Nels Clineの現代ギターを解剖する:おすすめレコードと聴き方ガイド
イントロダクション — Nels Clineとは何者か
Nels Cline(ネルス・クライン)は、前衛的な即興演奏からフォーク/ロックに至るまで幅広い領域を横断するギタリスト/作曲家です。ジャズ・シーンでの活動を起点に、ノイズ、エフェクト処理、繊細なフィンガーワーク、バンドにおけるテクスチャー構築など、現代ギター表現の最前線を体現してきました。ここでは、彼のキャリアを辿りながら「聴くべきレコード」をピックアップし、どういう点に注目して聴けば深く楽しめるかを解説します。
選書の方針
- ソロ/自身のバンド作品(表現のコアを見る)
- デュオやコラボレーション(対話的な即興表現を観察)
- ロック・バンドでの起用例(ロック文脈でのギターの役割変容)
おすすめレコード一覧(深掘り解説)
Nels Cline Singers — Macroscope(2014)
なかでも代表作として真っ先に挙げられるのがNels Cline Singersの『Macroscope』です。バンド編成はギター、ベース、ドラムを中心にしつつ、電子音やエフェクト、密度の高いアンサンブルが組み合わさり、ジャズ的な即興とロック的なダイナミクスが同居します。
- 聴くポイント:テクスチャーの重ね方。Clineは単なるソロイストではなく「サウンドのレイヤーを作る奏者」として機能します。エフェクトで音像を拡張し、曲の中でギターがリズム/和音/ノイズ的要素を同時に担う場面が多いです。
- なぜおすすめか:作曲と即興のバランスが非常に良く、初めてClineに触れるリスナーにもその多面性が伝わりやすい一枚。
Nels Cline & Julian Lage — Room(2014)
ジャズ系ギタリストJulian Lageとのデュオ作『Room』は、Clineのより“生身”の弾き手としての顔を知るのに最適です。エフェクトを控えめにしている曲も多く、ギター同士の対話=アコースティックに近い表現が特徴です。
- 聴くポイント:音色の差分とレスポンス。二人のギタリストが互いのフレーズにどう反応するかを追うことで、即興のルールや空気の作り方が見えてきます。
- なぜおすすめか:Clineの柔軟性(ノイズ寄りの表現から、繊細なアコースティックな会話まで)をダイレクトに体感できる。
Wilco — A Ghost Is Born(2004)
Clineは2004年にWilcoに加入し、以後バンドのサウンドに大きな影響を与えました。『A Ghost Is Born』は彼が参加し始めた時期の主要作のひとつで、ロック/オルタナ系の文脈でのClineの役割を知るには重要です。
- 聴くポイント:ソロとテクスチャーのバランス。Wilcoの楽曲内でClineは単なるリードギタリストを超え、曲の空間を広げるサウンドメイクを担っています。
- 代表的に注目すべき曲:アルバム内のインスト/間奏的パートやノイズ処理の使い方。バンドアンサンブルの中での“ちょっとした歪みやノイズ”が効果的に配置されています。
Wilco — Sky Blue Sky(2007)
『Sky Blue Sky』では、Nels Clineの加入以降のWilcoサウンドがより明確に示されます。より歌ものへの寄り添いが強く、繊細なギターソロが楽曲のハイライトとして作用します。
- 聴くポイント:ソロ・メロディとエモーション。Clineは技巧的な速弾きだけでなく、歌心ある長めのフレーズや空間を活かしたソロを得意としています。
- 代表曲:長尺のインスト寄りパート(例:楽曲の中盤〜終盤のギター・ソロ)に注目すると、彼の言語がよく分かります。
初期ソロ作 — Destroy All Nels Cline(初期録音群)
Clineの初期ソロ作や前衛ジャズ寄りの作品群は、彼の「実験性」と「即興力」を知るうえで不可欠です。ここではソロ/前衛寄りのアルバムを聴くことで、後年のポップ寄りな仕事との対比がより鮮明になります。
- 聴くポイント:奏法の幅と即興の尺度。ノイズや非和声音の使い方、フレーズ生成のプロセスが鋭く表れます。
- なぜおすすめか:Clineのバックボーン(ジャズ的素養と前衛的嗜好)を体系的に理解でき、彼の「なぜこう弾くのか」が解像度高く見えてきます。
聴き方ガイド — 深堀ポイント
- 音色の移り変わりを追う:同じフレーズでもエフェクトやピッキング位置の違いで表情が変わるので、繰り返し聴いて比較するのが有効です。
- アンサンブル内での役割を観察する:特にバンド内での低音域との関係(ベースやドラムとのダイナミクス)を見ると、Clineの空間作りの意図がわかります。
- 即興の「文法」を探る:モチーフの反復、反転、エコー(ディレイ)による発展など、即興の構造を追いかけると理解が深まります。
- ライブ映像を見る:スタジオ音源だけでなくライブ映像でペダルワークや手元の動きを確認すると学びが多いです。
聴く順のおすすめプラン
- 入門:Nels Cline Singers(『Macroscope』など)→ Clineの作曲性とアンサンブル感を把握
- 対話/細部観察:Nels Cline & Julian Lage(『Room』)→ ギター同士の即興対話を堪能
- ロック文脈での作用:Wilco(『A Ghost Is Born』『Sky Blue Sky』)→ 歌ものでの機能性を確認
- 原型に戻る:初期ソロ/前衛作 → 彼の核となるインプロヴィゼーションを再確認
最後に — なぜNels Clineを聴くか
Nels Clineを聴くことは「ギターの可能性」を再定義する行為です。即興の論理、テクスチャーの創造、歌への寄り添い方など、多層的な学びが得られます。どのアルバムから入っても新しい発見があり、ジャンル横断的な楽しみ方ができるアーティストです。
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