ的世界観の原型が詰まっています。ストレートな物語性と英語圏ならではの登場人物描写が光る名作。
  • “Sex & Drugs & Rock & Roll” — 物議を醸したタイトル曲。反抗のスローガンのように受け取られがちですが、実際は人生観や生活の一側面を切り取った言葉遊び的側面が強い楽曲です。
  • “Hit Me with Your Rhythm Stick” — ブロックヘッズの代表的ヒット曲。ノーマン・ワット=ロイのベースとチャズのリフが生む強烈なグルーヴが魅力で、UKチャートで成功を収めました。
  • Do It Yourself(1979) — ブロックヘッズ名義のアルバムで、バンドのアンサンブル力が活かされた作品。ライブでの強さも伝わるアレンジが多いです。
  • Mr. Love Pants(1998) — キャリア後期の作品で、成熟した歌詞とバンドワークが味わえます。復帰作として評価されることが多いです。

ライヴ・パフォーマンスの特徴

イアン・デューリーはステージ上での表現力が非常に強く、演劇的な仕草や語りによって観客を引き込みます。曲の合間に挟む語りや寸劇めいたやりとり、そしてバンドのタイトな演奏が相まって、“ライヴで聴く価値”を強烈に感じさせるアーティストです。演奏は高水準ながら、あくまで歌(物語)を立てるための伴奏として機能する点もポイントです。

社会性と論争:ユーモアと批評精神

デューリーの作品にはユーモアが満ちていますが、同時に社会や階層、名声や薬物文化への皮肉や観察が織り込まれます。例えば“Sex & Drugs & Rock & Roll”は一見挑発的ですが、実は自嘲や人生訓的な側面も含む複雑な曲です。また、故意に誤解を招くリリックや題名で論争を巻き起こすこともありましたが、それも含めて彼の表現の一部と捉えられます。

影響と遺産

ザ・ブロックヘッズは、単にその時代のヒット曲を量産しただけでなく、英国のポップ・リリシズム、語り掛けるような歌唱法、ブラックミュージック的なグルーヴの導入など、多方面に影響を与えました。後続のシンガーソングライターやバンド、特に言葉重視のブリティッシュ・ポップやインディー勢に与えた影響は見逃せません。また、イアン・デューリー自身のパブリックイメージ(身体的ハンディキャップを抱えながらも堂々と振る舞った姿勢)は、多くの人に勇気を与えました。

現在の聴きどころと入門のコツ

  • まずは代表曲を通して“言葉”と“グルーヴ”の同居を体感する。
  • 歌詞の英語(スラングや地名、人名)に興味が湧いたら和訳や背景を調べ、登場人物や風景の断片をつなぎ合わせると面白さが増す。
  • ライヴ音源を聴くと、レコードでは伝わらない臨場感や即興の魅力がわかる。

まとめ:なぜ聴き続けられるのか

Ian Dury and the Blockheadsの魅力は、言葉の力と演奏の確かさが高次で融合している点です。イアン・デューリーのユーモアと人間観察、ブロックヘッズのグルーヴとテクニックが混ざり合うことで、単なる懐古やレトロ趣味を超えた普遍性が生まれています。社会や時代背景を反映しつつも、個々の登場人物の生々しさを描く曲群は、今なお新しい発見を与えてくれるでしょう。

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参考文献